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会話が少ない…。もっと増やした方がいいですかね?


 今日の僕は一味違うぞ! 何たって今日は、天神さんの息子の青海おうみ君とその幼なじみのあかねちゃんと仲良くなるって言う決意に満ち満ちてるのだから!

 ――こんな決意をしたのも、まあぶっちゃけ僕が召喚獣に極力頼るのは止めようと思ったからだった。と言うのも、改めて今の自分を振り返ると、ダメ人間まっしぐらだからだ。甘やかされるのは好きだが、慣れてそれが当たり前になったら目も当てられない。取り返しが付かなくなる前にどうにかしたいのだ。 まあ、食事は今でも頼りっぱなしだけどね。料理は教えて貰っているが、あの味に慣れたら他の料理が食べられない。だってさ、バランスが取れた料理もジャンクフードも、その時食べたいなって思ったのが出て来るんだもん。もう離れられません。


 そういう訳だから、お父さんが出張の時僕は一人きりになる訳で、それを心配した過保護なお父さんが、青海君と一緒に天神家の隣人である戸田とだ家に預ければいい、と言う事を勝手に決めて来ちゃったのだ。

 僕は茜ちゃんと仲が良い訳じゃないし、戸田家の人もいきなり見知らぬ子供を預かるのは嫌だろう、と思ったのだが、どうやら割とすんなりオッケーを貰ってきたみたいだ。良い人すぎるぞ戸田家。

 そう言う切実な事情があるから、僕は今日、幼稚園で二人に話し掛けた。お迎えも戸田さんになるから、青海君達にも先生達にも話は通ってるらしく、茜ちゃんには若干警戒され気味だが、話し掛けるのには成功した。

 茜ちゃんが僕を警戒してるのは、茜ちゃんが青海君を好きだからだ。それなら、僕が青海君を好きじゃないってのを教えればそれで仲良くなれると思うんだよね。

 藍ちゃんにも事情を説明し、四人で遊ぶ事にした。藍ちゃん、人見知りなのにごめんね?


 僕提案で、缶けりをする事にした。三人は意外にも缶けりを知らないらしく、先生に缶を貰い、序でに皆に缶けりの説明をして貰い先生も加えてじゃんけん。鬼は青海君になった。

 わっ、と逃げて僕は茂みに隠れた茜ちゃんの近くに行った。さて、さっさと伝えて楽しもう。


「茜ちゃん茜ちゃん」

「きゃっ!? ……ってアンタ! いきなり驚かせないでよ!」

 ごめん、まさかそんなにビックリするとは……。

 名前の通りの茜色のツインテールを揺らし、赤茶色の瞳で睨み付けてくる美少女。子供は皆可愛いが、将来有望な子は飛び抜けて可愛い。

 美少女っぷりに感心してる場合じゃない、と茜ちゃんに本題を切り出した。

「あのさ、僕も藍ちゃんも別に青海君を盗ったりしないから、普通に仲良くしようよ」

「んなっ…!?」

 直球を投げた。真っ赤になった茜ちゃんは、今の意味を正確に捉えてるのだろう。幼稚園児が色恋沙汰でこんな話をするのもアレだが、盗る盗らないで恋愛を予想出来る茜ちゃんは、大分早熟なおませさんだよね。

「茜ちゃんは青海君が男の子として好きなんでしょ? 僕は友達として青海君も茜ちゃんも好きだし、ちゃんと仲良くしたいなぁ」

「なっ、なっ、なぁっ……!!?」

 再び直球。いっちょ前に嫉妬するんだし、このくらいなら分かるでしょ。って、この言い方は失礼かな? 幼くても恋は恋だしな。

 さて、次は変化球でも……、と思っていたら、茜ちゃんが突然ガサッと勢い良く立ち上がり、真っ赤な顔で叫んだ。

「あっ、あっ、あたしはべべ別にあいつの事がすっ、好きな訳じゃないんだからぁっ!」

 あっちゃぁ、茜ちゃんはツンデレか……。五歳にして素敵なツンデレ台詞が言えるみたいだし、直球はダメだったか……。

 思わず手で顔を覆ったが、茜ちゃんはわたわたあわあわと更に言い募る。

「べっ別に、あたしはあいつが好きとかじゃなくて、ただ仕方なく一緒にいてあげてるだけで……、ま、まあ? アンタ達があいつを好きじゃないってのは、どうでも良いけど? そういう事なら仲良くしてあげても…」

「茜見ーっけ!」

 青海君の声が茜ちゃんのツンデレを遮った。空気読め、と言いたいが無理だろう。と言うか叫んで立ち上がったらそりゃ見つかるよな〜。

 真っ赤な顔で涙溜めてぷるぷる震えていた茜ちゃんは、突然叫び青海君に突進していった。あーあぁ、そんなに殴っちゃダメだって。


 ……僕が幼稚園児の時ってどうだったっけ? あんな恋愛したりはしてなかったよな。もっとお馬鹿で、単純で、男女関係なく遊んでた気がする。てか子供がどうやって出来るのか知ったのが中学に上がってからってのが、僕がどんだけそういう事に興味がなかったのかを如実に物語っている。

 今時はあれくらいが普通なのかな? なんて、ちょっと感慨深くなった僕だった。



 まあ、でも一緒に遊んだからか、僕達は仲良くなれた。普段は室内で遊ぶ事が多い僕と藍ちゃんだが、偶には外で遊ぶのもいいなぁと思った。

 茜ちゃんも、今では普通である。どうやら、同性にはさほどツンデレは発動されないようで、羞恥心を煽らなければ普通の女の子だった。からかいすぎには気を付けよう。からかう気満々ですが、何か?




 ***


 そして早くも帰り。見送りも迎えも召喚人にさせなくなった僕は頻繁に感じる女先生の視線を無視し、藍ちゃんを見送ってから茜ちゃんのお母さんを待った。

 あ、因みに召喚人に頼るのを控えると告げた時、この世の終わりみたいな顔をして必死に捨てないでッ! と縋られました。罪悪感がハンパないが、捨てないよ、と告げればホッとしていたし、また呼ぶって約束もしたのでいいかな、と思う。カード状態の時は別に苦痛な訳でもなく、寧ろ心地良いらしいし。


 少し待っていると、茜ちゃんのお母さんがやって来た。茜ちゃんと似ていて、焦げ茶色の髪の美人だった。茜ちゃんの大きくなった姿があの美人さんか。

 実は初対面なので、ぺこりと頭を下げ挨拶。

「初めまして、色月綴です。今日から三日間お世話になります。よろしくお願いします」

「あら、礼儀正しい子ね。初めまして、綴ちゃん。自分のお家だと思ってゆっくりしていってね」

 茜ちゃんは勝ち気そうな顔立ちだったが、お母さんは涼やかな目元で印象が違う。穏やかな人だし、茜ちゃんが大きくなったらこの人より快活そうになるかも。茜ちゃんの大人バージョンだと思ったが、性格で大分印象が変わるなぁ。

 お母さん……茜ママは、薄いブルーの四人乗りの車で来たらしい。後部座席に、三人並んで乗り込んだ。


 この世界での乗り物は、元の世界の乗り物とほぼ同じだ。飛行機はなく飛行船が普及していて、騎獣とかもいる。馬車もあるがこれは少ないな。で、ガソリンや石油やガスはなく、万能エネルギーの魔力と電力が使われている。

 地球温暖化なんて存在しない。太陽光や月光エネルギー万歳だよ。エコを極めた世界だよ。スバラシイ。

 特別な騎獣は車同様免許がいるみたいだが、それがレアスキルによるものの場合免許はいらない。他の乗り物も、レアスキルならちゃんと制御出来る場合のみ免許がいらないのだ。意外と適当だよね。

 街並みは、中世ヨーロッパ風のファンタジーな街並みと現代日本を足して二で割ったような感じで、思ってるよりファンタジー色が濃いよ。路地に入ると、石畳の坂とかになってて、まるで外国の田舎に迷い込んだみたいで心が躍る。

 車から見える景色を楽しみながら、戸田家に到着した。



 家はアメリカのように庭が広く、家自体は前世の日本と同じ。我が家と似てるな。……うちは色々改造済みだが。

「さ、青海君も綴ちゃんもどうぞ」

「おじゃましまーす!」

「お、お邪魔します」

「おやつがあるから、皆手を洗ってらっしゃい」

 招かれ家に入る。むむ、人んちの匂いがする……そういえば、誰かの家にお邪魔するのは滅多になかったよな。なんか新鮮だ。

 茜ちゃんの案内で、洗面所で手荒いうがいを済ませリビングに……あ、忘れてた。

 僕は勧められたソファーに座り、ファイルを出した。これはカード化したアイテムを収納するの専用で、召喚カード等が入ってるのとは違う。分かりづらいし名称付けなきゃな。……収納ファイルでいっか。

 ファイル改め収納ファイルを開き、今日のために持ってきた物を取り出した。人の家に訪ねるなら手土産は必須だから、パティシエールを召喚し作って貰った。

「わっ! 綴ちゃん、それ何?」

「あ、レアスキルだよ。物収納出来るの」

 そりゃ驚くか。言っとけばよかったな、反省。

 カード化を戻す場合は、念じるだけでいいので楽だ。実体化させたのは、色んなお菓子が入った大きな箱である。

「これ、良かったらどうぞ。被っちゃって申し訳ないんですが、ケーキやクッキーが入ってます」

「まあ、ありがとうね。でもそんなに気を使わなくて良かったのに」

「初対面で三日もお世話になるので当然です」

「そう? まあいいわ。じゃあ折角だから頂きましょうか」

 自分の事ながら子供らしくねーなぁ、と思いながら、笑顔でそれを渡す。

 茜ママが用意したおやつはショートケーキで、とっても美味しそう。日持ちのするお菓子にした方がよかったかな、と思うが、夕飯の後でも食べれるだろうと考え直す。

 そう結論づけ、手土産から目をキラキラさせてこっちを見ている二人に意識を向けた。かーわいい。「綴ちゃんレアスキル持ってたんだね!」

「どんな事が出来るの!?」

「ん、まあメインは召喚で、あとは物をカードにしたりとか、だよ。カードのレアスキルなんだ」

 召喚だけじゃないから、わざわざスキル名を変えたのだ。お父さんがそういうのは意外と重要だぞ、と言っていたのだ。

「ほぉら、先におやつ食べてからにしなさい」

 召喚見せて見せて! と騒ぐ二人を茜ママが宥め、僕が持ってきたケーキが乗った大皿を置いた。イチゴのケーキにチョコケーキ、チーズケーキとミルフィーユとミルクレープにフルーツタルトと、色んな種類がある。どれも綺麗で美味しそうだ。実際美味しいが。

 二人は綺麗で可愛いお菓子に歓声を上げた。今日は特別にもう一個食べて良いわよ、と笑う茜ママ。

 先にショートケーキを食べ、好きなケーキを選んだ。ショートケーキも美味しかったよ! 有名なお店のケーキらしく、甘過ぎずしっとりしたケーキは秀逸だ。 だがしかし。うちのパティシエール、チョコちゃんのお菓子に勝る物はなしッ!

 僕は最後に選び、極上スイーツを味わった。ウマウマ、ウマーッ!

「ん〜っ! おいひぃっ!」

「こんな美味しいの初めて食べたわ!」

「ホント、美味しい! これ、どこのケーキなのかしら」

「えへへ、でしょ! 最高なんだよ〜。あ、このケーキは僕が召喚したパティシエールに作って貰いました」

 驚く三人に僕も笑顔になった。作ったのは僕じゃないけど、なんか自分の召喚人や召喚獣が評価されたり褒められるのは、自分以上に嬉しい。

「召喚!? パティシエールを召喚って…」「はい、僕のレアスキルは、召喚カードってのがあり、それを使って色んな動物や人を召喚するんです」

「す、凄い能力ね……。それだけ凄いと、代償も大きいでしょ?」

「あー……まあ」

 苦笑して答え、ミルクレープをあむ、と食べた。まあ、自分じゃ何も出来ないようになるが、戦わなきゃ良い話だ。将来何になるかは決めてないが、戦闘職はない。



 皆できゃっきゃと楽しくおやつを食べ、僕達は一緒に遊ぶ事にした。召喚獣が見たいというので、シリーズ第一作目の一番最初に召喚出来るパートナーを召喚した。

「行くよ。召喚サモン! 【水猫 ミスティア】!」 現れたのは、耳と尻尾と手足の先が水色のグラデーションになってる白い猫。サファイアブルーの瞳に首に巻いた銀の縁取りのマリンブルーのリボンが特徴で、尻尾には銀色の大きな鈴が着いている。二足歩行で、水色のドレスとふわふわの真っ白な毛が眩しいにゃんこ様だ。

「水の化身ぷりちーにゃんこ、ミスティア! ただいま参上ッ! だにゃん!」

「可愛い〜〜〜っ!!」

「にゃんこだぁー!!」

「ぷにゃんっ!?」

「傷付けちゃダメだよ〜」

 満面の笑みでどや顔で決めポーズするミスティアに飛びかかった二人。ミスティアを撫でくり回す青海君と茜ちゃん、もみくちゃにされるミスティアに向けて一応声を掛けておく。

 にゃっにゃにゃっ!? と喚くミスティアを微笑ましげに眺めながら、オレンジジュースを飲む。良い肴です。和むぅ〜。

 暫くして、漸く満足したらしい二人に解放されたミスティアは、毛並みもボサボサでドレスも乱れ、ピクピクして倒れていた。……抱っこして、毛並みを整えてやる。あの、なんかごめん。

「見捨てるにゃんて酷いにゃ、ご主人! ミスティアは撫で撫でを要求するにゃ!」

「あい、精一杯ご奉仕させていただきましゅ……」

 ぷんすかと怒るミスティア。怒っても可愛いだけで全く怖くないぞ。

「ねぇねぇ、あたし達も撫でて良い?」

「ダメにゃ! おみゃ〜らは乱暴すぎるにゃ!」

「まあまあ。二人とも、撫でる時は優しくね」

 子供って加減を考えないからね、レクチャーしながらミスティアをまさに猫っ可愛がりする。きゃわゆいのだ、ぬいぐるみみたいで。


 水の化身なだけあり、水を出し水の玉を作ってその上に乗って遊んだり色々やった。楽しく遊んでいると、茜パパが帰宅。

 茜パパは、無口だがとても柔らかいオーラを放っていた。ミスティアも、茜パパの手は神の手にゃ〜! と撫でられ悶えていた。気持ち良いらしい。

 うむ、ええ人や…、と思っていたら、夕飯の用意が出来たとの事。しまった、手伝うつもりだったのに……。

 手伝いは明日に回し、普段のとは違う家庭料理を食べた。美味しかったよ!


 夜は三人と一匹でお風呂に入り、また遊び、茜ちゃんの部屋で並んで寝た。

 友達んちにお泊まりって、なんか楽しいよね。子供だから、性別も割と関係ないし。

 明日もいっぱい遊ぶぞ〜!




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