生まれ変われ
ストックが切れました。
よって、今までよりさらに更新が遅くなる可能性があります。
が、がんばって更新していきたいと思いますので、どうかこれからもよろしくお願いします。
俺はなぜこの世界にいるのか。
(それは俺が前の世界から捨ててきたから)
俺はなぜここに立っているのか。
(与えられた目的へと到達するために)
俺はなぜ刀を振るっているのか。
(みんなを守り、悪を葬るために)
――――本当に?
~~~~
「あ、ああ、ああああああ!」
頭の中が真っ白になる。瞳の奥で明滅する赤に誘われるようにして声を張り上げた。
俺の叫び声に、魔物が一匹、二匹と俺に近づいてくる。
俺は喉が千切れんばかりに空気を震わせる雄たけびを上げた。まるで何かから逃げるように。
刀が届く範囲にあるものは全て斬った。時には炎を、時には氷を、時には雷を刀身に纏わせ、ただ刀を振るい続けた。
だんだんと腕が重くなる。飛び散る体液の匂いがこびりついて離れない。伸ばされる鋭い爪はやすやすと俺の頬を掻き切り、生暖かい血がどろりと流れ出る。
いくら刀を振るっても、魔物の数はまったく減っていないように見えた。何度刀を振り下ろしても、何度魔法を打ち込んでも、魔物は致命傷を与えない限り何度でも起き上がる。終わらない地獄に気が狂いそうになった。
「――――ええい、どけ!」
俺が再び目の前の魔物に向き直った時、突然身体にどん、と衝撃が走り、俺は横に突き飛ばされた。
「、ちびっ子!?」
「貴様のようなむちゃくちゃな戦い方では倒せるものも倒せんわ!」
俺がはっと我に返ると、ちびっ子は自らの武器を眼前で構えた。
「正気に戻れ! ただ滅多切りにするだけでは奴らを殺すことなどできん!」
ちびっ子の声が氷のように俺の心に突き刺さる。――――そう、殺すのだ。
「奴らは頭さえふっ飛ばせば体は動かなくなる。いくら身体を傷つけても再生するだけだ!」
ちびっ子の声に、俺は体勢を立て直し、刀を構えた。気持ち悪さと吐き気をこらえ、明滅する赤を強制的に押さえ込む。
「……ああ、分かったよ」
俺はぐっと手に力を入れた。
「――――もう、今までの俺とはお別れだ」
さあ、奴らをコロシニイコウ。
弾かれたように駆け出す俺の頭の中で、ひっそりと誰かの泣き声が響いた気がした。
俺はなぜこの世界にいるのか。
(本当は、世界から逃げてきただけ)
俺はなぜここに立っているのか。
(本当は、目的にすがらなければ生きていけなかったから)
俺はなぜ刀を振るっているのか。
(――――本当は、ただ自分のためだけに)
もう、お別れだ。
あの頃の脆弱な自分とは。
あの頃の臆病な自分とは。
あの頃の愚かな自分とは。
にぃ、と俺の唇が孤をえがいた。