表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
絶斬~ゼツキ~異世界に招かれた少女と呪われた大鎌  作者: シュウ
ある男の一人言2
21/99

楽しそうな声で再び男は語り始める





男は本をパタリと閉じた。鈍い音が明かりの揺れる室内に静かに響いた。


彼は一人黒い椅子に座り、銀色の狼の尻尾をゆったりと揺らしていた。尾の動きはまるで彼の思考を映すように緩やかだが、どこか不穏なリズムを刻んでいる。


「この章は……悪くなかった」


男の声は低く、かすかに笑みを帯びていた。椅子から立ち上がり、隣の書庫へと移動する。無数の本が壁を埋め尽くし、古い紙の匂いが漂う。


男の目は迷いなく、青い表紙の本へと伸びた。


「ようやく……新しい登場人物が顔を出すか」


ニヤリと笑うと、薄く開いた唇の間から鋭い八重歯が覗いた。


「少し眠いな……だが、アイツが来るにはまだ時間がある」


その独り言は、まるで誰かに語りかけるように書庫の静寂に溶けた。

彼は青い本を開きページをめくる音を響かせながら朗読を始めた。


その声は深くも穏やかで、まるで物語そのものが命を帯びるかのようだった。


「汝も我と同じ本を読むがいい……拒まないでくれよ? 」


パタン。と本を閉じる音が再び響く。彼は本を近くの古びた机に置いた。


「ふぁぁ……っ。眠気覚ましに風に当たることにしよう」


書庫に男以外誰もいないはずなのに楽しげに微笑むと、茶色の重い扉を開けた。その先には螺旋階段が伸びている。彼は軽やかに階段を上り、雨上がりの冷たい風が吹き込む屋上へと出た。


「ふぅ……風に吹かれながら、あの本を読み進めるのも一興か」


男は力を込めて指をパチンと鳴らした。その瞬間、手の中に黒い本が現れる――まるで虚空から引き寄せられたかのように。彼は本を開き、ページのざらりとした感触を楽しみながら、静かに呟いた。


「第二章……魔界へ」


風が銀色の尾を揺らし、夜の冷気が本のページをそっとめくった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ