夢と過去
今回早めの更新です。かなり短いです。
なお、今後は本格的な受験シーズンになりますので、三月まで更新できないだろうと思われます。ご迷惑をおかけします。
では、どうぞ。
俺たちが三回戦を行なうのは、どうやら二週間ほど後の事になるらしい。
受付の双子にそのことを聞いた俺たちは、もう部屋に戻って休むことにした。
ふと空を見れば、“オールテスの空”が深い紺色に染まりつつあるのが見えた。
四人には充分すぎるぐらいの部屋で、それぞれ各自の部屋に引っ込む。
監視を気にしながらも、俺は案外簡単に眠りに落ちた。
そして、気がついたら病院だった。
「…………え?」
周りを見回す。白い壁に、白い天井と床。立派な一人部屋だが、ベッド脇にある花瓶には花がない。冷たいベッドに横になっていた俺は首だけ回してそのことを確認した。もっとよく見れば、この部屋には生活感というものが見当たらない気がした。
窓には分厚いカーテンが引いてあった。時計もなく、今が何時か分からない。だが俺は直感的に、今は夜だと思った。
体を起こそうとすると、腕に力が入らなかった。なんとか目の前に腕を上げれば、つながれている何本もの管。そこに流れている透明な液体を見て、俺はめまいがした。
(――――……ああ、これは)
俺は再び首を回した。ベッドの横にある小さな棚の上にあるのは、治療費や入院費の明細。
無残にも破られたそれは、何かの液体で濡れていた。
(そう、だ。俺は行かなきゃ、)
「行かなきゃ、いけない」
力を振り絞って体を起こした。布団を引き剥がし、体のあちこちについた管を引きちぎる。痛みが走っても気にならなかった。
震える足でベッドから下りてスリッパを履いた。そして、数え切れないほどある点滴の中から一本を選び、その点滴をとりはずしてしっかりと持った。
次に、明細をもはや原形をとどめないほどにびりびりに破いて、洗面台に流した。
たったそれだけの作業で悲鳴をあげている体を無視して、俺は部屋のドアに手をかけた。
はやく、早く行かなきゃならない。あいつが来る前に――――。
目を覚ました。
目を思いっきり見開いて、回りの景色を確認する。
木で出来た部屋、黒い服に、刀身の白い刀。
それらを確認して、俺はゆるゆると目を閉じて、再びベッドにしずんだ。
睡眠を取ったのに、ひどく疲れているような気がした。しかし、もう一度眠れるような気はしなかった。
夢の中の何倍も楽に体を起こすと、窓の外を見た。まだ日は昇っておらず、外は暗いままだった。街を見れば、街灯以外の明かりはほんのわずかだ。
「……く、そ……」
ため息をついて、ベッドに横になる。体だけでも休めておこうと思って目を閉じたが、結局その後、俺は一睡も出来なかった。
まぶたの裏に映るのは、走馬灯のように見える俺の過去。
いつまでもまわり続けるそれに嫌気がさして、俺は顔を歪めた。