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魔界


夕陽が空を赤く染めていく。


カルミオと別れた羅奈達は平坦な道を進んでいた途中で二階建てのレストランの建物を見つけ、 その入り口の前に立っていた。


ラグリスが羅奈に声をかける。


「ここは一階が宅配が出来る場所で二階がレストランになってるんだ。 僕はお腹すいてないから二人だけで入ってくれよ」


「ええ。 わかったわ」


「ああ」


ラグリスは手を振りながら見送ると馬を撫でていた。


オリアクスは待ちきれない様子で中に入っていき、 羅奈と一緒に一階の階段を上がっていった。


――30分後


「美味しかったわ」


「そうだな。 さて、支払いしてくるぜ」


「ちょっと待って。エルザさんって何者なの?」


絶斬ゼツキを作った悪魔だ」


「どんな悪魔なのかしら?」


「会わないと分からないな。 お嬢ちゃんとオレが感じる印象は違うし」


「それもそうね」


オリアクスは会計を済ますと羅奈と一緒に階段を下っていく。


羅奈達は外に出ると馬の頭を撫でつつニンジンを食べさせているラグリスを見つけた。


「やぁ。おかえり」


「さぁ、早く魔界に行きましょう」


「今度はオレが手綱を引くぜ。ラグリスはお嬢ちゃんと乗りな。これからだいぶ長いこと運転するぜ」


「ああ。じゃあ任せるよ」


羅奈とラグリスが中に入ったことを確認すると、 オリアクスは手綱を振るい馬は走りだした。



――あれから4時間後



辺りは暗くなっており、 馬車はその場で止まるとオリアクスは羅奈達に声をかけた。


「おーい魔界に着いたぜ!!」


羅奈とラグリスは馬車の中からおり、辺りを見回した。


そこは周りを岩に囲まれすぐ側には立派な門があった。

近くには一人の門番が槍を持って立っており、羅奈達を睨み付けていた。


「よぅ、久しぶりだな」


オリアクスが片手をあげて親しげに声をかけた。


「オリアクスじゃないか!! もう帰ってきたのか。今回は早かったな」


「まあな。このお嬢ちゃん達と一緒にエルザの見舞いに行こうと思ってよ」


門番の男は羅奈達を見ると口角を上にあげている。どうやら好みのタイプがいたようで近々話しかけようと思っていた。


「休憩中にオイラもオリアクス達の輪に入ろうかなー……っと、エルザに会いに行くんだろ? 気を付けてな」


「ああ、今日の晩飯にお前も誘うから皆で食べようぜ」


オリアクスは門番の男とハイタッチをかわすと中に入っていく。


「僕達も行こうか」


「ええ」


ラグリスは羅奈の手を引くとオリアクスに着いて行くのだった。

小さくなっていく背中を見ながら門番はポツリと呟く。


「あぁ、あの赤髪の子、いい匂いだな……女の子はいい匂いがするって本当だったんだ」


男はそう言って仕事を再開した。


――


羅奈達は中央部へと進んでいく。


中央部にある都会の街並みは夕日に照らされている。

辺りには色々な店が隣接しており食べ物が描かれた看板や服が描かれた看板が目立ち人も多く賑やかだ。


オリアクスは歩みを進めながら羅奈に声をかけた。


「ここは買い物を楽しむ場所だ、大人の悪魔達がよく来ている。酒場もあるんだぜ」


「そうなのね。出店もあるし一日使っても全て回りきれなさそうね」


それを聞いたラグリスが横にいる羅奈に話しかける。


「羅奈。来れる日があったらここに服を買いに来よう。僕も新しい服が欲しいんだ」


「フフ、楽しみにしておくわね」


「もう少しで着くぜ」


オリアクスはそう言って店の間にある路地裏を進んでいく、 やがて人が少なくなっていき奥に行くと薄暗い森が見えた。


羅奈はどうするのか気になりオリアクスに話す。


「この森に入るの?」


「えーっと……あそこだ」


オリアクスは指をさし羅奈はその方向に視線を動かした。

そこは森の出入り口の近くに建っている小さなログハウスだった。


明りはついてないので外からでは気付きにくい。

羅奈とラグリスはログハウスに向かって歩いていく。

先に行っていたオリアクスはノックを数回した後ドアノブを回し中に入っていった。


「エルザいるか?」


オリアクスは電気を付け辺りを見回すもエルザの姿はない。

少し遅れて羅奈とラグリスもログハウスの中へと入った。

中は6畳ほどの広さで黒色の机の上にはメモ帳とペンが置いてある。


「居ないみたいね」


ラグリスが壁にかけてある時計を見るとオリアスに伝えた。


「この時間だとエルザは喫茶店でパンを食べてるんじゃないのかい?」


オリアクスはその言葉を聞いて呆れた声色で呟いた。


「あー…風邪引いてようがエルザは足を運びそうだな。ったく、仕方ないから引き返――」


「ちょっと待って!! 誰かオリアクスさんを呼んでる声が聴こえるわ」


羅奈が声をかけ、オリアクスは耳をすませる。


「オリアクスーー!! オリアクース!!」


遠くから走ってくる声に思わずオリアクス達は外へ出る。

すると、 オリアクス達の目にはさっき出会った門番が槍を片手に走ってコチラへ向かってくる姿が見えた。


「門番のお前がオレに何か用か?」


「ハァー……ハァー……絶斬ゼツキを持った奴に会わせろって天使が言ってきて…!! オイラは知らないと言ったら代わりにエルザに会わせろって……」


現在の所有者が羅奈であることはオリアクスとカルミオしか知らされていない、 念のためオリアクスは門番に問いかけた。


「お前、 今の絶斬ゼツキの所有者が誰か知ってるか?」


「そんなの知らねぇーよ!!」


「そうか…その話は──」


「もう時間がねーんだ!! 天使め、門を壊して魔界に入ってきた!!」


「なんだとっ!!」


側で聞いていて見かねたラグリスがオリアクスに声をかけた。


「とりあえず僕が時間を稼ぐから羅奈とオリアクスはエルザを探してきてほしいんだ」


「わかったぜラグリス。それと、お前はすぐ他の奴等に知らせて警備を強化してくれ」


「まずはオイラが出来ることをすべきだな!!」


そう言って門番は来た道を戻って行った。


「ラグリス!! 後は頼んだぞ。行くぜお嬢ちゃん!!」


「ええ、早く見つけましょう‼」


オリアクスは羅奈の手を引きエルザを探すために走って行った。


「エルザはすぐに見つかるといいんだけど……」


ラグリスは心配しつつため息を吐くと様子を見に行くのだった。


――30分後


オリアクスと羅奈はいろんな店の中を探すもエルザは見つからない。

エルザを探すついでに悪魔達に声をかけ、侵入してきた天使によって殺されるかもしれないので家に帰ってもらうように伝えた。

外に出た羅奈達は疲れのあまり人の邪魔にならない場所で腰をおろした。


「ハァハァ……さすがのオレも限界だ……」


「この辺にいないとわかったから。一度戻りましょう」


そうしてログハウスへと戻ってきたオリアス達はドアを開けて中へと入る。


「ハァ~……疲れたわね」


クタクタになった羅奈は壁にもたれ掛かる。


「ああ…ったく。緊急事態なのによ…!!」


「エルザさん、無事だといいのだけど…」


オリアクスはベッドに腰を下ろすと手をパタパタと扇ぎ風を送っていた。


「オリアクス、居るかい?」


羅奈達の耳にはラグリスの声が入ってくる。

オリアスは立ちあがり少しドアを開けるとラグリスが苦笑いしつつ話す。


「天使の狙いは、どうやらエルザみたいだ」


「とりあえずエルザは帰ってくると思うからお嬢ちゃんと待つことにするぜ」


「わかった。じゃあ戦いに行ってくるよ」


ラグリスはドアを閉めると門へと戻っていく。


「お嬢ちゃん。ゆっくり休んでいいぜ」


「ありがとう。そうしたいのだけど、少し気になることがあって」


そう言って羅奈は窓から見える建物を指さした。


「ああ。あの森にポツンと建っている塔のことだな?」


「いつでもいいから、一度はこの町の景色を見下ろしてみたいわね」


「ちょうど今の時間帯だと涼しいしここから遠くないからな。 日を改めてオレが連れ……──ああ!!」


オリアスは何か思い出したのか壁にある時計と窓から見える塔を交互に目で追いかける。


「どうしたの? 塔になにかあるかしら?」


「エルザの奴…。夕方6時には塔の中で仮眠をとりに行ってたことをすっかり忘れていた」


「じゃあ早く会いに行きましょう!!」 


「ああ。だが、長居はできないからな!! エルザは寝込んでいる。とりあえず話だけ伝えにいくぞ」


オリアクスは近くにあるメモ帳に近くに落ちていたペンでラグリスに塔にいくということを走り書きで記入した


「わかったわ」


オリアクスと羅奈は立ちあがるとドアを開け、塔へと向かって闇夜を走っていった。

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