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特異体質


父親に案内された場所は鉄棒や長い滑り台、 ブランコなど沢山の遊具があり大きなトランポリンまである。

子供達は沢山遊んだあと、 疲れてベンチに座り休憩していた。


「とうさんもくればよかったのに」


「とうさんは忙しいんだよ」


「きゅうけいがおわったら、 つぎはすべりだいするんだ」


「そうしようか」


子供達が話終わるとベンチから降りた。

まだまだ子供達の遊びは続きそうだ。



──


食事会も終わり、 使用人達が片付けをしている中、 父親のラグリスとカルマは話していた。



「して、 カルマ殿。 食事会のために僕を呼んだわけではないだろ?」


「鋭いな。 実はそなた達を魔界に住ませてやろうと思ってな」


それを聞いた父親のラグリスは驚くと同時にある事に気が付いた。


「まさか天使が戦争をしかけてくるのか?」


「その兆候はある。 だからそなたを右腕として側に置いておきたいのだ。 天使達がアジトにしている場所は魔界からは遠い場所にある。 近いうちに私の兵達とそなたとで奇襲をかけようと思う」


「僕は構わないけど、 子供達はどうすれば。 まだ小さいしどこか預けられる場所があればいいんだけどね」


「子供達は部屋を用意する。息子のエルザと仲良くしてくれたら嬉しい。そなたは妻を亡くした…。一人では子育ては大変だぞ」


「それはカルマ殿もだろう。君の奥さんは僕の妻ととても仲が良かった…。けれど…二人とも流行病で……。本当にお互い苦労するな。しばらくは魔界に住まわせてもらおうかな。奇襲の作戦は子供達が寝てから今日の夜に考えよう」


「感謝する。そなたと子供達には城の一室を貸してやろう」


「フフ、豪華すぎるね。そろそろ子供達を迎えに行ってくるよ」


「気をつけてな。いつ天使が来るかわからん」


「ああ。じゃあ行ってくる」


──


「おーい、そろそろ帰るぞ」


ショートヘアーの子供が父親に声をかけた。


「えー!! まだあそびたいよー!!」



「とうさんがむかえにきたから、かえるのっ!!」


ロングヘアーの子供はショートヘアーの子供に厳しく言うと、 しぶしぶ言うことを聞いた。



「さぁ、帰ろ──っ!!」



父親達の目の前に白いフードを被った白羽根(ヴァイスフェーダー)の天使が降りてくる。

背の低さから子供の天使だと思われる。


「あーてんしだーほんものだー!!」


ショートヘアーの子供が大声で嬉しそうにはしゃぐ。

反対にロングヘアーの子供は怯えて父親の袖を掴んでいた。

父親が子供の手を自分の袖から離すと大声で叫ぶ。


白羽根(ヴァイスフェーダー)の天使!! お前達! 逃げろ!!」


「死ね!!」


白羽根(ヴァイスフェーダー)の天使はそう言って魔法で形成した剣をためらうことなく父親の腹に突き刺し腹から剣を抜いた。


「ガハッ……!!」


「「とうさん!!」」


父親は血を吐くと心配する子供達をよそに、ヨロヨロと歩きくと鉄棒の前にやってくる。


「子供達に手出しはさせない!!」


父親は怒りを込めた声で呟くと鉄棒を掴んで溶かすと剣に変形させた。


「やはりその能力は天使にとって危険すぎる!! その特異体質はやがて天界を滅ぼす力となる!!」


白羽根(ヴァイスフェーダー)の天使の声は少年だった。

だが、父親には関係なく相手のことを敵と見なしていた。


「二人とも早く逃げ──」


叫びも虚しく父親は背後からの無情な一撃を浴びその場に倒れた。

子供達を気にするあまり隙がうまれていたことに父親は気づけなかった。

慌てて子供達は父親の所に走っていく。


すると天使が突然、二人いるうちのロングヘアーの子供の髪の毛を掴むと後ろに引きずり回す。


「いたい!! いたいよぉ!!」


子供は泣き叫ぶと天使に片方の手で口と鼻を塞がれてしまう。

呼吸できない苦しさからジタバタと暴れるロングヘアーの子供にショートヘアーの子供が相手に向かっていく。


「よくも!!」


相手の身体に本気で殴る蹴るを繰り返すが所詮は子供の力。 全く効いておらず、天使は鼻と口を塞いでいた手を離すと赤色の球体を飛ばしショートヘアーの子供をぶっ飛ばした。


「ハァハァ…グゥゥ!!」


微かに息があった父親は最後の力を使うと周りにあった鉄が一瞬にして溶け、槍や剣などの武器になった。

握り拳を作った瞬間、天使めがけて数多の武器が向かっていく瞬間だった。


「甘い!!」


父親の背後に瞬間移動した天使は剣を相手の背中に突き刺した。


「ッ!!」


痛みのあまり声をあげれずにやがてピクリとも動かなくなった。 


「そうだ、そこの子供に面白い呪いをかけてやろう」


白羽根(ヴァイスフェーダー)はそう言ってショートヘアーの子供を指さすと指から一筋の光が子供の体内に入っていく。


「あつい!! あついよぉ!!」


子供は泣きながら訳が分からずパニックになっていた。


全身が燃えるように熱く、その場でのたうち回る。


「お前はルシアの一族の子供で性別によって特異体質が変わるそうだな。クク…これから毎日、性別が変わる呪いをかけてやったのだ。それだけじゃない、ラグリスの子供である、お前の半分以上の力を封じてやった!! これで天使を一人も殺せなくなった!!」


「あ…ぐぅ…!!」


「子供達をアジトへ連れていけ!!」



──バサッバサッ


3人の青羽根の天使が降りてくると泣き叫ぶショートヘアーの子供とロングヘアーの子供を父親と別れさす暇もなく天界へと飛ばした。


「この男の死体は天界に隠しておくか」


天使は父親の死体と共に消えた──


──


天界に着いた子供達は手足を鎖に繋がれて吊るされた状態になっていた。


ショートヘアーの子供の目の前には白羽根(ヴァイスフェーダー)がいた。


「一卵性の双子か? どっちがどっちだかわからないな」


「「ヒック…とうさん」」


双子達は泣きじゃくり相手の話など聞いていなかった。


──ブスッ!!


ショートヘアーの子供の腹にナイフが刺さる。

切り開かれた部分から真っ赤な血が溢れだし、ポタポタと床に落ちていく。


「ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛!!!」


「やめてぇ!!」


叫ぶ子供と泣き叫ぶ子供の二つの悲鳴に似た声が白羽根(ヴァイスフェーダー)の耳に心地よく入ってくる。


「アハハハ!! もっと苦しめぇぇ!!」


そう言って白羽根(ヴァイスフェーダー)はナイフを突き刺したり切りつけたりと対象を一人に絞り拷問を続けていった。

その間、もう一人の子供は片方の叫び声を聞かせ続けられていた。


──30分後


「こんなものでいいだろう。……さすがはルシアの一族。血液の量は悪魔の10倍というのは本当だったか」


白羽根(ヴァイスフェーダー)が近くの椅子に腰をおろし肩を叩くと、何かを思い出したように呟いた。


「そうだ。面白いものがあるぞ」


立ち上がると熱せられた焼きごてをロングヘアーの子供の前に持ってくる。


「ヒュー……ヒュー……」


ショートヘアーの子供は息も絶え絶えの様子だった。


ロングヘアーの子供は焼きごてがどのように使われるか一瞬で理解した。


「やだぁ!! とうさんたすけてぇぇ!!」


ガチャガチャと鎖が動く音がするも抵抗虚しく服をたくしあげられ、 熱せられた焼きごてを腹に当てられる──その時だった。


「ぬうぅぅん!!!」



魔王カルマが未完成の絶斬ゼツキを使い白羽根(ヴァイスフェーダー)の首を跳ねようとしたが、 素早くかわされてしまった。


「感動のご対面ってやつだなぁ!! ケケケケ!!」


白羽根(ヴァイスフェーダー)は手をパンパンと叩き挑発するが魔王カルマの魔法でわざと拘束される。


「グッ。戦いにきたわけじゃあなさそうだな子供達を助けにきたか…ハハハ」


「うわあぁぁぁん!! カルマ様あぁぁぁ!!」


見たことのある顔に安堵したのかロングヘアーの子供は泣いていた。


「遅くなってすまなかった。っ!! まずい!!」


カルマはショートヘアーの子供の鎖を未完成の絶斬ゼツキで斬ると、すぐに容態を確認した。


「しっかりしろっ!!」


必死になってカルマは治癒魔法を使うも人間であるショートヘアーの子供には効かない。

悪魔が使う治癒魔法は悪魔にしか効果がなく、人間には全く効果がなかった。



「ヒュー……っ…ュ…」


やがてショートヘアーの子供はピクリとも動かなくなった。

それでもカルマは必死に助けようとしている。


すると遅れてカルマの執事、ダーラが走って拷問部屋に入ってくる。


「ダーラか!! もう一人の子供の鎖を外してやってくれ!!」


「はっ!!」


「助かってくれよ!! 頼むっ!!」


涙を流しながら必死になるとカルマはショートヘアーの子供に心臓マッサージを始めた。


鎖が外されたロングヘアーの子供は心配な顔をしていた。


「カルマさま。たすけてあげて」


「当たり前だ!!」


数分間マッサージを続けているとショートヘアーの子供は息を吹き返した。


「よかった。 本当によかった!!」


「ありがとうカル──」


突然、 バタリとロングヘアーの子供が倒れた。


「どうした!! おいっ!!」


カルマが抱きかかえると目の前にはダーラの姿があった。


「ダーラ!! いや、違うこの気配は天使か!!」


ダーラに化けていたのは白羽根(ヴァイスフェーダー)の分身だった。


本体の白羽根(ヴァイスフェーダー)の天使はニヤニヤしていた。


「私は拘束されてるんで動けない。分身の余興に付き合えよ」


分身がカルマにお辞儀をするとバカにするように言葉をあらためた。


「あらためてご挨拶を…。お久しぶりですカルマ様。魔界にいた頃はお世話になりました」


「天界から追い出されたと言って哀れに思い、特別に住まわしてやった恩を仇で返しおって!! いずれその羽根をもぎ取ってやろう!!」


「そのようなこと言ってる暇あるんですか? 髪の長い子供が倒れましたよ」


「白々しい!! 貴様がやったんだろう!!」


「ええそうです。その子供にも呪いをプレゼントしましたよ」


──ガっ!!


カルマは怒りから白羽根(ヴァイスフェーダー)の天使の顔面を本気で殴った。


かなり遠くまで殴り飛ばされた白羽根(ヴァイスフェーダー)は体を床に叩きつける。


カルマは人差し指をかざすと床に一瞬で黄色の魔方陣が描かれていく。

魔界に帰るために自分と子供達を転移させたのだった。


「逃げられたか」


白羽根(ヴァイスフェーダー)の天使は痛みに表情を歪ませて白いフードを外す。


その顔はあどけなさがあり、薄い金髪が特徴の10歳にも満たない少年だった。


「まぁいい。ラグリスの死体は冷凍保存してある。クク、あの男の特異体質を調べれば何か分かるかもしれないな」


そう言って不気味に笑うと姿を消したのだった。



魔界に戻ってきたカルマ達は子供達に手当てを受けさせた。

治癒魔法が効かないので薬品を塗っていく。

そうして長い1日が終わった。


──


「ユリィは結局その後に目覚めなかった。 呪いが原因だろうってカルマ様が言っていた。 僕は一命をとりとめたけど体には傷痕が残ったんだ」


ラグリスの語る過去の話に羅奈の表情は怒りに満ちていた。


「許せない!! どうしてそんな酷いことを!!」


「これで僕が天使を嫌う理由が分かったかい?」


「ええ、よく分かったわ!!」


「その怒りは天使と戦うまでとっておきなよ。疲れたから休憩にしよう」


そう言ってラグリスは屈伸をした。

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