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クロキ ユウ の ぼうけん  作者: ユミル
“勇者決定戦”編
13/50

とりあえず準備

「……うーん。どれにしようか」


 今、俺は武器屋にいる。ゼロとティズ、あとアーリアが一緒だ。

 ヤブ医者はなんかやりたい実験があるとかで診療所に残った。


 ……なんの実験か激しく聞いてみたい。きっとグロテスクだな。


「あんまり重いのはやめときなよ。体の出来てないあんたみたいなガキには、到底扱えないよ」

「親切なアドバイスどーも」


 俺は今、ゼロと一緒に武器を見ている。“勇者決定戦”に出るために、とりあえず武器を調達しようということになったからだ。

 ゼロは基本体で戦うファイターだから武器は使わない。だが、短剣やナイフなどの刃物も持っていたほうがいいと、アーリアが助言したため、俺達と同行している。


「しっかし、やけに種類が多いな~」


 俺はずらりと並べられた武器を見てため息をついた。


 光を眩いばかりに反射する鋭利な刃物。

 槍や棍棒に斧、それに弓などの飛び道具。

 あとは、杖や水晶の埋め込まれた魔法具だ。


(エセ神によると、俺の魔力は強いらしいから……やっぱ魔法具か?)


 でも、どれを手にとってもしっくり来ない。中には水晶玉なんかもあったが、これを使ってどうやって戦えというのか。


(…………敵に投げつけるとか? いやいや、そんなの意味なくね?)


 確かに重くて硬い鈍器だが。


「どれにしましょうか。ユウ様、どれがいいと思います?」

「ん? 見せてみろ」


 ゼロに声をかけられ、俺はゼロの手元を覗き込んだ。

 そこにあるのは、五本ほどの短剣。


 それぞれの柄には違う色の水晶が埋め込まれてあって、見た目としてはとてもキレイだ。


「どれかを選ぼうと思うんですけど……」

「別に選ぶ必要なんてないだろ。全部買っちまえばいい」

「え!? ダメですそんなこと! ユウ様のお金を私なんかが使うなんて――!」

「いいっつってんだろ? 俺が許すんだから」


 ゼロの頭をぽんぽんとなでる。ゼロも本当は全部欲しかったようで、にへへと表情を緩めて笑った。

 ……ほんと、癒されるわあ~。


 と、次の瞬間背後に殺気を感じてすぐさまゼロから離れた。


「…………またか弱い女の子に暴力を……! 許せません」

「待て待て待て待て! だから俺はなんにもしてないだろ!?」

「…………喚くな叫ぶな喋るなちょん切りますよ。汚らわしい」

「ひどい! それは酷いと思いますアーリアさん!」


 俺がアーリアさんの不平等さを訴えていると、突然横からボカッと殴られた。


「っいて!?」

「あんたはいつまでおしゃべりしてるんだい。さっさと選びな」

「なんで殴るんだよ……」


 ぶつぶつと文句を言うと、また横から鉄拳が飛んできたので間一髪で回避した。


 これ以上殴られたくはないので武器に思考を戻す。


 とりあえず水晶玉は候補から除外して、斧なども重すぎるため却下。

 そうなると、軽めのナイフや剣がいいのだが――――。


(……刃物、だもんな)




 人の命を奪う道具。




 この世界と前の世界は何もかもが違う。生きているものも、生活も、全て。

 この世界で生きていくために一番手っ取り早いのは、前の世界での考え方を捨て、こっちに順応することだ。そうしないと、前の世界に縛られ囚われて、きっと身動きできなくなる時が来る。



(――でも、俺はそれでもいい)


 囚われてしまっても構わない。


(――――俺は、自分のしたいようにしてやる)



 刃物から目をそらして魔法具のほうを見る。すると、怪しげな杖や水晶玉などの間に、なにやらおかしなものが見えた。



「…………日本刀?」


 黒い鞘に入った、昔ながらの刀。手に取ってみると意外と軽く、柄を握るとなぜか手になじんだ。


(つか、刃物はやめようって思ったばっかなのに)


 それでも、なぜか魅せられる。


 スゥっと鞘から抜くと、シャランという軽い音を立てて刀身が姿を現した。


「…………あれ?」



 すると、少々おかしな点を発見した。


 なぜか刀身がかなり白い。



 白といってもペンキを塗りたくったようなものではなく、物質そのものが放つ透き通るような白さ。

 そして、柄の少し下にある真っ赤な結晶が映えてとても綺麗だった。


(なにでできてる? 鉄じゃあなさそうだし……新種の金属か?)


 コンコンとノックをするような形で刀身を叩くと、結構硬く丈夫そうだった。

 と、手が滑って思わず刃の部分を触ってしまった。


「やべっ……!?」


 が、切れなかった。


 まじまじと自分の手を凝視して、今度は自分から恐る恐る触ってみる。ゆっくりと刃に指を滑らせても、痛みを感じることはなかった。


「…………切れない?」

「何一人で百面相してるんだい」

「っうおわ!?」


 突然ティズが横から顔を出してきた。

 つーか突然出てくるなよ! 心臓に悪い。マジで。


「いや、これは」

「…………見たことのない武器」

「うぎゃああああ!?」


 死角からぬっとアーリアが出てきた。

 アーリアさん青白すぎるんだよ! 幽霊に見えるってか幽霊にしか見えないからヤメロ!


「……これは俺の故郷の武器だよ。ここにはないのか?」

「少なくとも、こんな武器は今まで見たことないね」

「…………刀身は水晶でできています。魔法具でしょうか」

「魔法具?」


 日本刀が魔法具。……納得できねー。つかイメージできない。

 けど、それなら切れないことについての説明は出来る。


(これなら、敵の攻撃も受け止められそうだし、魔法も使える。……よし)


「んじゃ、俺これにするよ。おっさん、これいくらだ?」

「へい、そいつなら銀貨二枚で結構でさあ」

「……やけに安くね?」


 俺は武器屋のおっさんが言ったことに首をかしげた。


 銅貨一枚でだいたい千円、銀貨一枚で大体一万円ぐらいの価値がある。それだけを言うとそんなに安くないが、さっきのゼロの短剣は5本で銀貨三十枚だった。


 ……一本六万円? 包丁でも持って来ればよかったかな。


「そいつは結構な材料を使ってる一級品ですが、なにぶん買い手がつかなくて。かれこれ十七年はここにありますかねえ」

「へえ。ま、いいや。安いに越したことはないし」


 俺は銀貨二枚を取り出しておっさんに渡すと、なぞの日本刀を手にみんなと一緒に武器屋を後にした。






 ――――日本刀が武器屋にあった時間と俺の年が同じ事は偶然なのか、と思いながら。

ようやく投稿です。すみません。

キャラの案があったらどしどしそうぞ。

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