二回戦
お待たせいたしました。ようやく一段落つき、これからは週一のペースで更新できると思います。
待っている方がいらっしゃるのかは分かりませんが、二回戦、投稿です。
ちびっ子を連れて受付へ行き、その場でパーティーを編成した。受付の双子のお姉さんに聞くと、今まででもう結構な数のパーティーが編成されなおしているらしい。
で、丁度そこに居合わせた役員の人に、もうすぐ二回戦だと知らされた俺たちは、部屋には戻らずに闘技場に直行した。
そして、今に至る。
「第ぃぃぃぃ七問!! アイヤリム王国の首都である、ここ“モルアート”の名産品を答えよ!」
レポーターの大きな声に続いたのは、男や女の様々な叫び声。
合否判定を行い、次々と脱落していく人々。
その中で、一つの声が上がった。
「ふん。俺を誰だと思っている」
小さくとも、その声は澄み渡っている。
「モルアートの名産品といえば、“バーンボーン”に決まっているわ!」
「せーッかいです!! パーティーモノクロ七問連続正解!」
傲慢に胸を張るちびっ子に向けられるのは、惜しみない怒号と野次の嵐だった。
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今現在俺たちが参加しているのは、“勇者決定戦”第二回戦。
その名も、“叫んで答えて勝ちあがれ!”である。
最初に聞いたときは、一回戦同様ぶっ飛んだネーミングに唖然としたものだが、まさにそれこそがこの試合の全てを表しているといえた。
試合、といったが。
これは一回戦のような肉弾戦ではなく、頭を使った頭脳戦である。
一度でも間違えれば即座に失格という、大変厳しい審査方法で、難易度は高い。
先程の第七問のように、とっても基本的な問題ばかりだが、この世界には学校というものがないらしく、ほとんど自分の住んでいる地域の基礎知識ぐらいしかないらしい。
俺たちのパーティーも似たようなもので、俺にいたっては異世界人だということでこの世界の事を何一つ知らない。この街の名前もさっき知ったところだ。ゼロは一般人並の知識しか持って居ない。
何十ものパーティーがずらりと並ぶ中で、俺たちは他のパーティーが失格するまで何もしないという、消極的な方法に出る予定。
予定、だった。
しかし、ちびっ子がパーティーに入ったことで、状態は大きく好転した。
ちびっ子はこんなに小さくても一応王子サマである。第二王子ということで、王位は兄が継ぐと決まっているようだが、それでも王族としての英才教育は、それこそ物心付く前から始まる。
そのおかげで、王族は一般人を遥かに超えた知識と教養を身につけることが出来、持ち前の能力“千里眼”のおかげで、知らないことはほぼないといっても過言ではない。
そしてそれは、まだ十歳になりたてのちびっ子にもいえた。
ちびっ子は周りの大人たちを哀れむかのような視線を送った後、培ってきた知識をそれみよがしに披露する。そのせいでただいま七問連続正解という、とんでもない記録をたたき出している。
「バーンボーンってなんだ?」
「はっ、そんなことも知らぬのか、この愚か者め。バーンボーンはこの首都モルアートでしか取れぬ特殊な精霊石だ。貴様のその剣もバーンボーンで出来ているだろうが」
「へえ。教えてくれたのには感謝するが、言い方がムカつく」
やっぱ、生意気なガキには制裁を、ってな。
「あいたッ!? ま、またか貴様!! そのでこぴんとやらをするのをやめろ! 不敬罪で処刑するぞ!」
「残念だったな。この闘技場内はただいま治外法権になってるんだよばーか。法のない自由な空間。治外法権バンザーイ」
「貴様……! ここを出た暁には、貴様など奴隷の“白”もろとも処刑してやるッ!」
「…………そのまえに、お前がアーリアさんに殺されないことを祈るばかりだな」
そう。ここは法のない場所だ。だから仮にも王子であるちびっ子にも暴言の雨嵐だ。試合に勝てるのは大歓迎だが、敵をあまり作りすぎたりするのは遠慮したい。
しかもこいつの傲岸不遜な態度。脱落していった人たちから送られてくる怨念のこもった視線が体中に突き刺さるようだ。
結局二回戦は全三十問中三十問ともちびっ子が答えてしまい、何十もあるパーティーの中から俺たちしか三回戦に勝ちあがれないという、ある意味悲劇の試合となった。最初は手堅く様子を見ていたパーティーも、ちびっ子の馬鹿にしたような態度に怒り心頭、叫びまくってミスを連発。あえなく失格となった。
……なんつーか、まあ、一言。
…………俺、なんもしてねー……。