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誘拐


羅奈達はどしゃ降りの中を横並びに走っていた、

羅奈は引っかかっていることがあり、 ラグリスにたずねた。


「ねぇラグリス。 さっきのことなんだけど」


「羅奈。 どうしたんだい?」


「あなたの父親の名前は同じ名前みたいだけど何故なの?」


「悪魔が相手の仕事だからね。 偽名に父さんの名前を一時的に借りているんだよ。 さっきみたいに悪魔を膝まずかせられるからね」


「そうだったのね」


黙って走っていたカルミオは偽名という言葉に反応し、 口を開く。


悪魔トイフェル・番人ヴァッヘだけではない。 悪魔も偽名を使っている。 ちなみにカルミオという名前は偽名だぞ」


カルミオがラグリスのことを指して悪魔トイフェル・番人ヴァッヘと呼ぶがラグリスは気にくわない顔で呟く。


「カルミオさん。 その悪魔トイフェル・番人ヴァッヘって呼び方。 紛らわしいからやめてくれないかな」


「それは名前で呼べということか?」


「そうだよ」


「ではラグリスと呼ぶことにする」


「ああ。 それでいいよ」


羅奈は会話が終わったのを確認するとカルミオに話しかけた。


「カルミオさん。 ついでに私も名前で呼んでくれないかしら? 絶斬ゼツキの所有者とか子供呼ばわりされるのは嫌なのよね」


「ボクはちゃんと謝るぞ、 すまない。 ところでアナタはボクの歳上か?」


「カルミオさんの年齢が分からないからなんとも言えないけど。 私は16歳よ」


「ボクとオリアクスより歳上なのか…とても驚いた」


「カルミオさんは何歳なの?」


「この姿は18歳の姿だ。 オリアクスも今は18歳の姿になっている」


「そうなのね。 いつか本当の姿を見てみたいものだわ」


「よほどの事が起こらない限り、 ボクは元の姿には戻る気はないぞ」


「残念だわ。 どんな姿か見たかったのに」


羅奈はハァとため息を吐く。 カルミオはその返答に驚きを隠せなかったと同時に嬉しくなり羅奈に好意を持った。


羅奈達は走っている間に橋がある場所まで辿り着いたが木の橋が崩壊していた。 川の流れはかなり早く落ちたら間違いなく流されそうな勢いだ。


「どうしよう。 これじゃあ渡れないわね。 早く母親を見つけてあげないと」


「カルミオさん。 向こうに渡るにはこのルートしかないのかい?」


「そうだ。 川の流れも早いのでどうすれば…」


カルミオは額に手を当てると知恵を絞る。

羅奈は川を見つめながらこう言った。


「母親がこの先にいるなら迷わず進むのだけれど…それも分からないのよね」


諦めている羅奈にラグリスが横から声をかける。


「じゃあ引き返すのかい?」


「でもこの奥にいるとしたら…。 もし背中に羽根が生えていたら飛べるから川に落ちないのにね」


羅奈が何気なく呟いた言葉にカルミオは策を思い付いた。


「そういえばこの近くに羽根が生えた悪魔が固まって暮らしている場所がある。 そこは雨の量が少ないらしい。 協力してもらえないかボクが頼みに行ってくる」


そう言うとカルミオはすぐに走って行った。

小さくなっていく背中を見ながら羅奈は呟いた。


「カルミオさん。 気をつけてね」


ーーしばらくしてカルミオが5人の羽根がある悪魔を連れてきた。

羅奈達は羽根がある悪魔達の背中に乗り向こう岸に渡ることができた。

歩みを進めていくと、 どしゃ降りの雨の中、額に角が生えた若い女悪魔に出会った。

羅奈が話しかけようとすると怒った顔で女悪魔が大声を出す。


「何の用だい!!?」


驚いた羅奈にラグリスがジェスチャーで待つように伝え、 ラグリスが女悪魔の話を聞いた。


「僕は悪魔トイフェル・番人ヴァッヘさ。 貴女に小さな子供はいるかい?」


「どうして人間のアンタに教えないといけないのさ!」


「男の子が泣きながらお母さんの事を探していてね。 もしかしたら貴女がお母さんなのかも知れなーー」


ーーバシっ!!


ラグリスの言葉が終わる瞬間、 女悪魔が力強くラグリスの頬を叩いた。

羅奈はラグリスが叩かれたことに怒りを覚え女悪魔のことを睨み付け、 反対にカルミオは複雑な表情をしていた。

女悪魔は感情に任せ怒鳴った。


「人間のアンタがアタイの子供を誘拐したのかい!!?」


(なにこの悪魔!! もう我慢できないわ!!)


羅奈は怒りを抑えることが出来ずに背中にかけてある竹刀袋の中の絶斬ゼツキに手をかけようとするも、 その行動をカルミオが静止する。

羅奈は不満な顔をしつつ渋々カルミオに従った。

そうこうしているうちに女悪魔はヒートアップしていた。


勝手に決めつけられた挙げ句叩かれたラグリスは怒りを抑えつつ冷静に口を開く。


「それは違うよ。 男の子がお母さんを探しているから連れてきてあげようと思ったんだ」


「ウソつけ!! アタイの子供を誘拐したクセに!!」


女悪魔は聞く耳をもたず、 手のひらを構えるとラグリスに向かって魔法を放った。


ーードガン!!


ラグリスは避けると魔法が大木に当たり折れた。


「落ち着いてくれ!! 僕は貴女と戦う意思はない!!」


「うるさい!! よくもアタイの子供を誘拐したな!!」


ラグリスは相手を落ち着かせようとするもその言葉は女悪魔の耳には入っておらず、 魔法を連発していた。

それを見ていた羅奈は異変を感じた。


「何か音が聞こえるわ!!」


その場にいた全員が音の正体に気づく。


勢いよく波が羅奈達の目の前に押し寄せてきた。 辺りを一瞬にして飲み込みこっちに凄い勢いで向かってくる。


「キャっ!!」


羅奈はカルミオに抱きかかえられると高くジャンプし、 大木の枝に着地する。


残るはラグリスと女悪魔だが、 女悪魔は波の速さに驚くあまり動けないでいた。

ラグリスが左側にある大きな岩の上に立つと手を差しのべている。


「早く!! このままじゃあ流されてしまう!!」


ラグリスが必死に声を張り上げると女悪魔はハッとし、 走ってラグリスの手を取ると引き上げてもらった。


波はさっきまで羅奈達がいた場所を飲み込み。 そのまま進んでいく。


それを見ていたラグリスは大声で羅奈達に伝えた。


「この先には皆が避難している!! カルミオさん!! 魔法で一番大きな大木を折って塞き止めてくれ!!」


「もうやっている!!」


カルミオは特大の紫色の球体を飛ばし、 大木を真っ二つに折った。

地面に落ちた大木に波がぶつかり塞き止められた。


「すごい……」


羅奈は驚くと羽音が耳に入ってくる。


ーーバサっバサっ


羽根がある悪魔達が心配して羅奈達をわざわざ迎えに来てくれた。

羅奈達と女悪魔はおぶさる形で背中に乗せてもらい安全な場所におろしてもらい、 歩き続けるとやがて入り口にたどり着いた。


「ああ…皆さん。 無事でよかった」


メモ用紙を片手に持った女の悪魔が羅奈達に話しかけてきた。


「それがーー」


羅奈はこれまでに起こったことを説明した。


「ーーそんなことが。 とりあえず壊れた橋は直しておきますね」


女の悪魔はメモに記入しているとガヤガヤと声が聞こえてきた。 


「ボウズが母親と会えて良かったな」


「ワシ達に接しない悪魔などどうでもよいわ…」


羅奈が一段落したと思ったその時だった。


「皆さーーん!! この中に誘拐犯がいまーす」


女の悪魔はまだラグリスを許すことは出来なかった。


「あのボウズが誘拐されていたって!!?」


「あの女。 自分が無事に帰ってきたのに何言ってんだ?」


ラグリスはうんざりした様子で女悪魔の事を見ていた。

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