天使対悪魔
「エルザさん!!」
羅奈はエルザのほうへと駆け寄り、 絶斬を構えた。
「青。 塔に戻っていろ!!」
「でも、 こんなに大勢の敵がいるのよ。 エルザさん一人──」
「私の攻撃は広範囲だ、 巻き込みたくはない!! だから逃げろ!!」
「……嫌よ!! もしかしたら、 私にも何か出来るかもしれない…だから、 ここに残るわ!!」
羅奈はそう言えばエルザの邪魔にならないように離れる。
「では、 手出しはするな!! 攻撃に巻き込まれてしまう!!」
「わかったわ!!」
「魔界の王子であるこの私を前にして、 生きて帰れると思うな!!」
そう言えばエルザはショットガンから魔力を込めた銃弾を発射する。
銃弾は悪魔の額を撃ち抜き、 一匹。 また一匹と霧となって消えていく。
──魔力をこめた技であれば倒せるのか
エルザはそう確信すると順調に小型の悪魔を倒していく。
「邪魔……」
マーラーは無機質な声色で告げると、 狙いをエルザにさだめようとしていた。
エルザは悪魔を一掃しようと考え、 ショットガンを持ちながら助走をつけて空高く飛び上がり、 体ごと銃身を真下へ向ける。
無数の悪魔の脳天がエルザの瞳に映ると、 爆発する弾を銃の中で形成し弾丸を放った。
「ぐああ!!」
一匹の悪魔の頭を撃ち股まで貫通させると、 弾は地面に落ちる。
その瞬間、 辺りを巻き込む爆発が発生した。
大勢いた悪魔達は悲鳴をあげながら爆発に巻き込まれていく。
(すごい威力ね……)
羅奈がエルザの攻撃にを見てそう思ってる内に、 ソラトはマーラーへ声をかける。
「マーラー!! ソイツらのことは任せたよ!!」
爆発を離れた所で見ていたソラトはオリアクスを殺そうとする。
オリアクスは口から血を吐き捨てるとソラトにこう言った。
「確かソラトだったか? オレを殺そうとするとは酷いぜ」
「裏切り者め!! アンタだけは許さないよ!!」
「好きで天使側についたんじゃねぇ。 マーラーのためだ」
「そのマーラーって奴はおかしくなってるじゃない!! なんでテンジン様も敵対している悪魔を操り人形にさせたんだか……」
ソラトは呆れたように呟くと、 オリアクスに向かって魔法で雷を落とすも、 余裕でかわされてしまう。
「オレの隙をつこうたって、 そうはいかないぜ!!」
「オリアクスはすばしっこいね!!」
ソラトは舌打ちしながら、 風の魔法を使いオリアクスを吹き飛ばそうとするも、 分厚い氷の防壁で防がれてしまう。
防壁を前にしながら、 オリアクスは残りわずかな魔力でどう戦うか作戦を考えていた。
──35%の確率しか成功しないが、 やってみる価値はありそうだ。
オリアクスは防壁を跳び蹴りし、 分厚い防壁を粉々に砕くと、 無数の破片がソラトめがけ飛んでくる。
「なめんじゃないよ!!」
ソラトは手のひらから強めの風を飛ばし、 破片を全て吹き飛ばす。
オリアクスはソラトの背後に回ると氷の剣で突き刺そうと構える。
「そっち!!?」
ソラトは振り替えるも反応が遅れ、 それに気付くとギリギリで向かってくる剣を避けるもソラトの頬に切り傷がつき血が流れた。
──これで準備は整ったな。
オリアクスは笑みを浮かべると最後の仕上げに取りかかった。
「お前。 魔力は沢山あるか?」
急な問いかけにソラトは怒りをあらわにする。
「ハァ!? だれが悪魔に教えるもんですか!!」
オリアクスはその答えを満足な顔で聞いた後、 こう言った。
「その答えだけで十分だ!!」
オリアクスは右の手のひらをソラトに翳すとソラトの頬の傷口から魔力がこぼれ吸収されていく。
「ウチの魔力が!? なんで!?」
「さっきお前の頬に傷をつけただろ!!」
「!?」
オリアクスは魔力を回復するためにソラトの魔力を徐々に奪っていく。
その方法は相手にわずかな軽傷を負わせ、 相手に問いかけをしたときのみ発動する魔法だ。
魔力が半分以下にならないと発動できない魔法だが、 オリアクスは試す価値があると思い実行した。
魔力を半分まで吸われたソラトは少しだけよろけると、 オリアクスを睨み付けた。
「アンタだけはウチが必ず殺す!!」
「もう魔力も吸えなくなったし、 次の戦いへと移ろうぜ!!」
オリアクスとソラト、 二人の戦いが始まった。