受付
テストがあって更新がひどく遅れてしまいました。
ごめんなさい。
これからは、もう少し精進していきます!
俺達は、ティズさんやアーリアさん、ヤブ医者に付き添われながら王城の横にある闘技場へ向かっていた。
ここから見る分にはだいたいサッカーコートぐらいの大きさしかない建物だが、その中に次々と人が吸い込まれていく。
道も大変混雑していて、ごみごみとした人の波に押されるような形で進んでいた。
「スゴイ数だな……この人たち、みんな“勇者決定戦”に出るのか」
「そうだね。少なくとも、五千人はいるんじゃないかい?」
「…………もうすでに中に入っている人も多そうです」
「でも、あんな小さなところにみんな入れるんですか?」
「魔法で中を拡張してあるんだよ。なかはすんごーく広くてね、まあ……見た目の二十倍はあるんじゃない?」
ときおり雑談を交えながら歩を進める。
「五千人……」
俺が周りを見回しながらつぶやく。
五千人……この中で、たった一人が勇者になる。
金貨のためにはじめたとはいえ、これからの戦いにワクワクしているのも確かだった。
入院中、走ることはおろか歩くことさえ制限されたあの病室に比べて、ここはひどく自由だった。
「どんな形式で戦うんだ?」
「基本は勝ち抜き戦だね。普通はパーティー対パーティーでやるもんだけど、この人数じゃあ、適当に殴り合いの戦争みたいななるかもねえ」
俺の質問にはティズさんが答えてくれたが、そこで出てきた言葉の意味が分からなかった。
「パーティー? なんだそれ」
「要するにチームのことですよ。ユウ様と私で一つのパーティーです。パーティーは、五人まで許されているんですよ」
今度はゼロだ。しかし、ゼロが知っているようなことを知らないというのは、いささか決まりが悪い。
まあ、世界が違うのだから仕方がないと諦めた。
「じゃあ、二対五になることもありえるって訳か……」
「まあ、よっぽどの事がない限り大丈夫だと思うけどねえ。クロキ君もゼロ君も、この一週間でかなり強くなったし」
「…………ゼロに怪我をさせた人はみんなちょん切ります」
「だからやめよう!? アーリアさん危険だよ!」
ゼロが擦り傷一つ負っただけでも地獄の果てまで追いかけられそうだ。
……想像して思わず身震いした。
そうこうしているうちに、建物の前にたどり着いた。輝くような金をベースにして造られている建物で、太陽の反射が目にまぶしい。繊細に書き込まれた飾りのある門の前で、双子と思われる女性が受付をしていた。
「こんにちは」
「“勇者決定戦”にようこそ」
まったく同じ容姿の二人が口を開く。髪は金、目は翠だ。
「何名様でのご登録でしょうか」
「二名です」
「パーティー名をおうかがいします」
「……モノクロ、です」
パーティー名を言う時に、思わずためらってしまった。実はこれ、数日前に決めておいたチーム名なの だが、使うこともないと思っていて適当につけてしまったものだ。まさかパーティーなんてものがあるとは。
俺が“黒”でゼロが“白”。よってモノクロ。
なさすぎる想像力に涙が出た。
「ではこちらをお受け取り下さい」
「今大会への参加証です」
「紛失されると再発行は出来ませんので、お取り扱いにご注意下さい」
「では、いってらしゃいませ」
双子に見送られて先へと進む。
建物の大きな門をくぐると、そこには。
――――――予想をはるかに超えた景色が広がっていた。
東京ドームがいくつ入るのか、見渡すことが出来ないほど広い。
細部まで造りこまれ、とても歴史を感じさせる建物だ。
そして、何より驚いたのは、天井。
――――天井があるはずの場所にあった、青く澄み渡った空だった。
「え……?」
「わあ……」
俺とゼロは食い入るように空を見つめた。
つーかナゼあんなところに空が。ここは室内だったはず。
吹き抜けになっているということも考えられたが、そうだとすれば切り取られたような空が見えるはずだ。
限界はある。
なのにそれを感じさせない広々とした青空に鳥肌が立った。
「ああ、“オールテスの空”だね」
「“オールテスの空”……?」
「うん。大魔術氏と呼ばれた偉人で、この闘技場を建てた人だよ。この空は、この建物の上にある本物の空を天井に投影しているのさ」
「……すごい」
俺は思わず嘆息した。本物と見間違うばかりの空だ。
「さあ、ボーっとしてないで、あんたたちはさっさとファイトフィールドに向かいな」
ティズさんが声をかけた。俺がティズさんを見ると、彼女はうれしそうに笑っていた。
「あっちを見てごらん」
俺とゼロは、目にはいった光景に唖然とした。
――――――約一万人の人々が、広いフィールド内でそれぞれに武器を構えていた。
ヤブ医者のおもしろそうな笑い声が聞こえる。
「――――――第一回戦の始まりだよ」