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その存在…


ラグリスが見た光景は信じられないものだった。


「誰か助けて!!!!」


「ガルルル…!!」


羅奈がライオンに威嚇されていた。

絶斬ゼツキを構えなんとか追い払おうとするも壁まで迫られて逃げられないでいた。


「ホラ、こっちに来るんだ!!」


「グルルル」


ラグリスが手を叩きライオンの注意を引くとそのまま走り出す。


羅奈はその隙に逃げて様子を見にきたオリアクスと合流した。


「お嬢ちゃん怪我はないか!?」


「えぇ…大丈夫よ。でも、ラグリスが囮になってくれたの。大丈夫かしら…?」


羅奈は不安な表情になりラグリスの事を心配する。


オリアクスはラグリスなら大丈夫だ。 と言って羅奈を安心させようとする、 するとオリアクスの背後から慌てた様子のダウが話しかけてきた。


「ラグリス様はどちらに向いました!!?」


「ここから真っ直ぐいって突き当たりを右に曲がったぜ」


「ああぁぁ!!!! マズイことに…っ! ラグリス様が向かった先にはエルザ様の寝室があるのです!!」


ダウは顔が真っ青になりながら全力で後を追いかけた。

残されたオリアクスは羅奈にこう告げた。


「お嬢ちゃん。とりあえずオレと一緒に待ってようぜ」


「うん」


(ラグリス。どうか無事でいてね)


羅奈は心の中で呟くと心配からか思い詰めたように息を吐いた。


――ダダダダ


ラグリスは廊下を真っ直ぐ走りながらライオンから逃げている。


「ガルルルル!! 侵入者ヲ殺ス!!」


「君は喋るライオンなんだね!!?」


ライオンが牙を剥出しにしつつ喋るとラグリスは驚きの声をもらす。

今、 ライオンの前にはラグリスが走っておりその差は1メートル離れている。

ライオンは速度を上げようと全身に力を込め、 踏み出そうとしたその時だった。


「止まれ!!!!」


「グル!!?」


背後から急に聴こえた声に驚いたのかその場でライオンはピタリと止まると後ろに顔を向けた。


「エルザ様がお目覚めになられたらどうする!!」


「シカシ…」


声の主はダウだった。 ライオンよりダウのほうが立場は上のようであれほど凶暴だったライオンが伏せた体勢をとっている。

ダウは前に行きライオンの顔に手を当てるとこう言った。


「この塔に侵入者はいない。頼むからエルザ様の邪魔するな」


「グル……ワカッタ」


ライオンは反省するとダウの奥にいるラグリスを見つめる。

まだ警戒しているラグリスは敵意がないかダウに話しかけた。


「ダウ。もう追いかけてこないんだね?」


「ラグリス様、お騒がせして申し訳ありませんでした。もう大丈夫です」


ペコリと頭を下げるダウを見てラグリスは安堵の息を吐きながらこう返した。


「僕は気にしてないよ。ライオンは侵入者である僕達を追い出そうとしただけだ」


「ありがとうございます。では、オリアクス様の所に戻りましょう」


ダウはライオンをその場で待機させる。

ラグリスは先にオリアクス達の所に戻るとこれまでに起こった出来事を聞かせたのだった。


「──ということが起こったんだ。でもエルザが起きてこないと話が前に進まないよね。今から殴りに行こうかな?」


ラグリスが冗談混じりに話すと羅奈が口を開いた。


「ラグリス。あまり乱暴なことはやめてね」


羅奈が言い終わった所でオリアクスが口を開く。


「お嬢ちゃんの言う通りだぜ」


オリアクスがそう言うとダウが羅奈達の目の前までやってきてこう言った。


「わかりました。エルザ様の所にご案内致します」


ダウはそう言って奥の廊下へと歩いていく。

羅奈達もそれに着いていくのだった。


──15分後


「こちらがエルザ様のお部屋になります」


鍵を開け、 ダウだけが中に入ったと同じタイミングでそれは起こった。


──ドカン!!


「っなに!!? この音は!!」


羅奈が口を開くとラグリスも呟く。


「どこかが爆発したみたいだ!! うわっ……!!」



爆発の影響か地面が大きく揺れ始めた。


「クソッ!! 誰の仕業だ!! オレが様子を見てくるから、ラグリスはお嬢ちゃんを頼むぜ!!」


「君に言われなくても羅奈の事は僕が守るから安心しなよ」


「それを聞いて安心したぜ!! この騒ぎを起こした奴を殺しに行ってくる!!」


オリアクスは怒りを露にすると来た道を走り去って行くのだった。


エルザの部屋に入ったままのダウは爆発音の驚きでトラウマを思いだし泣き出していた。


「ウゥ…怖い…怖いよぉぉ…!!」


「………」


エルザはいまだに起きもせず寝息を立てている。


「エルザ様ぁ…グスッ…起きてください…」


ダウがエルザを起こそうと軽く頬を叩くが本人の目が覚めない。


ダウは諦めて部屋を出ようとドアノブに触れた瞬間、また爆発音が聴こえた。すると誰かが勢いよくドアを開ける。


――ガチャ


「ダウ!! エルザは大丈夫かい!?」


「ラグリス様!!」


羅奈とラグリスは部屋に入ってくる。


「ダウさん……大丈夫?」


羅奈は心配な表情で聞いてくる。

ダウは涙を拭うとか細い声で答えた。


「はい…。でもエルザ様が目を覚まさないのです…!!」


その言葉を聞いたラグリスがダウを宥めた。


「大丈夫。エルザはその内起きるよ。それより、敵の狙いが本当にエルザなのか分からないよね……」


「もし敵の狙いが私なら、今すぐにここを離れたほうがいいわね」


ダウは羅奈の言葉に疑問に思ったのか問いかけてみる。


「どうして羅奈様が狙われるのですか? 外見はラグリス様と同じ人間に見えますが……」


「教えてあげたいけれど今は時間がないのよ。ごめんなさい」


説き伏せるように羅奈が言い終わるとラグリスが額に手を当てながら自分の考えを口に出した。


「さっき殺された人も、この魔界に来た天使もみんなエルザを探しているようだった。どうやら今回は羅奈は狙われる可能性は低いようだね」


「……確かに今回は私絡みじゃなさそうね」


ダウはその言葉を聞いてすぐに羅奈に問いかけた。


「羅奈様……アナタが背負っている袋の中身はもしかして絶斬ゼツキですか?」


羅奈は返す言葉が見つからずラグリスにすがる。


「………ラグリス。教えてもいいの?」


「大丈夫だよ」


それを聞いた羅奈はダウに教えていた。

その間ラグリスは真剣な表情で考え事をしている。


──普通に生活しているだけの人間ならエルザの名前はあまり知らないハズだ。

もし知っている人間がいるとすれば、武器職人であるエルザに直接注文を頼みにきた客ということになるね


ラグリスは過去の記憶を辿るとこう思った。エルザに用事がある客は荒々しい人間ばかりだと。

だが、今回は天使が魔界に来ているので客は殺された男を除き、人間ではなさそうだと思った。


羅奈は怪訝な表情でラグリスを見ると疑問をぶつける。


「あのね。ラグリスに聞きたいことがあるの」


「ああ。答えられることならいいよ」


「エルザさん……偽物じゃないのよね?」


それを聞いたラグリスは苦虫を噛み潰したような顔をしていた――。

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