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蘇生


天界への転移が終わったソラトはその場で重い溜め息を吐く。


ソラトは胴体と頭が離れた状態で横になっている二人を見て呟いた。


「まさかヤーグっちとヴォールが殺されるなんて……」


ポロポロと涙を流し、 座りながら悲しむソラトの背後には無表情のマーラーが立っていた。


「おかえりなさい」


「──!?」


ソラトは優しい声に気が付くと、 その場で膝まずき頭を下げた。


「テンジン様。 ただいま戻りました」


「その様子だと、 絶斬ゼツキを奪えなかったみたいですね」


ソラトにはテンジンの声色は残念だと言わんばかりに聞こえた。


「あともう一息のところで逃げられて……。 本当に申し訳ありません」


ソラトは感情を込めてそう言えば、 テンジンの瞳にはヤーグとヴォールの死体が映る。


「ヤーグはレッヒェルン達のムードメーカーで、 ヴォールはとても優しい天使でしたね」


その言葉を聞いたソラトは大粒の涙を床に溢す。


「ヤーグとヴォールが殺される前に、 ウチが助けにきてあげれたら……」


自分を責めるソラトの姿を見たテンジンは、 中腰になりソラトの涙を指でぬぐった。


「自分を責める必要はありません。 誰かが絶斬ゼツキを盗まなければ、 この戦いは起こらずに済んだのです」


「テンジン様、 ありがとうございます」


テンジンの優しい言葉にソラトは少しだけ気持ちが軽くなった。


「あの。 テンジン様にお願いがありまして……」


ソラトは頼みづらそうな表情をするも、 テンジンはソラトに慈愛に満ちた眼差しを向ける。


「なんですか?」


「ヤーグを蘇生してほしいんです」


それを聞いたテンジンは目を細めた。


「蘇生は出来ますよ。 ただ、 それは一度だけしかできません。 ヴォールのように蘇生され、 もう一度死んだらあの世に行くことになります」


「承知しています」


ソラトは意思の強い声と瞳でテンジンに訴える。


なぜ、 ソラトがそこまでヤーグの蘇生にこだわるのか、 テンジンは不思議に思い問いかける。


「……ソラトにとってヤーグは、 どんな存在ですか?」


「恋人です」


なるほど。 とテンジンは言うと、 願いを叶えると約束した。


「今日は疲れたでしょう。 部屋に戻って休みなさい。 それと片方の羽根が白くなってますね、 喜ばしいことです」


「ありがとうございます」


「蘇生させたら、 ヤーグをアナタの部屋へと向かわせます」


「本当にありがとうございます」


ソラトはそう告げると、 歩いて部屋へと戻っていくのをテンジンは見送った。


「さて、 マーラーにはお手伝いをしてもらいましょうか」


「……はい」


テンジンはヤーグの死体を、 マーラーはヴォールの死体を魔方陣で死体の保管場所へと運んだ。



──


魔界にある大きな門の前に羅奈達は転移した。

門は閉じたままだ。


「ここ。 どこかしら?」


羅奈はラグリスに問いかけると辺りを見回しながら呟く。


「ここは魔王カルマ様の城門だね」


そう。 と羅奈は言葉を返すと、 巨大な狼の姿から大人の悪魔の姿に戻ったエルザが呟く。


「私が案内しよう」


「エルザ様。 肩をお貸しします」


エルザが左手で門に触れると魔方陣に似た模様が浮かび上がる。

エルザは人差し指で模様を描くと閉じられた門が上がっていった。


「着いてこい」


羅奈達はエルザとダウの後ろを歩く。


城の中に入ると、 大きなシャンデリアにフカフカの赤色の絨毯じゅうたん

螺旋階段がある付近には小さな机の上には花瓶が置かれていた。


頭にヤギの角があるメイド達とライオンの尻尾が生えた執事達がエルザを見つけるとその場で膝まずきこう告げる。


「「「お帰りなさいませ、 坊っちゃん」」」


「そんなことより、 この者達の手当てを頼む」


「「「はい!!」」」


一人の若い執事が羅奈達に声をかけた。


「こちらへどうぞ。 治療室へとご案内します」


羅奈達は若い執事に着いていった。


それを確認したエルザは自室へ戻るために、 ダウと歩き出そうとしたその時だった。


「坊っちゃん。 お怪我はございませんか?」


金髪が特徴な大人のメイドがエルザに声をかける。


「私は大丈夫だ。 それより父上は戻ってきたか?」


その言葉を聞いたメイドは、 申し訳ない表情をみせる。


「カルマ様はまだ……」


メイドの口振りから帰ってきていないと思ったエルザは弱く息を吐く。


「……そうか。 私が留守の間、 汝達はこの城を守ってくれたのだったな。 礼を言う」


「それが、 私たちの仕事ですから。 坊っちゃんが戻ってきてくれて本当によかったです。 今日はゆっくりとお休みください」


メイドは明るい声色で告げると、 エルザはダウに肩をかしてもらい自室へと戻っていった。


その数分後に、 治療室から羅奈とオリアクス、 カルミオの3人が出てくる。


「ラグリス。 大丈夫かしら?」


羅奈が心配な顔で呟くとオリアクスが声をかけた。


「医者が命に別状はないって言ってたんだ。 だから大丈夫だろ。 とりあえずゆっくり休もうぜ」


オリアクスの言葉を聞いたカルミオが疑問を口にする。


「どこで休むんだ? まさかエルザの許可なしにこの城に泊まるつもりじゃないだろうな?」


「来客用の部屋とかあるだろ。 もうヘトヘトなんだ、 だから部屋を貸してもらおうぜ」


「……もう好きにしてくれ」


カルミオは呆れた表情をしていると、 エルザの相手をしていた金髪のメイドが羅奈に声をかける。


「今から来客用のお部屋をお掃除するので、 その間にお風呂を用意するわ。 体が濡れたままだと風邪引いちゃうわよ」


メイドは心配そうに見つめると、 羅奈は気遣いが嬉しかったのかお礼を口に出す。


「ありがとう」


「いいえ。 さぁ、 案内するわ」


羅奈達は風呂場に案内された。

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