お食事タイム
四人で廊下を歩きながら、俺は内心後悔していた。
らしくもない説教じみたことをしたのもそうだが、アーリアさんを試すような事をしてしまったのもいけなかったと思う。
俺が今まで経験してきた過去と、アーリアさんの過去は何もかもが違う。だから性格も容姿も何もかもが違うことは当たり前なのだ。
それなのに、偉そうに説教たれて訳の分からないことを喚いて、自分の価値観を押し付けてしまった。
(……あれはだめだったよなー)
やめときゃよかった。
はあ、とため息をついた。
前を見れば、身分に天と地ほどの差がある子供が二人、言い争いながらもどこか楽しげに会話をしている。それを後ろから見守り、時々王子サマに鉄拳を食らわせている女性も、かすかに口元がほころんでいた。
(……うん。後で謝っとこう)
そう決めて、再び前を向いた。
(……それでも、)
それでも、何か変わったものがあるのならば。
それでいいと、思った。
~~~~
「よし、飯食おう」
腹が減っては戦は出来ぬという。その通りだ。
空腹というものはとてもじゃないけど耐え難いもので、俺は前に居る三人に急遽そのことを告げ、行き先を食堂に変更した。なんだかんだいって腹が減っていたらしい子供二人は、我先にと駆け出す始末だった。
食堂に入ると、なかなかの盛況ぶりだった。バイキング形式のようで、さっきからひっきりなしに料理人が右往左往している。
「何食おうかな……」
「あ、私アレがいいです!とってきますね」
「おい、俺の分もとってこい」
「…………(ギロリ」
「ひ、ひいッ!!」
すぐさま皿を持って料理を取りに行くゼロに、ゼロをパシろうとしてアーリアさんににらまれているちびっ子。それを横目に苦笑しながら、俺も皿を持って立ち上がった。
「んー、とりあえず肉。あと肉と肉と肉と……お、肉じゃん」
目に付いたものを片っ端からとっていく。え?肉ばっか?何言ってるのかわからないなーアハハハハ。
意外と空腹は限界に達していたようで、俺はすぐさま料理にかぶりついた。
染み出てくる肉汁を堪能し、食感に舌鼓を打ちながら食事を進めた。
「二回戦も終わりましたし、次の試合まではまだまだかかりそうですね」
ゼロが周囲を見回しながら言う。
まあ、もっともだろう。一回戦でかなりの数がふるい落とされたとはいえ、残りの数も半端じゃない。
「ふん、頭脳戦では負ける気がしないわ」
「……お前さー、それはつまり肉弾戦では負けるって事だよな」
ゼロにも負けないとか言うからパーティーに入れてやったのに。
ちびっ子は知らないようだが、ゼロは強い。腕力なら、きっと俺が五人居ても勝てない。
……言ってて悲しくなってきた。十一歳の女の子に負ける俺(十七歳)って一体……。
「…………ゼロの足を引っ張ったりしたら、あなたたち二人ともちょん切ってあげます」
「いやいやいや、たぶん無理ですそれ」
「ふ、情けないやつめ。たかが十ほどの子供に負けるというのか」
「お前も子供だけどな」
子供といわれてギャンギャン喚くちびっ子を押さえていると、そのやり取りを聞いていたゼロがニッコリ笑っていった。
「じゃあ、キール様。私と勝負しませんか?」
~~~~
「この俺が負けるとでも?はっ、寝言は寝て言え」
「ふふふ、私これでも、腕力には自信あるんですよー」
テーブルを挟んで向かい合う二人。二人とも笑いながら火花を飛ばしているのがなんともいえない。
お子様二人は、たがいの肘をテーブルにつき、手をがっしりと握り合っていた。
まあ、所詮は腕相撲というやつだ。
「よーし、準備は良いか?そろそろ始めるぞ」
俺は二人の手を包むようにして持つ。
そして、言った。
「――――レディ、ゴー!!」
――――次の瞬間、ちびっ子の腕がテーブルにめり込んだ。
ベキッ!!!!!
異様な音を立てた俺たちのテーブルに、いっせいに視線が集まる。
無言の沈黙を破ったのは、勝者の明るい声だった。
「あは、すいません。手加減できなくて」
笑う勝者と悶絶する敗者。両方とも子供なのに、そのかもし出す雰囲気に、俺は顔を引きつらせるしかなかった。