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偽者

「羅奈!! どこに行ってたんだ!!」


ラグリスがベッドから身体を起こすと驚きと怒りが混ざった声色で話しかけた。


「いたた…。ちゃんと説明するから少し待ってちょうだい…」


羅奈は落ちた衝撃で背中を痛めたらしく右手で優しく擦りながら返答する。

オリアクスとカルミオは状況を飲み込むのには少々時間がかかったらしく口を揃えてこう呟いた。


「「怪我はないようだな」」


ラグリスがそれを聞いて思い出したように声をかけた。


「羅奈。 二人は君の事をすごく心配していたんだよ」


「そうだったのね…。 みんな、心配かけて本当にごめんなさい…」


羅奈は身体を起こすとオリアクスが白いワンピースを持ってくる。

それを受けとり着ると何が起こったのかをラグリス達に話すのだった――。


――


「そんな事があったんだね」


「うん。 まだ頭も痛むのよね…」


羅奈は話し終わるとベッドに座っているラグリスの所に歩いてきた。


「後ろを向いてしゃがんでくれないかい?――……ああ、 少し腫れているよ」


「はぁ…最悪だわ」


羅奈はガックリと肩を落とすとラグリスはまあまあ、 となだめる。

するとオリアクスが気になることがあったらしく羅奈の側まで近付いてきた。


「お嬢ちゃんの話によればエルザに会ったらしいな?」


「ええ。 人をバカにした喋り方で二度と会いたくはないわね…!!」


「……? お嬢ちゃん、 少し質問していいか?」


そう言ってオリアクスは壁に凭れかかり、 羅奈は再び椅子に腰をかける。

カルミオはあくびをしており眠そうだ。


「オリアクスさん。どうかしたの?」


「エルザに会った事についてだ。奴はどんな姿をしていた?」


「えと……。薄いクリーム色の髪で猫背気味だったわね」


「……お嬢ちゃん。会った奴は確かにエルザと名乗ったんだな?」


「そうよ」


オリアクスとカルミオは怪訝な表情をしていた。


「……オリアクスさん?」


羅奈とラグリスは質問の意図が理解できず、ただ黙って二人を見る事しかできなかった。


「お嬢ちゃんが連れ去られた場所は覚えているか?」


「目が覚めたらベッドの上に寝かされていたわ」


「体に違和感を感じなかったか? 息苦しいとかは?」


「何も感じなかったわね」


「そうか」


オリアクスは目を瞑ると腕を組んで考える。

数秒が経ったあとオリアクスは羅奈にこう言った。


「エルザと名乗った男はオレが会わせたいと言った奴じゃない。名乗ったソイツは()()だ。オレが知ってる悪魔のエルザは今、風邪で寝込んでいる」


「じゃあ私が会ったのは人間か天使、それか悪魔ってことなの?」


「オレがソイツに会えばどの種族か分かるんだがなぁ」


「じゃあエルザの種族は人間か天使なのかしら? そういえば魔法って人間も使えるの?」


それを聞いたラグリスは羅奈に説明する。


「魔法は天使と悪魔しか使えないんだ。ちなみに僕の血を武器に変える能力は魔法ではないからね」


「ふーん。でも、かなり絶斬ゼツキに詳しい口振りだったわね…。あの人は何者なのかしら?」


「「「!!!!」」」


羅奈が思い出したように呟いた言葉はラグリス達に驚きを与えた。

すぐにラグリスが羅奈に問いかける。


絶斬ゼツキをどのように言っていたんだい?」


「偽物。あと、自分の父親が作った物だと言ってたわ…。私にはさっぱり分からないわね」


「偽物……父親……」


ラグリスはその言葉を何度も何度も繰り返すとこう告げた。


「僕はエルザに会った事はあるけど。 あの悪魔ひと絶斬ゼツキの事を誇りに思っていたんだ…。羅奈が会った人は僕の知っているエルザとは全く違う人さ。ほかに気になる事は言ってなかったかい?」


絶斬ゼツキは封印されていたって言ってたわね」


羅奈の話を聞いている間、 オリアクスはずっと黙っていたが我慢が出来なくなり刺々しく口を挟んだ。


「お嬢ちゃんが会った偽者エルザって奴は最低な奴だな!! 悪魔にとって絶斬ゼツキはとても大切な物だというのに…!!」


「オリアクスさん…」


「まあ。僕もオリアクスと同じ意見だね。悪魔トイフェル・番人ヴァッヘの方でもエルザを調べるように言っておくよ」


「ありがとう」


「ふう……。お嬢ちゃんも戻ってきたし、これで明日は魔界に行けるな」


オリアクスは安心したのか凭れていたのをやめてその場に座る。


はりつめていた空気が消え、穏やかな雰囲気に包まれていく。

ふと羅奈が時計を見ると夜中の12時を回っていた。


羅奈はベッドに入るとアクビをして告げた。


「私…そろそろ眠るわね。みんな、おやすみなさい」


「「「おやすみ」」」


ラグリス達は声をそろえて羅奈に言うとしばらくの間、雑談するのだった。

そうして時間が経過し深夜になっていく。


ラグリスはベッドから降りてトイレの扉を開けて入っていく。


すると、 音もなく天使が部屋に現れ、 ラグリスに姿を変えたのだった。


――


――ギィィ…


寝静まった夜にドアを開ける音が耳に入ってくる。


「……なに?」


羅奈は目をこすりながら辺りを見回す。

月明かりが部屋を照らしていた。

カルミオとオリアクスはベッドに入り熟睡している。

羅奈はもう1つのベッドを確認するもラグリスの姿はなかった。


「――った…。海辺に行──」



「この声……ラグリス?」


声はドアの向こうから聞こえていた。


羅奈は気になり足を床につけブーツを履くと隙間が空いているドアを押して、 ラグリスを探しに行くのだった。


「あれ? 羅奈は?」


ラグリスはトイレから出てくると羅奈がいないことに気付く。

まだ熱は下がっておらず頭はボーっとしていたが、 心配なので探しに行くことにした。


ホテルを出て真っ暗な道を進むと波の音が羅奈の耳に入ってくる。


「確か海がどうとか……」


羅奈は草木をかき分けて探していると砂浜に足を突っ込んだ。


羅奈の目の前には月明かりに照らされた海が広がっている。

目を凝らすと誰かが海に入っていた。


(……誰かしら?)


羅奈はゆっくりと近付いてその姿を確認した――。

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