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ラグリスの過去


ラグリスは妹のユリィの所に行ったのを羅奈とエルザは確認し、工房に戻ると、羅奈は気になっていることをエルザに聞いた。


絶斬ゼツキのことなんだけど、呪われた大鎌って言われているのよね?」


向かい合わせに椅子に座るとエルザが口を開いた。


「そう言われているのは人間達が最初に言い出したことだ。やがてその声が大きくなり、呪われたと言われている」


「そう。じゃあ呪われてはいないのね」


「魔界の楔の役目もあるのだぞ? 呪われていたら魔界に起こる大災害を食い止められないだろう」


「それもそうね。そういえば、最近フィリアちゃんが話しかけてくれないのよ。なんだか寂しいわ」


「フィリアは恥ずかしがりやだからな」


「そうなのね。なんだか、妹が出来たみたいで可愛いわね」


「フィリアと仲良くしてくれると、私も嬉しい」


「わかったわ」


「天使がフィリアに呪いをかけなければ、もしかしたらフィリアはみなと仲良く出来たのかもしれないな…」


羅奈は呪いという言葉にうんざりした様子で息を吐く。


「また天使…。ラグリスの妹さんも呪いにかかっているし、なんだか天使のことが嫌いになるわね」


「……ラグリスがなぜ天使を嫌いなのか知っているか?」


「知らないわね。聞いたら教えてくれるのかしら?」


「前にラグリスがブラウに話したいと言ってたぞ」


「じゃあ、今から聞いてくるわね」


「ああ」


羅奈は立ち上がると工房を後にした。


──


羅奈は扉を開けて地下室の階段を降りていくと眠ったままのユリィと座っているラグリスの姿があった。


「ラグリス、ちょっといいかしら?」


「羅奈。どうしたんだい?」


「アナタの過去を知りたいのよ。話しづらいと思うけれど……」


「そうかい……前に話すって言ってたからね」


「ええ」


ラグリスは少し悩みながら答えた。


「どこから話そうか……。 そうだな。 僕が小さい頃の話から聞かせよう。 あれは僕が7歳だった頃──」



──


朝日が昇る魔界に三人の人影があった。


20代後半の童顔が特徴の父親と思われる男に手を引かれながら幼い双子が歩いている。

双子は紺色のロングヘアーの子供と紺色のショートヘアーが特徴の子供だった。


父親は貴族風の黒い服装、紺色のショートカットに赤色の瞳。双子達は子供用の燕尾服を着ていて黒い半ズボンがよく似合っている。


双子のうちの一人が父親に声をかけた。


「父さん。今日はまおうさまの所にいくの?」


「そうだよ。食事会に招待されたんだ。お前達、失礼のないようするん」


父親はそう言ってショートヘアーの子供の頭を撫でる。


「あーずるい!! ぼくもなでてー!!」


ロングヘアーの子供が父親の手を掴む。


「はいはい。甘えん坊だな」


父親は困った顔をしながら優しく頭を撫でた。


その様子を二人の男の悪魔が珍しげに見ている。


「おい、アイツら人間だぜ? なんで魔界なんかに」


「アンタ知らないのか? 鉄や血を武器にするという特異体質から魔王カルマ様に気に入られ、親友になったラグリスさんだよ」


「そうなのか!? そういえば噂によればラグリスさんの父親が人間だったらしいな」


父親がその声に気付き、声をかけてきた。


「好き勝手に言わないでくれ……と、言いたいけど父が人間だったのは本当さ」


「じゃあラグリスさんは純血の人間ってことになるのか?」


「僕はハーフだ。半分しか悪魔の血が流れていない」


「なら、ラグリスさんは悪魔と人間との間の子供だな。なんだか色々と大変そうだな」


「ま、それなりに大変だよ。じゃあまたな」


悪魔達と別れ歩き続けるとやがて城に着き父親は門番と話す。


「ルシア家の方ですね。カルマ様がお待ちです」


「ああ。少し早く着きすぎてしまったかな?」


「大丈夫ですよ。ここを真っ直ぐに進めば謁見室に行けます」


「ありがとう」


父親はそう言って双子達の手を引き謁見室に向った。

双子達は目を輝かせながら廊下を歩く。


父親は謁見室の扉を開けると長い廊下を歩き玉座に座る魔王と対面した。


床に膝をつき、頭を下にする。

双子達はそれを真似していた。


「お久しぶりです魔王カルマ様。今日はお招きいただき感謝いたします」


父親が顔をあげると魔王カルマの顔が目に移る。

長い銀の髪。狼の耳は頭の上にあり、体型は華奢で年若い印象を受ける。

腰からは狼の白い尻尾が2本ある。


「ラグリスか。そんなにかしこまらなくてよいぞ。普段の喋り方でよい」


「分かりました。これでいいかい? カルマ殿」


「うむ。それでこそ我が友だ。今日はそなたの子供も一緒だったな。とびきりうまい馳走を用意している。たくさん食べるといい。ラグリスの子供達、今日の服装はとても似合っているぞ」


「「ありがとう。カルマ様」」


双子は息ピッタリに返事をすると父親のラグリスと双子達はカルマの側に控えている執事に連れられて謁見室を後にした。


父親と子供達が長い廊下を並んで歩いていると、父親は気になっている事を子供達に問いかけた。


「二人とも、カルマ殿とは仲良くできそうか?」


「うん。すごくやさしいお兄さんだった!!」


「この服、ぼくのお気に入りだったからほめられて嬉しかった!!」


そう言いながら燕尾服を指さして、無邪気に笑うショートヘアーの子供に父親は満足気に答える。


「二人が着ている服は魔界の有名ブランドだからな、使われている生地も最高級だ。っと……そうだ、カルマ殿にはお前達より幼い子供がいる。その子も今日のパーティーに出席する予定だから会えるといいな。そうしたら、新しいお友達が増えるかもしれないぞ?」


「「楽しみ!!」」

──


すぐに食事会は開かれ大勢の悪魔達が飲んだり食べたりしていた。

その様子をカルマは楽しげに見つめ、カルマの隣に立っていた父親のラグリスは笑っていた。


「そうだ、ラグリス。絶斬ゼツキがあと少しで完成なのだ」


カルマは誇らしげに言うと、父親のラグリスは上機嫌になる。


「そりゃあ楽しみだ!! ぜひ僕の子供達に持たせてやりたい!! きっとカッコいいぞ!」


ラグリスの父親は子供達が絶斬ゼツキを持つ姿を想像し、微笑んでいたが反対にカルマの顔は曇っていた。


「それが、一本しか作れないと決まっているのだ」 


父親のラグリスはそれを聞いて苦笑していた。


「それは残念だね。そうだ、カルマ殿にはご息子がいただろう? 僕の子供達が暇そうにしていてね。よければ一緒に遊ばせてくれないだろうか?」


「エルザは先日から風邪を引いていてな、身体が弱い子供なのだ。結局、今日の食事会に出席させてあげられなかった」


「早く治るといいな。じゃあ子供達だけで遊ばせてくるよ。確か、城の外に大きな遊び場があっただろう? そこを使わせてもらうが、大丈夫だろうか?」


「そこは王家専用の遊び場だが、そなたは友だからな。特別に使わせてやる。人はまず入らない場所だ、存分に遊んでこい」


「ありがとうカルマ殿。案内したら戻ってくるよ」


「ああ」


父親のラグリスは食べ終わり暇そうにしてる子供達を連れて、城の外にある遊び場に向かった。

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