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クロキ ユウ の ぼうけん  作者: ユミル
“勇者決定戦”編
16/50

準備完了であります

 そこから先は大変だった。


 なんでもヤブ医者によれば、“白”の女性は元来怪力の持ち主だったそうだが、男達がその力での反乱を恐れて封印を施したらしい。


 ……やっぱ女の人は強いわ、うん。



 で、封印が解けた=ゼロ最強という方程式が出来た。

 “白”の特性も戻ったようで、少しの組み手ですぐに相手の動きを見切れるまでになった。

 そこは、さすがだなと思うことで終わったのだが。



 しかし、これはないだろう。




 今日の訓練を終え、とりあえず俺たち二人の力量を測り終えたことで満足していた俺たちは、そのまま夕食に向かった。

 ヤブ医者オススメという、若干怪しめな店だったが、料理の味は最高らしい。


 ひとまずガラガラの店内に入り、席に着く。そして、ヤブ医者が頼んだ料理が運ばれてきたあとだ。


 この世界ではオードソックスな少し固めの黒パンを手に取り、ゼロに手渡す。


「ほい、ゼロ」

「あ、ありがとうございます」


 ゼロも結構おなかが減っていたようで、うれしそうにパンを受け取った。

――――そのときだ。


 今日の昼にも見た光景。パンが一瞬でパン粉へと姿を変えてしまったのである。


「………あれ?」

「……しまった。この可能性をまったく考えていなかった」


 俺はおもわず頭を抱えた。


 ゼロは封印が解けたばかりで、まだ力の加減がうまく出来ないらしい。

 俺もゼロと組み手をしたんだけど……死ぬかと思った。


 だってよけた後の拳が大木にめり込んだんだよ!? しかもその後倒れた。


 つーか十一歳の女の子より腕力が弱い俺って……あはははは(遠い目)


 ……ごほん。まあ、何はともあれ結論は一つ。


 ――――ゼロは、ご飯を食べられないって事だ。




~~~~



 しかし、俺が思った以上に早くその問題は解決した。


 簡単なことだ。ゼロが自分で食べられないなら、他の誰かが食べさせてやればいい。

 と、いう訳で、今はアーリアさんがゼロのお世話役となっている。


 最初に白羽の矢が立ったのは俺だったが、みんなの後ろから呪詛の念をこめて睨みつけてくるアーリアさんを前に逃走した。


 …………マジ怖え。怖すぎる。目線一つで地獄が見えた。


 で、アーリアさんがゼロに食べさせているのだが、当の本人はこの年になって誰かに食べさせてもらうということに対する羞恥やアーリアさんへの申し訳なさが入り混じったような、なんとも複雑な顔をしている。


 別に何にも思わなくてもいいと思うんだけどな。アーリアさん顔がホクホクしてるし。


 俺への態度との差が凄まじい。そんなに男が嫌いですか。


「…………当たり前でしょう。男はみんな害虫です」

「心読まれた!? しかも言い切った!」


つーか害虫って!? どんだけ差別が激しいの!?


 …………まあ、こんなことがあって、騒がしい夕食を終えた俺たち。


 とりあえず、ティズさんとアーリアさん、ヤブ医者は自宅に帰還。俺たちは取っておいた宿に戻った。


 今回はふたつ部屋が取れたので、俺とゼロは別々の部屋だ。


 最初はいつものように使用人が部屋をもらうなんてなどなど言っていたが、最後には眠そうに部屋に引っ込んでいった。


 俺もさっさとベッドに潜り込むと、明日から始まる本格的な訓練に備えて眠った。



~~~~



 翌日からはペアを変え、俺とアーリアさん、ゼロとティズさんで組むことになった。


 というものも、アーリアさんがゼロに手加減しすぎて訓練にならないとティズさんが言ったからだ。


 ……まあ、それは俺も同感だから、ペアを変えることに異存はないんだけど……。



「だからってこっちに八つ当たりしてくるのはやめてくださいぎゃあああああああ!!!」

「…………うるさいですよ害虫が。土に返れ」

「ひどい! てか、そんなにゼロとのペアがよかったんですか!?」

「…………具体的に言うと、あなたとのペアが嫌です」

「ハートが! 俺の心がズタズタに!!」


 精神的にも体力的にも殺されかけた。マジで。冗談抜きでだから……。



 こんな訓練が毎日毎日……よく生きてるな、俺。


 また、体術だけじゃなく、魔法もいくつか教わった。

 どうやら、ティズさんたちが使っている“魔語”(スペル)と、日本語の古代語は違うらしく、古代語のほうが威力が高いらしい。


 だが、その分習得が難しく、世間に出回っていないことから、今回は“魔語”(スペル)を使って戦おうということになった。


 エセ神からもらった本にもいくつか載っていた魔法を練習する。


 普通に出来るようになったら動きながら。それが出来たら対人戦で。


 もともとエセ神が俺に魔力を授けていたこともあって、魔法の習得も思いのほかスムーズに進んだ。




 ――――そして、いよいよ当日。


 俺たちは、“勇者決定戦”に向かっていた。




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