子羊
オリアクスとソラトは相手の出方を伺っている。
ソラトは気を集中させて、 いつでも魔法を放てるようにしていた。
──まずは様子見だな
オリアクスが仕掛けると同時にソラトも素早く動く。
「くらいな!!」
ソラトはオリアクスが構える瞬間を狙い、 オリアクスの右手に向かって人差し指から雷を一直線に放つ。
「くっ!!」
オリアクスは雷をくらうと全身がビリビリと痺れた感覚が襲う。
ソラトは早く終わらせるため、 中級の魔法を連発していた。
オリアクスは体の痺れから立てなくなり、 その場に倒れこむ。
「痺れたようだね、 これで終わりにしてあげる!!」
ソラトが地面に触れると、 特大の雷が地面をつたいオリアクスめがけ迫ってくる。
「オレを舐めるな!!」
オリアクスの体から青色の煙が吹き出す。
それはソラトの雷を吸収していき、 煙は大きく辺りを包みこむ。
「まさか変身した……!?」
煙が消えると、 モコモコとした毛に覆われた子羊が姿を現す。
背中にはカラスに似た羽根、 2本の角は一直線になっており吸収した雷がバチバチと音をたてている。
「そんな子羊の姿で、 ウチに勝つつもり?」
ソラトは嘲笑うと相手の力量を測るため、 わざと初級の魔法である球体をオリアクスに向かって飛ばした。
「自分の首を絞めやがって!!」
オリアクスは球体をパクりと食べ、 モコモコとした毛に蓄えていく。
「じゃあ、 これはどうだい!!」
ソラトは青色の羽根を背中から出すと、 羽ばたきながら長い足でオリアクスを簡単に蹴り飛ばす。
蹴られたオリアクスは、 すぐ地面に着地し、 無傷だった。
モコモコと、 また毛の量が多くなっていく。
──力が吸収されてる?
ソラトは残りの魔力を気にしつつ、 子羊のオリアクスを倒そうとしている。
オリアクスは重くなった毛を、 体を振ることで蓄えた力全てを綿毛のように辺りに飛ばしていく。
フワフワとした毛が地面に触れると大爆発していく。
「なっ!?」
その光景をみたソラトは、 空高く羽根をはばたかせ空中へと逃げる。
「逃がすかよ!!」
地面に落ちていくオリアクスの毛は自由に動かすことができる。
多くの毛をソラトの周りに一瞬で飛ばすと空中には数を増してた毛が浮かんでいる。
「ウチの風で吹き飛ばしてやる!!」
ソラトは半分あるうちの魔力を2割消費し、 周りにあるモコモコの毛を竜巻で吹き飛ばしていく──はずだった。
「なんで毛が大きく!!」
魔法をくらった無数の毛は、 大きく膨らんでいき、 やがて目に見えるくらいにまで大きくなった。
──オレの毛は物理攻撃も、 魔法も、 全て吸収し、 その威力を増す!!
オリアクスは角から吸収した雷をビームのように放出し、 フワフワ浮いている毛に当てて大爆発させていく。
「こうなったら!!」
ソラトはありったけの魔力を使い、 自分を覆うドーム状の防壁を張る。
「これならどうだ!!」
オリアクスは肉眼では見えないほどの毛を防壁の隙間に飛ばし大爆発させ、 防壁を破壊していく。
「あああぁ!!」
大爆発を直撃で受け、 ソラトは地面に吸い込まれるように落ちていく。
「ぐぅぅ!!」
ソラトはなんとか立ち上がると、 ヤーグの片腕を見つけた。
「これはヤーグっちの……!!」
ソラトは憎しみの目になり、 子羊のオリアクスを睨み付けた。
オリアクスは思っていることを口にだす。
「お前たち天使が絶斬を奪おうとするから、 殺されるんだぜ?」
それを聞いたソラトは怒りから吠えた。
「うるさい!! そもそも絶斬を奪った悪魔が悪いんでしょ!!」
「天界にはまず行かねーよ!! なんでも悪魔のせいにするんじゃねぇ!!」
「ウチの恋人のヤーグを殺した悪魔め!! アンタ達は滅べばいいのよ!!」
ソラトの怒りが頂点に達したその時だった。
「な、 なに!? 力がどんどん溢れてくる!!」
ソラトの左羽根は青から白へと変わろうとしていた。
──まずい、 早く殺さなければ!!
子羊のオリアクスは口を開け、 氷のビームを発射する。
「こんなもの!!」
ソラトは残り僅かな魔力で初級の魔法である球体を氷のビーム向かって飛ばす。
爆発音とともに、 ビームと球体は相殺した。
「ウソ……だろ!?」
オリアクスは目を見開いて驚き、 あっという間にソラトの左羽根は白色に変わった。
「やっと、 白羽根に近づいた!!」
ソラトは白色の羽根になったことで魔力を全て回復し、 満面の笑みを浮かべると、 中級魔法である雷を子羊のオリアクスに向かって放つ。
──避けれねぇ!!
音よりも早くオリアクスの体に命中し、 子羊の変身を解いたのだった。
「右羽根が白色になったとき、 アンタは終わる!!」
ソラトは魔法で天候を雷へと変えていった。