仲間が一人増えました。
更新遅れまして申し訳ありません。
十一月中はもう出来ないかと思います。十二月に入れば週一のペースで更新することが出来るかと思われますので、もうしばらくお待ち下さい。
この国には“有色人”と“無色人”がいる。
基本的に“有色人”のほうが位が高い。要するに貴族だ。
さて、その“有色人”だが、上から順に“金”、“黒”、“銀”という順番で並んでいる。
俺のような“黒”は、国を構成する貴族の中ではトップに位置する。ティズさんの話によると、重要な地位を占めているのはほとんどが“黒”で、その補佐として“銀”がある。
では、“黒”の上を行く“金”はなんなのか。
――――この世界で、“金”は王族を示す。
王族の血は絶対だ。髪が金色なのも居るにはいるが、その瞳の色。
輝く金色の瞳は、――――――――神の瞳と同じ。
この国を見据えるために与えられた、千里眼。それこそが、王たるものの証。
王族だけが持っている能力だ。
そういえば、あのエセ神の目も金色だったな、とぼんやり思い出す。
とりあえず首筋に突きつけた刀をどけ、顔をまじまじと覗き込んだ。
……本当に金色だ。猫みたいだな。
首根っこを捕まえているとじたばた暴れたので、手を離してやった。
「この無礼者め! 俺に触れるなど千年はやい!」
……とりあえずデコピンを食らわせておいた。ふっ飛ばさない程度に手加減はしたが、それでも痛かったらしい。
涙目で額をさする(自称)第二王子に問いかける。
「んで、一体なんのようだよちびっ子」
「誰がちびっ子だ! キール様と呼ばぬか貴様!」
はい、デコピン二発目はいりました~。
ますます赤くなった額は無視する。
「で、用事はないのかちびっ子」
「あるわ! そしてちびっ子言うな!」
よく叫ぶやつだな。元気すぎるだろうが。
「貴様のせいで、俺のパーティーで生き残ったのが俺一人になってしまったのだ! 我が国の一番の精鋭を連れてきたというのに!」
「知るか」
その返答に怒り出したちびっ子の頭を押さえながら、そういえばと思い返す。
魔語を使って倒した相手の中に、鎧兜の兵士がいた気もする。まあ、何でもありの試合だったのでさして気にも留めていなかったが。
「どう責任を取ってくれる! このままでは二回戦に参加できないではないか!」
「え、なんで。一人で行ってくりゃあいいじゃん」
「馬鹿者め! パーティーは二人からしか組めないだろうが!」
まじか。それ初めて知った。
つまり、なんだ?このちびっ子が俺を殺そうとしたのは、ただの腹いせか?
……。
「いたあッ!? な、なにをする!?」
「あ、スマン。勝手に手が出てた」
「嘘付け! 確信犯だろうが!」
よく分かったな。そんなに分かりやすかっただろうか。
どうしてくれるんだと叫びっぱなしのちびっ子を押さえながら考えていると、部屋のドアが開く音がした。
~~~~
「…………」
「あ、アーリアさん。どうどう」
「…………」
……こ、怖え。
時は少しさかのぼる。
帰ってきたゼロとアーリアさんは俺が押さえつけていたちびっ子に目を丸くし、ついでその金の瞳にすぐさまひざまづいた。そのことに調子に乗ったちびっ子が、
「おい、そこの“白”。茶を入れろ」
などと余計なことをいったからまずかった。
ゼロへの明らかな侮蔑に、瞳に怒りの炎を燃やしたアーリアさん。次の瞬間ちびっ子に怒りの拳骨を落とし、どこから出したのか分からない頑丈な縄でぐるぐるに縛り上げた。
唖然とする俺とゼロを尻目にアーリアさんはちびっ子をベットに放り投げ、両手に鋭利なメスを構えて投げた。
もしあの時ゼロが声を上げなかったら、きっと放たれたメスはちびっ子を容赦なく突き刺していただろう。
「ちょっと、アーリアさん。相手は子供ですよ、こ・ど・も。大人気ないですよー」
「…………害虫に容赦はいりません」
「王子にも害虫呼ばわり!?」
アーリアさんにとって、全ての世界は女の子と害虫で構成されているらしい。
「で、こいつの仲間を俺が倒しちゃったんでどうにかしろって言ってきてるんですけど……」
「…………みぞに捨ててきましょうか」
「だから相手王子様ー!!」
ゼロにアーリアさんの機嫌を取ってもらいながら話を進める。
なんか、ゼロがアーリアさんをなでてる。……普通逆だろう。
でもアーリアさんなんか微笑んでるし。あ、目が合った。
めっちゃにらまれてる…………!!!
「ま、まあともかく、どうしましょうか」
「そうですね……いっそのこと、私たちのパーティーに組み込んじゃったらどうですか?」
「ん?」
元気に声を上げたゼロの話はこうだ。
“勇者決定戦”開催中にはパーティーの再編成が認められている。
対戦を重ねるごとに数多くのパーティーが脱落するため、生き残ったのに参加できないものたちを救うための救済措置だ。
ゼロいわく、それを使ってちびっ子を俺たちのパーティーに取り込めばいいのではないか、と。
……うーん。
ただのちびっ子ならそんなに迷わなかったかもしれないけど、王子だしなあ……。
こいつをチームに組み込んだことで、後々面倒になることは避けたい。
――――けど。
「……おい、ちびっ子」
「誰がちびっ子だ! いい加減この縄を解かぬか!!」
「お前、実力はどのくらいある」
「少なくとも、そこの“白”には負けん! ――――うわ、ちょ、やめぎゃあああ!!」
……あほうが。再びアーリアさんのげんこつがお見舞いされた。
手足を縛られた芋虫状態で叫びながら痛みに耐えるちびっこ。……ご愁傷様。
ま、ともかくだ。
痛みがひくのを見計らって、もう一度ちびっ子に声をかける。
「――――男に二言はないな?」
「ないッ!!」
ほとんど怒鳴り声で叫んだちびっ子の言葉に笑った。
「――――じゃあ、おまえはこれからパーティー“モノクロ”の一員だ」
――――というわけで、仲間が一人増えました。