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クロキ ユウ の ぼうけん  作者: ユミル
“勇者決定戦”編
36/50

「うおらあああああ!」


 全力で白刀を振りぬく。フルスイングした刀は白い軌跡を宙に残し、無理やり魔物の首をはねた。


 纏った雷光の電圧で魔物の硬い皮膚を、その中の肉を、骨を、全てを焼き切る。

 首が落ちた魔物は、ちびっ子がいったとおりすぐに動かなくなり、物言わぬ骸と化した。顔に付いた返り血を手の甲でぐい、とぬぐう。

 垂れた血が切れた頬を伝い、俺のものと交じり合った。


 後ろから近づく気配に、俺は振り向くことなく呟いた。


「“斬”」


 音も無く魔物の頭の半分が消し飛んだ。ぐらり、と傾いた魔物の体に、もう一度古代語を打ち込む。


「“斬”」


 今度こそ魔物の頭が消滅し、肉塊が地に沈む。



 最初は、古代語を使わずに魔語スペルだけで戦っていたが、それだけでは追いつかなくなっていた。

 もともと魔語は古代語より圧倒的に威力が弱い。


 というよりも、魔語にこめられる魔力の量が限られているのである。


 魔法には魔力の量と自身の技巧が影響する。つまり、魔力量が馬鹿でかくて繊細なコントロールが出来れば最強ということだ。

 魔語なんかは特にそうで、器が小さいから魔力量の調節とかで俺からすればあまり使い勝手は良くない。



 しかし、古代語は器の大きさが桁違いだ。


 魔語の場合、魔力を器ぴったりまで注ぎ込めれば威力が強くなる。

 古代語であれば、魔力を注げば注ぐだけ威力が強くなるということだ。


「“斬”」


 再び魔物の頭を落としたところで、周りを見回した。



 生きている人間は、最初のほぼ十分の一にも満たない。ちらほらと固まって戦っている姿が見える程度だ。

 この闘技場はかなり広い。今現在で魔物がどれぐらい減ったのかは予想が付かないが、――――。


 おそらく、もう終わる。




「――――父上っ!」


 遠くのほうから、ちびっ子の声が聞こえた。


 身体を反転させて振り向くと、まっすぐに玉座を見つめる姿があった。その横には、ちびっ子を守るようにゼロが立っている。


「なぜ、なぜこんなことを!」


 ちびっ子は、必死な表情で叫んでいた。それも、そうだ。




 周りは地獄絵図。





 黒い体液と真っ赤な血が染み込んだ大地。

 ぐちゃぐちゃに――――臓物と脳髄を引きずり出され、もはやヒトに見えなくなってしまった人々。

 同じぐらいめちゃくちゃに身体を損壊させ、その巨体を投げ出している魔物。


 観客席にいるのはそれこそほんの一握りで、他の大多数はこの惨状に顔を青ざめさせて退出した。

 ――――観客は、まだ運が良かった。


「降伏したものまで見殺しにして……!」


 ちびっ子の声が聞こえる。ほとんど慟哭のような、魂を裂く叫び。


「なぜ……!」


「――――はじめに、言うたであろう」


 王が、初めて口を開いた。


「死んでは困るという人間は帰れ、と」



 ――――氷のように冷ややかで、触れたもの全てを切り裂くような、抜き身の刀身のごとき鋭さ。


 俺が見た彼の瞳には、ただ事象を見つめる観察者の色しか映されてはいなかった。


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