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雷鳴


──塔の中


「…………」


ベッドに寝かされていたカルミオがゆっくりと目を覚まし起き上がる。


「カルミオ様!! お目覚めになられましたか!!」


部屋の奥から包帯を手にしたダウがカルミオに声をかける。


「……皆は?」


「天使と戦いに行っています」


それを聞いたカルミオはベッドから降りようとすると、 それをダウは阻止した。 


「……行かせろ」


カルミオの行動にダウは本気で怒る。


「こんな大ケガで動いたら命を落とすかも知れないんですよ!?」


それを聞いたカルミオは力強く声を発する。


「……本当はボクだって安静にしていたい。 だが、 皆が心配なんだ。 だから行かせろ!!」


頑固なカルミオの意見にダウは呆れて短く息を吐いた。


「分かりました。 行くと言うのなら、 私が回復してあげます。 でも、 これだけは約束してください!!」


「なんだ?」


ダウがカルミオの体に手をかざすと、 傷が癒えていく感覚が伝わる。


「絶対に死なないでください!!」


「言われなくとも理解している」


「まったく、 私の周りはムチャする悪魔ひと達ばかりで困ります」


そう言い終わると、 ダウは床に魔方陣を出現させるとカルミオに告げる。


「その上に乗ってください。 羅奈様達の所に送ります」


「感謝する」


カルミオは魔方陣の上に乗ると羅奈達の所へ送ってもらった。


──


巨大な狼に姿を変えたエルザはソラトと戦っていた。


ソラトが風の刃をエルザに向かって飛ばすと、 エルザの硬い毛はそれを弾く。


「そんなものか!!」


エルザの口から炎が吐かれるとソラトは防壁を発生させ防ごうとする。 が、 炎は防壁を貫通し、 ソラトの体は炎に包まれた。


「こうなったら!!」



体を焼かれ苦しむソラトは天候を操り、 どしゃ降りの大雨を発生させた。

雨水がソラトの炎を消していく。

ソラトは黒焦げの肉体を魔法で回復させていく。


──この雨では、 硬い毛が濡れてしまう!!


ソラトが雨を降らせた理由はもう1つある。

エルザの毛皮を濡らし、 攻撃を通りやすくさせるためだ。


「くらいなっ!!」


ソラトは人差し指をエルザに向かってさすと、 雷撃を放った。

音より速い攻撃にエルザは対処しきれず直撃し、 その巨体を地に着けた。


全身が痺れて動けないエルザは、 ギロリとソラトを睨み付けることしか出来なかった。


「エルザ!!」


魔力切れにより強制的に実年齢である13歳の姿になっているオリアクスは歯を食い縛ることしか出来なかった。


倒れたエルザにオリアクスは駆け寄ると、 着ている黒色のパーカーのフードが動きに合わせて大きく動く。


白い半ズボンに少し華奢な足には銀色のブーツを履いているが、 どしゃ降りの雨でオリアクスの全身は濡れていた。


「クソ!! オレは何もできないままかよ!!」


認めたくないのか角が生えた頭を大きく左右に振ると銀色のショートヘアーが揺れ、 悔しがる高い声はまるで少女のようにも聞こえる。


オリアクスは大きな赤色のつり目で状況を確認する。


頼みのエルザは倒れており、 ラグリスは重症。 なんとか動けるのはボロボロの羅奈だけだった。


「アイツの片方の羽根が白くなっただけで、 ここまで追い込まれるとはね……」


ラグリスは動けない自分に苛立ちを隠せないでいた。


「さぁ。 あとは絶斬ゼツキを返してもらうだけだ。 お前だけはむごい方法で殺してやるよ!!」


声色に憎しみを宿すソラトのその言葉に、 羅奈は絶斬ゼツキを構えようとした時だった。


一つの魔方陣が濡れた地面に描かれていき、 カルミオが出現した。

その後ろ姿を見た羅奈はカルミオに注意する。


「ここは危険よ!! 離れて!!」


「ボクはアナタを守る!!」


ソラトは羅奈の口振りから仲間と判断し、 邪魔なカルミオを殺そうとする。


「数が増えたって同じさ!!」


ソラトはカルミオに向かって風の刃を放つとカルミオは炎の剣で真っ二つにし、 一瞬でソラトの目の前に移動すると、 顔めがけ蹴りを放つ。


ソラトは顔の前に両手をクロスさせると蹴りを防ぐも大きく後退する。

腕は赤く腫れているがダメージはそれほど与えられなかった。


「もう全員死にな!!」


ソラトがそう言った直後だった。


「皆様。 逃げましょう!!」


「「「!!」」」


突然聞こえた声に、 倒れていたエルザは反応すると、 濡れた地面に魔方陣が描かれていく。


「この声はまさか…!!」


声の主は羅奈を守ろうと前に姿を現す。


「皆様。 お迎えにあがりました!!」


「ダウ!!」


ダウが羅奈達の足元に巨大な魔方陣を描く、 どこか遠い場所へまとめて転移をさせようとしていた。


「逃がさないよ!!」


ソラトは残りの魔力を半分以上使い、 大きな雷を無数に発生させた。


ダウ達が転移をしようとした直後に、 雷はダウの頭上へと凄い速さで落ちる。 その瞬間にダウ達はどこかへ転移した。


「逃げられたようだね……」


ソラトは舌打ちをすると、 辺りを見回すとヴォールとヤーグの死体を見つけた。


「テンジン様になら、 どうにか出来るかも……。 一応マーラーも連れてかえろう」


ソラトは泣きそうになるのを我慢しながら魔方陣を描くとマーラーと死体のヴォール、 ヤーグと一緒に天界へ移動するのだった。


どしゃ降りだった雨はやみ、 雲の隙間からは朝日が顔を出していた。

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