敵
馬車を追いかけるように人の形をした何かが飛んでいる。
「アイツだ……アイツの匂いがする」
真っ赤に逆立てた髪をなびかせながら天使の羽を生やした男が猛スピードで馬車の前に降り立つ。
「ヒヒイイィィン!!」
現れた人物に馬が驚き、大きな声で鳴いた。
馬が驚いたことにより馬車が大きく横転し、中にいた羅奈達は外へと放り出され、ラグリスはさらに遠くに倒れていた。
「みんな大丈夫?!!」
起き上がった羅奈はラグリス達の無事を確認しようと声をかける。 するとカルミオが返事をした。
「こっちは大丈夫だ!!」
カルミオの無事は確認出来たがラグリスからの返事がない。
羅奈は立ち上がりラグリスを見つけ、駆け寄ろうするも何者かが立ちふさがっていた。
「ミツケタゾ!!」
「どいて、邪魔よ!!」
羅奈は絶斬を素早く構え振り下ろすも大振りな攻撃だった為、避けられてしまった。
「……うぅ、どこかで体を休ませなきゃ。まだどこかに天使がまだ潜んでいるハズだ」
起き上がったラグリスはカルミオに任せ、ヨロヨロと天使を探すために森に向かって歩き出した。
カルミオが羅奈の背後から声をかける。
「絶斬の所有者。ソイツは天使だ!!!」
「!!?」
「緑髪ノクソ悪魔メ!! ヨクモオレノ友人ヲ殺シテクレタナ!!」
赤髪の天使、カウトはそう言ってカルミオを指した。
「ボクが仕留め損ねた天使……。まだ生きてたのか、しぶといな」
「殺シテヤル!!」
カウトは怒りを含んだ声でそう言うと天使の羽を広げ空に浮かび上がった。
カルミオは近くにいる羅奈に声をかけた。
「絶斬の所有者!! ボクが戦っている間に悪魔・の番人を探してくれ!」
「わかったわ!!」
羅奈はラグリスを探すため走り出した。
「アンタの相手はボクだ!!」
カルミオは黒色のポシェットからナイフを取り出しその場で構える。
「黙レクソ悪魔!! オレガ貴様ヲ殺シテヤロウ!!」
空に浮かんだままの天使は掌から小さな黒い球体をカルミオ目掛け飛ばす。
それを見たカルミオは球体に向かってナイフを振り下ろし一刀両断した。
「……ちょうどいい。アンタにはボクの力を試させてもらうことにしよう」
「!?」
カルミオは指をパチンと鳴らすと全身を黒い霧が包み込んでいく。カウトは再び黒い球体を飛ばすも霧に吸収されてしまった。
カルミオを覆っていた霧がはれると背中に漆黒の翼を生やした四足歩行の子ヤギがそこにいたーー。