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ラグリスとアストレア


「手続きはしておいたから。 後は面接をするだけだよ」


「ああ。 これでやっと絶斬ゼツキの所有者を保護できるんだな…」


ラグリスとカルミオは2階にある面接室の前にいた。


カルミオは緊張しているのかソワソワと落ちつかない様子でいた。

ラグリスは時間がある内にカルミオに言いたいことを伝える。


「羅奈に後で謝っておきなよ? カルミオさんが不機嫌なまま部屋を出て僕が追いかけていったんだ。 あの様子じゃあ羅奈は僕達がケンカしたままだと思っている」


ラグリスは少し呆れたように横に首を動かし、 ため息混じりにカルミオの横顔を見つめながら呟く。


「オリアクスの言う通りに帰れと言ったアナタが悪い。 それにオリアクスを絶斬ゼツキの所有者――あの子供に紹介したのは間違いだと思うぞ」


カルミオは不機嫌になったのはラグリスの一言が原因だと口に出す。


ラグリスは目を見開き『何を言ってるんだ』と言いたげな表情になっていた。

反論しようと口を開けた瞬間だった――


「次の方どうぞー」


若い男の声が聞こえカルミオは反応をすると部屋へと入っていった。


ラグリスはそれを見届けると近くにある階段を下りる。

足取りを重くさせながら最後の一段をおりるとアストレアが声をかけてきた。


「アンタに話があるのよ 絶斬ゼツキの所有者も連れてきて10分後に執務室に来なさい」


「羅奈も…ですか? 分かりました」


先輩にしては珍しく嫌味ではないと、ラグリスは思いながら羅奈のいる部屋へと向かう。


──ガチャ


ラグリスが扉を開けると目に飛び込んできたのは寝ているオリアクスの姿だった。

羅奈はジュースを飲んでおりリラックスした様子が見て取れる。


羅奈はラグリスに気づいたようで口を缶から離すと顔を向けた。


「ラグリス、ちゃんと仲直りできたの?」


「ああ、できたよ。先輩が僕達に話があるらしくて…一緒に来てほしいんだ」


「私も? 何かしら」


羅奈は返事が終わったあと僅かに首を傾げつつドアを開けて部屋を出る。

部屋に一人となったオリアクスは寝息をたてながら眠り続けたのだった。


羅奈達は長い廊下を歩いている、足音が反響し耳に入ってくる。


「オリアクスさん。 一人にしてよかったのかしら?」


「大丈夫だよ。 羅奈はオリアクスの事をどう思ってる?」


「オリアクスさんは気さくね。 カルミオさんよりは話しやすいわ」


「それを聞いて僕は安心したよ。 オリアクスを紹介して本当によかった」


喜びを口にして羅奈に微笑むとラグリスは角を右に曲がり奥に進んでいく。

羅奈も着いていき、やがて一番奥の扉の前に到着した。


コンコンと軽い音をたてながらノックをするとラグリスは返事も待たずに中に入っていく。


「ちょっとぉ!! アタシの許可なく勝手に入って来ないで!」


アストレアは書類の整理をしていた。

本棚にしまっていた途中だったらしく、 まだ床には大量の書類が積まれた状態で残っている。


「すみません先輩、僕も手伝います。羅奈は少し待っててくれないかい?」


「わかったわ」


ラグリスは書類の右側に立て膝をつき一つ一つ棚にしまっていく。

羅奈も手伝いたい気持ちはあるがラグリスに言われてしまっては手をだせない。


「……ったく。使えない後輩はアタシの邪魔しかしないんだから」


アストレアは毒を吐くも言われたラグリスは意に介さず黙々と片付けている。

時おり乱暴に棚へと押し込むその姿に羅奈はラグリスは怒っていると感じていた。


──しばらく待っていると片付けが終わった。


「あ~……疲れた」


アストレアが肩を叩きながら一人呟く。

その姿を横で見ているラグリスは呆れ顔になっており、羅奈は小さなアクビをしていた。


その事に気がついた先輩は咳払いをすると薄く口を開く。


「コホン…。会ってほしい悪魔がいるの」


「……会ってほしい悪魔?」


羅奈は予想外の言葉に何度も瞬きを繰り返している。


(てっきり、戦いに参加しろと言われると思ってたわ)


「先輩。場所はどこですか?」


「魔界よ。エルザって悪魔に会ってほしいのよ。エルザは絶斬ゼツキの製作者と言われているわ。 その悪魔に会えば生き返る方法がわかるかも……。 魔界まで馬車を手配するから。 絶斬ゼツキの所有者も着いていきなさいな」


「うん…」


「羅奈。 今から手続きをするから部屋に戻っていてくれよ」


何かに気がついたラグリスは羅奈に悟られないよう視線だけを向けた。


「わかったわ」


それに気が付いていないまま、 羅奈は部屋を後にした。


──バタン


扉が閉まったのを確認したラグリスはアストレアの顔を真っ直ぐに見つめた。


「よく気がついたわねぇ~」


感心した声色でアストレアは手をパチパチと叩く。

その甘ったるい声と自分のことをバカにした動きにラグリスは内心嫌気がさしながらも口を開く。


「先輩は何を考えているのですか? 僕みたいな新米にベテランの仕事を与えるだなんて…」


「どーしてアタシが知ってるのよぉ? アタシは上から言われた事を教えたまでだわ!!」


アストレアは低い声で怒りを顕にしつつ吐き捨てる。


普通に考えればエルザに会うための仕事だが、ラグリスは納得がいかない様子でアストレアを見つめた。


エルザは上層部の悪魔トイフェル・番人ヴァッヘとしか会う気はないらしく、新米の自分が行っても門前払いされるとラグリスは思っていた。 だからこの仕事は上層部の人間が行くにふさわしいと思っていた。


「アンタは悪魔トイフェル・番人ヴァッヘの中でも悪魔と深い係わりをもっているしねぇ」


「僕は別に深く付き合っているつもりはありませんが……」


「オリアクスとは仲が良いんでしょう?」


「はい」


首をたてに動かし、ラグリスは肯定する。


ラグリスにしてみれば悪魔の一人であるオリアクスと昔馴染みであっただけであり内部まで詳しいという訳ではない。


アストレアは意地悪な笑みを浮かべからかうようにラグリスに言った。


「オリアクスって悪魔はどちらかというと人間アタシ達に近い考えを持っているしぃ…。端から見ていても仲が良すぎるくらいだわぁ~」


まるで恋人みたいに見える。と付け加え、ラグリスの反応を伺う。


「オリアクスは悪魔で僕は人間ですが……」


からかうのをやめろ。 と言ってやりたい気持ちを深いため息で誤魔化しながらラグリスはアストレアに言葉を返した。


「じゃあオリアクスっていう悪魔は人間のア──」


「僕は雑談している暇などありません。早く馬車を手配してください!!」


ラグリスは語尾を強めてそう言うと先輩は呆れつつも手配書を引き出しから取り出す。

ラグリスは急いで書くと部屋を後にした。


「もう……せーっかく面白い所だったのにぃ」


アストレアは残念そうに目を瞑る。

そして少し間をおいた後。突然、悪戯好きの幼い子供のようにケラケラと笑いだした。


「キャハハ!! ホントによく似てる。喋り方まで()()()にソックリ!!」


一体誰と比較しているか分からないが、嘲笑にもにたその表情は不気味さを醸し出している。

ふと、アストレアが手配書の名前をチラリと確認した。


「ラグリス・ルシア──……これからアンタは大変よぉ? アンタにかけられた()()はどうやったら解けるのかしらねぇ?」


そう呟きながら手配書を持つとアストレアは部屋を後にした。

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