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フィリア


カウトは赤色の羽根を羽ばたかせ、 目につく者全てを異空間に送っていき、 絶斬ゼツキの所有者を探している。間違っていた場合はすぐに返していた。


カウトが空を飛んでいると絶斬ゼツキと思われる大鎌を手にした羅奈達を見つけ出し、異空間に送る魔法を放った。



羅奈達がホテルに戻り入り口のドアを開けた瞬間にそれは起こった。


「うわっ!」


「キャッ!」


突然、まばゆい光が羅奈達を包みこんだ。


「……ぅ」


倒れていた羅奈は起き上がると何も置かれていない広い部屋にいた。

羅奈は不思議に思いラグリスに声をかけようとするも。 ラグリスからの返事がなく姿もない。


「ラグリス、一体どこに……?」


すると羅奈の目の前に突然、赤い羽根を生やした天使が現れた。


「俺の名はカウト。サーカを殺したのは貴様だな?」


「羽根の生えた天使……!!」


羅奈は驚くと絶斬ゼツキを構えた。カウトはフードを被っているため顔はよく見えない。


「絶対に許さないぞ絶斬ゼツキを持つ少女!!」


カウトはスイカほどの大きさがある魔法の玉を羅奈に放つ。羅奈は逃げようと足に力を込めるも絶斬ゼツキが勝手に動き、刃を振り下ろし玉を真っ二つにした。


(どうなっているの!?)


羅奈は動揺を見せるも目の前のカウトに集中していた。


「やるな!!」


そう言ってカウトは羽根を羽ばたかせ羅奈の目の前までやってくると羅奈の顔面を殴ったハズだった。


──ガンっ!!


「なんだと──っ!!」


カウトの拳は大きな絶斬ゼツキの刃によって防がれていた。

羅奈は思った。また勝手に動いたと。


「なら、 これはどうだ!!」


そう言ってカウトは羅奈の背後に素早く移動し、羅奈の背中を魔法で形成させた剣で斬りかかる。


──ザシュ!!


「ぐぅっ!!」


絶斬ゼツキは勝手に動くことなく羅奈の手の中にある。


(さっきみたいに守ってくれると思ったのに!)


羅奈は背中を斬られたことにより痛みはあるものの、服が破れただけで血は流れなかった。


カウトは驚きながらも今は優勢にあるので余裕の笑みを浮かべた。


「痛いだろ?」


「クッ……」


羅奈は経験不足から斬られた自分が許せなかった。

ラグリス達に頼りきっていたツケがここにきたのだ。


羅奈は怒りを隠すことなく後ろを向き天使と向かい合わせになる。


「変身しないのね?」


羅奈は後ろに少し下がり絶斬ゼツキを構えなおした。


「変身するのは最弱な天使だけだ、知識不足だな」


カウトはニヤリと笑みを浮かべ魔法の玉を飛ばした。


羅奈は腰を低くして玉に突っ込んでいくと小さく振るい玉を斬る。カウトは首を守るために腕を顔の所でクロスさせた。

カウトのほうが背が高く、羅奈は低いので羅奈の目線では心臓の位置しか分からない。


羅奈の狙いは首を落とす事ではなく邪魔な腕か心臓を斬ること……。羅奈は本気で斬りかかる。


──ザシュ!!


「ぐぁぁっ!!」


羅奈が斬りかかったのは心臓だ。カウトは予想外の羅奈の動きに反応できず血を吹き出し胸を押さえて膝をつく。羅奈にはカウトの苦しむ顔が目に映る。


羅奈は首が落としやすい位置まで移動すると。容赦なく絶斬ゼツキを振りかぶる。


「私はどんな事をしてでも生き返ると決めたのよ!!」


「クソがああぁ!!!!」


カウトはとっさに防壁を出すも、絶斬ゼツキの刃はそれを貫通し、首を跳ねた。


「なんとか……勝てたわね」


羅奈が安心しきったその時だった。

カウトの首と胴体が音を立てて消えた。



「貴様は甘いな。今のは俺の分身だ」


「!!」


羅奈は背後から聞こえた声に反応できず回し蹴りをくらい遠くまで吹き飛ばされる。


──ガン!!


羅奈は壁に体を激突させると絶斬ゼツキを落としてしまう。カウトは瞬間移動して羅奈の首を掴み壁にズズズと沿わせた。

カウトは左腕に剣を形成させ、羅奈の腹に突き刺し壁に貫通させた。


「あぁぁぁぁ!!!」


羅奈の痛がる声がカウトの耳に入ってくる、 腹を突き刺したにも関わらず血は出ないことにカウトは恐怖を覚えている。


カウトは痛がる羅奈を気にも止めず目的の絶斬ゼツキを手に取り持ち帰ろうとしていた。


「なっ!!」


カウトは信じられないものを見た。

絶斬ゼツキに触れた瞬間、刃から白い煙が出ていた。

その煙は羅奈とカウトを包みこみ、やがて部屋全体を覆う。


「──ロセ、 コ─セ!!」


どこからかノイズ混じりの少女の声が羅奈とカウトの耳に入ってくる。

いつの間にかカウトの手の中から絶斬ゼツキは消えていた。


「貴様は誰だ!!」


絶斬ゼツキノ──ダ!!」


一人の少女が姿を現す。垂れたネコミミの形をした黒い帽子を被り肌は色白で胸はやや大きめ、赤いツリ目に薄い紫色の髪。左右の横髪と後ろ髪は一つ結びになっていた。


背は羅奈より低く138㎝で青色の袖口の広がったアームカバーに細い腰をだした青い服。白のダメージデニムをはいており、靴は黒色のショートブーツで手には先端に青い玉がついた魔法のロッドを持っていた。


「なに? 誰?」


腹に剣が刺さったままの羅奈は会ったこともない少女に困惑の表情を浮かべていた。


絶斬ゼツキをどこにやった!!」


カウトは少女に向かって叫ぶが少女は無表情かつ機械的な態度でこう告げた。


「ワタシガ──ダ」


相変わらずノイズが混じっているがカウトはなんとなく少女が相手をすると言っているように聞こえた。


「なら来い!!」


そう言えばカウトは少女を蹴り飛ばそうと走って間合いをつめ、 左足に力を込めた。


「片腹──ワ」


少女はロッドを左に振りかざすと先端の青色の丸い玉からは紫色の光の粒が具現化していく。

そしてそれは少女の背後に一匹の大きな赤色のドラゴンの顔を形作る。


「どうせハッタリだろう!!」


カウトは舐めてかかると少女に向かって蹴るために左足を少女の顔目掛けて素早く出す。


──グルルルル!!


赤色のドラゴンは鳴くと腕が形成されていき、 少女を守るように爪でカウトの蹴りを防いだ。

硬い爪の感触がカウトの足に伝わる。

赤色のドラゴンは口を開け炎を吐くと同時に体が魔力の具現化により形が作られていく。


カウトは防壁を出して炎を防ぐと、このままではキリがないと悟り魔法で自分の姿を消したのだった。


「あの子は一体……!!」


羅奈は貫通している剣を抜くと、その場に倒れこんだ。


少女は赤色のドラゴンを消すと羅奈の前までやってくる。


「ダイジョウブ?」


ようやくノイズが消えると少女の声がハッキリと聞こえてくる。


「痛すぎて、あまり喋れないわ」


羅奈は壁に凭れかかり血の出ていない腹を押さえ少女に言葉を返す。

羅奈は自分より背が低いので年下と思っていた。


見かねた少女は羅奈の腹部と背中に左右の手を当てると傷口と破れた服が治る。

体の痛みが消えたことに羅奈は驚いていた。


「羅奈ちゃんは絶斬ゼツキの持ち主だから。治したの」


「ありがとう。 アナタは一体……」


「フィリア」


「フィリアちゃんね。 アナタのお陰で助かったわ」


「もう時間、サヨウナラ。羅奈ちゃん次も()()()戦おうね」


フィリアは手を振りそう言えば体が赤色の光の粒子となり消えたのだった。


──シュウウ


部屋が消えると羅奈は絶斬ゼツキを手にホテルの廊下に立っていた。


「良かったぁ。 羅奈も戻ってこれたんだね」


ラグリスが後ろから声をかけた。


「無事だったのね、 良かったわ」


「怪我がなくて良かったよ。急に迷路みたいな空間に放り出されたからねビックリしたよ。ね、羅奈?」


「迷路? 私は天使と戦っていたわよ」


「ええ!? 出てこれたってことは天使に勝てたのかい?」


「それが、逃げられてしまったわ」


「残念だったね。でも羅奈は一人でも戦えるってことが分かったから安心したよ」


ラグリスはそう言って歩きだすと羅奈も着いていった。


(あの子。何者なのかしら?)

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