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秘密


青色の羽根を羽ばたかせ夜空を飛ぶヤーグは途中で買った小さなパンを頬張りながら呟く。


「早く着きたいから、 転移魔法を使うッスよ」


空中で静止し、 精神を集中させるとヤーグの姿が一瞬にして消えた。


──


「なんとか魔界に着いたみたいッスね」


ヤーグは森の中にいた。 羽根を羽ばたかせて空を飛ぶと、 数キロ離れた先に塔がポツンとあった。


「ソラトから聞いたことあるッス。 確かエルザの工房がある塔だったような。 とにかく行ってみるッス」


ヤーグは猛スピードで塔に向かう、 その姿を報告に向かうオリアクスが地上から偶然見ていた。


「あれは天使じゃねーか!! すぐに知らせないとな!!」


オリアクスは全力疾走すると塔の扉を勢いよく開けた。


その音にジャンガリアンハムスターの姿のダウが慌てて近くの部屋から出てきた。


「オリアクス様!! どうかなさいましたか?」


「て、 天使。 ゲホっ…。 天使がこっちに向かってくる!!」


「わかりました!! オリアクス様はここで戦闘準備をしてください。 天使が奇襲をかけてくる可能性があります。 わたしは皆さんを呼んできます!!」


「わかったぜ!! 一応エルザもオレと一緒の所に来るように伝えてくれ!!」


「わかりました。 では、 また後で!!」


──


ダウに呼ばれて降りてきた羅奈達は1階のエントランスにいた。


「また天使なの。 もういい加減にしてほしいわね」


羅奈はうんざりした様子で重い溜め息を吐くとラグリスが声をかける。


「この前みたいに弱いといいんだけど。なにせレッヒェルンだからね。 気を引き締めなきゃいけないよ」


「ラグリスが弱いと言った天使でも、 私には強く感じるわ」


「羅奈は慣れてないからね」


「そうね。 強くはなりたいのだけれど。 今回もお願いできる?」


「ああ。 任せ──」


ラグリスの声をかき消すように銃弾が発射される音が近くから聞こえる。

その音に気付いた羅奈はラグリスに問いかける。


「やっぱり奇襲をかけてきているのね」


「これはエルザが銃を使ってる音だね。 緊張してきたな」


「ねぇ。 レッヒェルンは最強の天使達なのよね? オリアクスさん達は勝てるの?」


「僕はオリアクス達のことを信じているよ。 でも、 本音を言えば凄く心配さ。 ダウから伝えられたこと覚えてるかい?」


「確か、 オリアクスさん達が食い止めている間に天使の背後から首を跳ねるという作戦だったかしら」


「羅奈。 申し訳ないけど、 その作戦は中止だよ」


ラグリスの予想外の返事に羅奈は驚いていた。


「じゃあどうするのよ!? オリアクスさん達を見殺しにしろっていうの!?」


その言葉を聞いたラグリスは強い声色で言い返す。


「違う!! 絶対に見捨てたりしない!! 僕達で加勢して天使を倒そう!!」


「じゃあ行きましょう!! 早く戦いを終わらせないと!!」


羅奈達は走るとオリアクス達の所へ向かった。


──


「クソっ!! 全然魔法が当たらねぇ!!」


オリアクスはヤーグの素早さに冷や汗を垂らしていた。

オリアクス達は塔の入口を守るように空に浮かぶヤーグを倒そうとしていた。

数十個の氷のつぶてをヤーグに向かって放つもギリギリの所で全てかわされてしまう。


「私の魔力が尽きぬうちに撃ち落とせば良いのだがな」


子供の姿のエルザは魔法で形成した銃を撃つもオリアクスと同じように全てかわされてしまう。


ヤーグは高速の速さで空を飛びながら挑発する。


「余裕ッスね!! ヴォールを殺したのはまぐれだったんじゃないッスか!!」


オリアクスは歯を食いしばりながら挑発にのらないようにしており、 エルザはヤーグの一瞬の隙を狙うため銃を構えていた。


「しっかしアンタ達弱いッスねぇ。 何が悪魔だ。 ただの陰気な種族じゃないッスか!! ザコすぎて笑えるッス!!」


素早く移動したまま挑発を続けるヤーグにオリアクスの我慢の限界が来ていた。


「うるせぇ!! 黙れ!!」


オリアクスは手を構えると、 ヤーグの上から巨大な氷柱を数百本出す。

そしてそのままヤーグめがけてすごい速さで落とす。


「ハァァ!!!」


ヤーグは分厚い防壁を自分の周りに防壁を発生させ、 完全に防いだ。


「ふぅぅ~。 悪魔のクセにやるんスね」


ヤーグは胸に手を当てて深呼吸し、 気持ちを落ち着かせる。

防壁を一気に消した瞬間。 銃弾が頬をかすった。


「………ハズレか」


エルザは銃弾をリロードすると構えなおす。


「ガキの癖に冷静ッスね!!」


ヤーグは相手がエルザとは知らず舐めてかかっていた。


エルザは分析している最中だった。

ヤーグは守りと素早さが長けていて、 腰に剣をさしていながら今まで攻撃を仕掛けてきたことはない。 もし攻撃力も高ければ子供の姿では太刀打ちできないと考えていた。


すると一本の黒い針がヤーグの右頬をかする。

頬から血を流しながらヤーグは投げてきた場所を特定した。


「お前ッスね!! オレっちに何かを飛ばしたのは!!」


青羽根(ブラウフェーダー)の天使のようだね……。 残念だよ」


ラグリスは素早く連続で血で作ったナイフを飛ばす。

ヤーグは薄い防壁を目の前に出すと防壁がナイフをはじく。


余裕の笑みを浮かべていると、 ヤーグは身体に全身の痺れを感じた。


「あのときの針ッスか!!」


「痺れるだろう? 首を跳ねないと死なないんだ。 せめて苦しみながら死んでくれ」


ラグリスはそう呟くと遅れて息を切らした羅奈が背後からやってきた。


「ラグリス……走るのが速すぎるわ」


「ごめんよ羅奈。 先に行ってしまって」


絶斬ゼツキ!! それがあれば天界を救える!!」


ヤーグは体を震わせながら起き上がり一歩足を踏み出した。

地に足をつけた瞬間、 ヤーグの目に見えない魔法陣が発動した。


「ッ!! なんだ!! 動けな…!!」


「オレの魔法にかかってくれて助かったぜ」


オリアクスはニヤリと笑うと手をかざし、 ヤーグの足元を凍らせた。

エルザはヤーグの心臓に銃を構えていた。

ビキビキと音を立て、 ヤーグの身体は凍っていく。

股の所まで凍ってくるとヤーグは笑っていた。


「甘いっス!!」


そう言えば手を前につきだし構えを取る。

するとオリアクスの頭に声が響いてきた。


「お前がオリアクスでいいッスか? いつまでもそっち側にいないで、 天使の方へと来るッスよ」


オリアクスはエルザに聞こえないように口に出すのではなく、 心で呟く。


「……オレが行くと思うか?」


その言葉を聞いたヤーグはオリアクスの記憶を覗く。

その記憶は幼いオリアクスの目の前には親友のマーラーが剣を持った大人に心臓を刺された光景だった。

幼いオリアクスが大人を涙目で睨み付けている。 太陽の逆光が邪魔で顔は確認出来なかったが背には大きな羽根がはえていた。

その記憶を見終わった空気が変わったようにヤーグはこう呟く。



「親友を殺されて、 かわいそうに」


「あれは天使が殺したんだろ!!」


だが、 ヤーグはオリアクスの記憶を覗き、 真実が分かったようでバカにするように笑った。


「ハハハッ!! 本当に天使が殺したと思ってるのかよ?」


「どういうことだ!!」


オリアクスは目を開いて驚く。 

ヤーグは仕上げだと言わんばかりに言い切った。


「お前バカだろ。 天使じゃなくて、 悪魔に殺されたんだよ!!」


「なっ!!?」


「テンジン様は死者を蘇生させることができる。 親友さんを生き返らすことなど簡単だ。 天使につけばいいのによぉ」


「オレはこの命が尽きようとも天使側にはつかねぇぞ…それにオレは絶斬ゼツキの所有者を守ると決めたんだ! 」


「親友を生き返らせたいなら天使側につけ」


何度も繰り返されるその言葉に、 オリアクスの心は揺れ動いていた。


「オレは──」


突然、 銃弾が発射された音がオリアクスの耳に入ってくる。

動かないオリアクスとヤーグにエルザが痺れを切らして撃ったのだ。

だがヤーグは弾丸を指の間で挟んで受け止めた。


その光景を見てエルザは考えた。


──この姿では身の丈にあった銃しか魔法で形成できないか。


「やはりレッヒェルンの天使なだけはあるな。 私は相手の力量を見謝っていたようだ」


最後の一発を撃ち終わったのかエルザの手に握られた銃はサラサラとした砂になっていた。

腰の所まで凍っていくヤーグは受け止めた銃弾を落とすと、 転移の魔法を使おうとしていた。


羅奈は逃げられると思い、 素早い動きでヤーグの背後に移動した。


「今回は収穫ありッスね…!!」


そう言ってヤーグが手をかざした瞬間。 羅奈は絶斬ゼツキを振り下ろすが、 ヤーグが出した防壁に邪魔されてしまった。 羅奈は本気の力を込めてもう一度振り下ろすも、 キズすらつけられずにヤーグの姿が消えたのだった。


「まだ奴の気配がするな。 この魔界のどこかにいるぞ。 オリアクスくん、 悪いが探してくれぬか」


「わかったよ。 行ってくるぜ」


そう言えばオリアクスは気配をたどり走っていった。


「ラグリス。 私達も行きましょう!!」


「ああ!!」


羅奈達はオリアクスを追いかけた、

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