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協力


夜になった魔界には無数の星が輝いていた。


あれから羅奈とラグリスはハムスターの姿のダウに2階の食堂へと案内されると不機嫌なカルミオが座っていた。

羅奈は声をかける。


「カルミオさん。少しは落ち着いた?」


「ほんの少しだけだな。しかし、ボクよりラグリスのほうが…」


カルミオは横目でラグリスを見ると虚ろな表情をしていた。

すると、 まだ魔力が回復していないハムスターのダウが声をかけてきた。


「わたしはこんな姿なので料理を作れません。本当にすみません」


本当ならダウが料理するのだが、ハムスターの姿では無理なので仕方なく羅奈達で料理を作り、それを食べた。

カルミオ達と食堂で別れると。羅奈は皿に余らせた料理を盛り付け地下へと向かう。

エルザに食事を持っていくためだ。

羅奈は工房の前の扉に着くと、 扉をノックする。

すると中からエルザの声が聞こえた。


「入ってくるな!!!」


「食べないと作業に集中できないわよ」


羅奈はいつもと変わらない声色で言うとドアが音を立てて開いた。

疲れきったエルザが顔を出す。


「本当に大丈夫なの!?」


「私を信じろ!!」


エルザは意志の強い瞳でそう言って皿を受けとると再びドアを閉めた。


「エルザさん。無理して倒れないでね」


そう言えば羅奈は3階にある部屋の一室に移動しベッドに座った。

羅奈の左にあるベッドにはラグリスが虚ろな瞳をして座っている。


「ご飯、 美味しかったわ。 ラグリスもご飯は食べたのよね?」


羅奈はラグリスを気遣って明るい声色で話す。


「………そうだよ」


反対に元気がないラグリスは声は暗かった。


「エルザさんにご飯を持って行ったのだけど。 かなり疲れた様子だったわ」


「……エルザは無理するところがあるからね」


「そうなのね。心配だわ」


「羅奈も自分のことを気遣いなよ。かなり疲れているだろう?」


「確かに疲れているわ。 けど、 動いてないと落ち着かなくて……。 オリアクスさんのことも気がかりね、 拷問とかされてないといいんだけど」


「オリアクスがもし拷問されたら、 僕は天使のことを一生許さないよ!!」


ラグリスの声色に怒りが混ざると羅奈はなんと声をかけていいか分からないでいた。


──コンコン



ノックの音が聞こえた羅奈はベッドから降りるとドアを開ける。

だが、 そこには誰もいなかった。


「こっち……」


声は羅奈の足元からする。


「えっ? ──あっ!!」


視線を下に向けるとクマのぬいぐるみが立っていた。


「お兄様が羅奈ちゃんを呼んでくれって……」


「ぬいぐるみが喋ってる!?」


喋るぬいぐるみの声に聞き覚えがあった羅奈はフィリアの声だと気づいた。


「わかったわラグリス。ちょっと行ってくるわね」


「ああ」


羅奈は部屋を出るとフィリアに着いて行った。


──


羅奈は工房の扉を開けると中へと入る。

その部屋は8畳ほどの広さで様々な工具が床に散乱しており、 大釜の熱で部屋中とても暑かった。 エルザは絶斬ゼツキを手にしており、 羅奈に気付くと近付いてきた。


エルザは目を保護するために透明で大きなメガネをしており、 普段着の上にはデニム生地のエプロンをしていた。 顔は疲れきっており今にも倒れそうだ。



「ほ、 本当に大丈夫?」


羅奈の心配をよそにエルザは呟く。


「まだ修理は終わっていないが、試したいことがあるのだ」


エルザはそう言えば羅奈に絶斬ゼツキを渡すと、 ぬいぐるみのフィリアと一緒に羅奈から遠く離れた。


「軽く振ってみろ」


「こう?」


言われた通りに羅奈が軽く振るうと、 一歩離れた場所で勢いよく大きな炎柱が上がる。


「熱っ!!」


羅奈は予想外の出来事に驚き、思わず絶斬ゼツキを落としそうになる。


「威力が強すぎたか。調整せねば」


羅奈の反応とは反対にエルザは落ち着いた声色で呟く。


「せめて、少しの炎が出るようにしてちょうだい。 これじゃあ大きく振るうことができないわ」


「大振りしようものなら、敵が丸焦げになるか……それも良いのだがな」


「炎が出るのもいいけど、せめて味方に被害がでないようにしたいのよ。 この勢いだと振り方によっては味方まで丸焦げだわ」


「意見、感謝する。炎はやめにしよう」


エルザはキッパリと決断すると羅奈の近くまで歩いてきた。


「例えば、所有者の想いの力でパワーアップとかは出来ないの?」


「想いの力か……フィリアと呼吸を合わせるしか方法がないな」


エルザの足元にいるフィリアを見ると羅奈が呟く。


「私、フィリアちゃんと全く呼吸を合わせてなかったわね」


「羅奈ちゃん。天使と戦うときは怖い気持ちのほうが強かったから……」


ぬいぐるみのフィリアはシュンと肩を落とす。

エルザは羅奈から絶斬ゼツキを受け取ると修理に取りかかっていた。


「そうね。 いつも怖がっていたわ」


「だからわたしがたまに動かしていたの……」


「そうだったのね。もしかして私が戦う前から殺せと囁いていたのはフィリアちゃん?」


羅奈は蛇の天使や絶斬ゼツキを初めて手にした頃を思いだしながらフィリアに問いかける。


「うん。羅奈ちゃんになるべく天使を多く殺してほしくて」


「もしかしてフィリアちゃんも天使が嫌い?」


それを聞いたフィリアは怒りを露にした。


「大嫌い!! わたしの身体と魂を分離させた存在だから!!」


その言葉を聞いて羅奈はフィリアに言った。


「そう。 私も天使が嫌いよ。ねぇフィリアちゃん。 私と一緒に力を合わせてくれる?」


「もちろん。 羅奈ちゃんが危なくなったら絶斬ゼツキを媒介に姿をあらわすからね。 だから絶斬ゼツキを奪われる心配はないよ。 話すくらいなら絶斬ゼツキの姿でもできるから、 アドバイスを送るね」


「ありがとうフィリアちゃん」


羅奈はそう言えばエルザに声をかけた。


「エルザさん。修理頑張ってね」


「ああ。 天使はいつ襲ってくるか分からぬ。 休めるうちに休んでおけ」


「ありがとう。 じゃあ私は寝るわ。 おやすみなさい」


「「おやすみ」」


羅奈は工房を後にしするとエルザが肩をトントンと叩き、 金槌で刃の部分を叩く。


「いよいよ、仕上げだな」


エルザは栄養ドリンクを飲みながら作業を続ける。


「頑張ってね。お兄様」


「ありがとう。フィリア」


エルザは照れくさそうに笑みを浮かべるとやる気を出すのだった。

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