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出会い


謎の声に言われるがまま、少女は厚い雲の中を飛んでいった。

とても寒い空気抜けたと思えば。


「ここは…どこ?」


少女がその場に浮かび、辺りを見回すと周りが暗闇に包まれていた。

うっすらと廃棄のような景色が見える。


ビルや他の建物は崩壊しており、あちらこちらにガレキの山が散乱している。

まるで大きな地震が起こったかのようなありさまだ。


その場所の地面に降り立った少女は薄暗い景色をしばらくの間眺めていた。


(なんだか日本じゃないみたい……。でも生き返って家族に会いたいから進むしかなさそうね)


少女がそう思いながらガレキが散乱している場所を茶色のショートブーツの靴音を鳴らしながら進んでいくと、その先にある石の台座の上に禍々しい銀色の大鎌が置いてあることに気がつく。


「これは鎌? …にしても随分と大きいし重そうね」


その大鎌に吸い込まれるように、少女がそれを手にしようとすると。


絶斬ゼツキそれが鎌の名前だよ」


ドコからか声変わりしたての男子のような声が聞こえる。


驚いた少女の背後には紺のショートヘアーの艶がある髪を靡かせ、黄色の瞳に黒いロングコートを羽織り、白の長ズボンに黒のショートブーツを履いた17歳くらいの長身の人物が立っていた。


少女から見た相手の顔は大人びている一方でコートから見える白のインナーからは胸の膨らみはなかった。


よく見ると着ているコートのボタンの位置は右に付いているので男性用だ。

声は若い少年の感じなので、少女は相手のことを歳上の少年だと感じていた。


少女は警戒しつつ口を開いた。


「さっきの声はアナタね? 本当にいたんだ……」


「初めまして、僕の名前はラグリス。異世界の案内人だよ。ところで、君の名前は?」


そう言ってラグリスがニコッと笑うと少女の前までやって来る。


153㎝の少女の身長よりラグリスのほうが20㎝以上高く、遠目から見ればラグリスは少女を見下ろしているかのようだ。


廃棄のような景色の中に二人向かい合わせになって、お互いに顔を確認していた。


少女はラグリスを見上げながらこう思う。


(顔立ちは中性的で凛々しいけど……敵か味方か不明ね)


少女は初めて会うラグリスに自分の名前を告げた。


羅奈ラナよ…ねぇ生き返るって本当?」


不安と警戒で頭がいっぱいになっている羅奈がそう言うと、ラグリスは急に羅奈の手を掴み自分の元へ引き込むように強引に引っ張った。


「今から異世界へ連れて行ってあげるよ、生き返る話は着いてからでもいいよね?」


「……え!?」



ラグリスが嬉しそうにそう言うと、薄暗い廃棄だった景色が変わり。

大きく地面が揺れ、二人の足元に大きな穴が出現し真っ逆さまに落ちていく。


「へ!? なな、何これ!! 落ちてる! 落ちてるよ!! ちょっとアナタ、私を助けなさいよ!!」


パニックになっている羅奈が言うが、ラグリスは気にもせずにこう言った。


「最近死んだ人なんて滅多にこの世界に来なかったしね。まぁ、死んだことは仕方ないから君は異世界の生活を楽しむといいよ」


凄い速さで落ちているため、羅奈には全くラグリスの声が聞こえていなかった。


それどころかラグリスは、叫び声を上げている羅奈を見ては腹を抱えて笑っている。そんな姿を見た羅奈は心の中でこう呟いた。


(来なきゃよかった!!)


羅奈は自分の選んだ道を後悔しながら落ち続けていく。

このまま待っていれば今ごろは天国に行けたかもしれない――もしくは、奇跡的に助かって、また人生を歩めたかもしれない…。



暗い穴から一筋の光が見える。


光に吸い込まれるように落ちていくと放り出されるように森の中に落ちた。


ラグリスはなんなく着地したが羅奈は地面に勢いよくしりもちをつく、砂利が多く細かな石は服の上からお尻の肉に食い込んだ。


「さて…ちゃんと着いてきてね」


怪我一つないラグリスそう言うと、羅奈はムスッとした顔をしながら歩き出した。


「何が生き返るよ、こんな場所なんて知らないし早く帰りたいわ!!」


「まあまあ怒らないで。説明するから僕に着いてきてくれよ」


「そんなこと言っ──」


──ガシャン


声をかけようと同時にそれは起こった。何かが地面に落ちた音がする、その音は大きく鉄の固まりを地面に落としたような音だ。


「ん…?」


羅奈がその音に気付き後ろを振り返ると落ちてきた物の正体に気付いた。


「これはさっきの大きな鎌?名前は絶斬ゼツキだったような…」


羅奈がそう呟くと羅奈よりも少し前にいるラグリスが声をかけてきた。


絶斬ゼツキだって!?」


ラグリスは慌てて絶斬ゼツキ落ちた場所へ駆け寄る。場所はそれほど離れてはおらず数歩の小走りで着いた。


「まいったな、どうしよ…」


絶斬を見つけたラグリスは困った顔をして一人ブツブツと呟いている。気になった羅奈は歩いてラグリスの傍にやって来た。


「たぶん大きな穴が出てくる時の揺れで落ちてきたのね。絶斬ゼツキを元の場所に返してきたら?」


羅奈は何も考えず自分の意見を口にするが、ラグリスは内心焦っていた。


「これはね。僕が触れてはダメなんだ」


ラグリスが深刻な顔をして羅奈に声をかける。


「じゃあ私が持つわ……ちゃんと元の場所へ返さないとね」


(これで元の世界に帰ることが出来るわ、これで酷い目に巻き込まれることはなさそうね)


そう言って羅奈が絶斬ゼツキに触れようとした時だ。


ラグリスは強い口調で羅奈の手の動きを止めさせる。


「それに触れると君は生き返るのがとても難しくなる、何故ならその鎌は―――」


最後の言葉を言おうとしたラグリスは何かに気付いた。


「ボウズ、その鎌は絶斬ゼツキか?」


ラグリスの背後に人影が現れる、声からして男だ。


「さぁ、知らないね」


ラグリスが後ろを振り返りながらそう呟くと男の顔を見上げる。

男はみるからに強そうだ。


短いジャケットを羽織っており、紺色の長ズボンに黒のブーツを履いている。

黒い髪は首元まであり目付きは悪く見た目はガラの悪いゴロツキといった感じだ。


羅奈は少し離れると、男をビビりながら見つめていた。


「嘘をつかないほうが身のためだ」


男はラグリスを睨み付けながらそう呟くとズボンについているポケットからナイフ取り出した。


それをみたラグリスは男を馬鹿にしたような笑みを浮かべる。


「危ないなぁ、オジ―――」


男は一瞬でラグリスの背後に回り込むとナイフをラグリスの首に当てた。


「そいつをよこさないとコイツを殺すぞ」


「待って!! 君が触れてはダメだ!!」


男はそう言いながら羅奈の側にある絶斬ゼツキをナイフで指を差すようにする。


「ラグリスが……触れてはダメって言ってるから」


初めて体験する恐怖に声と身体が震え全身の力が入らない。


男は渡さないことを知ると、ラグリスの首をナイフで軽く切った。


「っ……!!」


ラグリスは苦しみの声をあげ、切られた事に動揺したのか息を荒くしていく。


「へへ…いい声で鳴くな」


男は下品な笑みを浮かべ、血がついた刃をペロッと舐める。


(早くしないと、ラグリスが殺されてしまう…!!)


羅奈は触れてはならないと理解するが、これ以上ラグリスをヒドイ目にはあわせたくないので、言われたとおりに絶斬ゼツキを拾いあげた。


「早くそれをよこせ!!」


「羅奈。君はなんて事をしてくれたんだ……」


ラグリスは落胆した様子で羅奈を見つめていた。


男は絶斬ゼツキを狙っている。


渡すフリをして手に持った絶斬ゼツキ振るうことも出来る。だが、もし男がラグリスを殺せば非力な羅奈はどうすることもできない。


(拾ったのはいいけど……どうすればラグリスを助けられるの!?)


焦る羅奈は視線を男から逸らしラグリスを見つめていた。

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