神は必ず人型である
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『で、話を聞いてくれる気になった?』
「はあ…………」
今、俺は地面にあぐらをかいて座っている。
目の前には先程よりも透明度が増した気がする(自称)神が、ふんぞりかえって俺を見下ろしている。…………こいつ、どつくぞ。
「んで、話ってなに?」
『この世界についての説明だよ』
神が話しはじめた。
『ここは私が初めて創った世界なんだ。他の世界の良い所を真似してね。
だからここには人間もいるし、君の世界に居たような動物もいる。
気候や自然も君の世界によく似ている』
「確かにそうだな」
俺は頷いた。さっき見た森や鳥達は、俺の世界の物とほぼ同じだった。
『でも、それだけじゃないんだ』
神は、ここで急に話を変えた。
『私は君の世界に憧れていた。特に…………』
「ちょ、近い近い近い!」
突然、神がこっちに身を乗り出して叫んだ。
『君の世界のゲーム!!』
「…………………は?」
思わず呆然としてしまった。
「ゲーム…………だと?」
『そう!』
神はそれこそ効果音が出そうなくらいに目をキラキラと輝かせた。
…………ハッキリ言って、引くぞ。
『剣と魔法が重なり合うあのすばらしきファンタジーの世界!
ドワーフ・エルフ・ドラゴン・フェアリー達との出会い!
勇者と魔王の壮絶な戦いに、そこに至るまでの仲間達との友情・恋愛!
ヤバイ、ヤバすぎる!!!!!』
ああ、確かにヤバイな。お前の頭。病院に行け。
つーか、お前オタクだったんか。
『あの時だけは本気で君たち人間を尊敬したよ。人間の想像力は尽きることを知らない!
だから私は、あのファンタジーを現実にしたんだ!!』
……つまり?
1、神ゲーム大好き。
2、ゲームを現実に。
3、イコールここファンタジーの世界。
「…………………」
驚きすぎて声も出ない。
ここが、あのゲームの世界だと?
『あ、でも、別にどのゲームを参考にしたとか、そんなことはないから。
全てのゲームのいいところをとって創ったからね。
おかげで街とか増えまくって、お城も多いしさ~。
何も考えずに創ってたら、魔王が大量に出来ちゃって…………』
「は…………はあああああああああ!?」
俺は思わず叫んだ。だってそうだろう。
「おい、魔王って最強なんだぞ! それこそレベル1から育てた勇者でやっと勝てるんだ!
なのに一匹じゃないって…………一匹倒してる間に他の魔王に攻められたらどーすんだよ!?」
勇者がかわいそうだ。
もとから俺は「パーティー組んで魔王倒すって、言っちまったらリンチだよな」とか思っていた。
だがこうなると……逆リンチ発生!? いじめられっこの逆襲か!
そんな俺の必死の叫びを聞いて、神はニッコリと笑った。
…………嫌な予感。
『君って意外と頭イイね~。そ。君が今回ここにいるのはそのためなの』
「……え?」
『え~と、簡単に言うと、こうなる』
1、テキトーに魔王じゃんじゃか増やしてやったぜ☆
2、あ、やべー。人間絶滅しそう。
3、勇者勇者勇者、ちょ、勇者足りないー! 誰か持ってきて!
4、俺、召喚☆
「て…………てめえ……」
俺は怒りにプルプルと震えた。なんだって――――!
それって完全にお前が悪いだろ!
つか――――――――――なんで俺!?
『一応勇者こっちで製造してたんだけど間に合わなくてさ~。
そこでちょっと休憩してたときに君見つけたの』
え、え!? ていうか勇者製造って――――――工場か!?
その時、俺と神の目が合った。
『その命、捨てるくらいなら私がもらう』
「……なんで捨てようとしたかは、聞かないのか」
そういうと、神はふっと笑った。
『なんとなく予想ついてるしね。それに、無理やり連れてきちゃったおわびもしたんだから』
「おわび?」
俺が首をかしげると、神はちょっと顔を引きつらせた。
『ほら……身体能力がめちゃくちゃ上がってたでしょ』
「ああ! あのキック力か!」
これで納得がいった。よかった、変な病気とかじゃなくて。
病気なんて、今かかってるやつだけで充分だ。
『他にも色々あるんだよ~』
神がうれしそうに披露する。
『視力もよくなったし、ここには魔法もあるから、魔力も最大にしといた。
それと……君のその病気も』
体が、震えた。
『よほどの事がない限りは、発作も出ないようにしてある。
でも、君の世界の病は強すぎて……ここまでしか』
「いいよ、別に」
俺はぶっきらぼうに言った。
「もともと一回捨てた命だ。気にしない」
『そう……ならいいや』
突然、神の姿が薄れ始めた。
どんどんと完全な透明に近づいていく。
「お、おい!?」
『んじゃ、私はこの辺で帰るわ。あ、そうそう、一つ言い忘れてた。
なぜこっちに引っ張ってきたのが君だったのかというと――――』
そして、神は完全に消えた。
「……最後まで言ってから行けよ」
気になる。めちゃくちゃ気になる。
そんな俺の声が聞こえたのか、また空から一枚の紙が。
ヒラリ、ヒラリ。
掴み取ったそこに書いてあったのは――――――。
『かわいそーだから、たすけてあげました。えらいでしょ? by神』
……ふざけんなァァァァ!!