部屋
とりあえず、一回戦を終えた俺たちはティズさんたちのところへ戻ることにした。
観客席を歩き回りながら、三人の姿を探す。
「あ、居ましたよ」
ゼロが三人を見つけ、タッタッと軽い足取りで駆けて行く。一時間も大の大人を投げ飛ばしていたとは思えない。まあ、そういう俺もさほど疲労しては居ないのだが。
「あ、お帰り~」
「…………お疲れ様です」
「やっと返ってきたかい」
三人と合流すると、それぞれねぎらいの言葉をかけられた。
それに返事をしながら口を開く。
「ただいま。まあ、そんなに手こずらなかったけどね」
「はい、そんなに問題ありませんでした」
「そうかい。ならいい」
「…………怪我は?」
アーリアさんにそういわれて体を眺め回す。
「ん、俺はないかな。ゼロは?」
「私も大丈夫ですよ。ちょっとした擦り傷があるぐらいで――――」
ゼロが言い終わる前に、アーリアさんから俺に向かってメスが飛んできた。
「っとわあ!? 危な!! 何するんですかアーリアさん!!」
「…………そこに直りなさい。あなたをちょん切ってあげます」
「俺のせいですか!?」
つかアーリアさん、メスを片付けようかとりあえず! 瞳孔が開いてますよ!!
「あはは、アーリアは今日も元気だねえ」
「元気すぎてこっちが殺られるんですけど!!」
やっぱりヤブ医者の頭にはネジが足りないようだ。
「はいはい、あんた等そのぐらいにしておきなよ」
あきれたようなティズさんの声で、ようやくその場が収まった。
……よかった、ホントに。マジで三途の川が見えた。
「それはそうと、あんたたち部屋は確認したのかい?」
「部屋?」
何の事か分からずに聞き返すと、ヤブ医者が言った。
「“勇者決定戦”が行なわれている間は、出場者は闘技場から出られないんだよ~」
「は?なんでだ?」
「“勇者決定戦”は賭け事の対象にもなってるから、外に出たらいろんな人にねらわれるんだって」
「でも、それだったら中でも同じじゃないか? 見たところ、警備の人なんて居ないし」
「いや、外で襲われたら兵士の人が居るし、襲ってきたほうの責任でしょ?」
ヤブ医者は、笑顔で爆弾を投下した。
「でも、闘技場の中は治外法権だから、襲われても文句なしなんだよ~」
……は?
「はああああ!? そんなこと聞いてないぞ!?」
「え、言ってなかったっけ。いやあ、ゴメンゴメン」
「ゴメンで済むかぁぁぁ!!」
またしても生命の危機ですか!?
「つーか、中のほうが危険なら、何でなおさら外に出れないんだよ!?」
「えーとねえ、それぐらいの試練を乗り越えられないものなど勇者になる資格はないって事らしいけど」
「そんなにハードルあげられても困るわ!!」
誰がいったんだよそんなこと!!
「この国の最高権力者だね」
「王様かよ!!」
勅命ですか!? 王様どんだけ“勇者決定戦”に関心あるの!?
「まあ、そういうことだから、今のうちに部屋の場所だけでも確認しておいたら? 多分、部屋の場所は証明書に書いてあると思うし」
「えーと……2階の15って書いてある」
「じゃあ、確認してきましょうか?」
「いや、ゼロ。俺も行くよ」
「…………なら、私も」
「あたしは先に帰るよ。二回戦は明日だし、店の様子も見てこないとね」
「僕も一回診療所に戻るよ。まだやりたい実験もあるし」
ヤブ医者の言う実験がどんなものなのか、そこはかとなく気になったが、とりあえず別行動をとることにした。
さて、部屋の確認に行こうか。
今後は更新が遅れると思われます。
申し訳ありませんが、どうかご了承下さい。