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ヤブ医者と元王宮騎士

ん~・・・・・・思ってるように話が進まない。

想像と全然違うな・・・・・・。

 白い、白い、白い。


 壁も床も家具もベッドも何もかもが、白い。



 ここが、生まれた場所。





 ――そして、母親が死んだ場所。




(子供を生まなかったら、もっと生きられたかもしれないのに……)

(あんなにキレイで若い人が……)

(気付いた時には、もう堕ろせなくなってたらしいよ……)


(産まれてこなければよかったのにね――――)




 望まれない子供。母を殺し、父を殺し、その身に呪いを宿して産まれた子供。




(嫌よ! 誰があんな子供を引き取るもんですか!)

(孤児院にでもやってしまえ!! 俺たちに近づけるな!!)

(気持ち悪い……病を持っているなんて……!)

(そうだ、どこかへ捨ててしまえばいい)

(ここではない、どこか遠くへ)

(捨ててしまえ……消すんだ!)




 近くの野山に打ち捨てられた。あの時はまだ冬だっただろうか。

 産まれて間もない幼子は、産まれてから全ての出来事を記憶していた。

 冷たい、冷たい、寒い。

 吹雪が吹きすさぶ中、幼子はゆっくりと目を見開いて、思った。


(これで、いいんだ――――――)




~~~~




 気付いた時、俺はベッドの上にいた。

 まだぼんやりとする頭。天井を見つめていると、だんだん思考がはっきりとしていた。

 木で作られた部屋で、広さはそんなにない。白ではない茶色をみて、どこか安心している自分がいた。


「目が覚めた?」


 いきなり、俺の前に背の高い男が現れた。ってか……!



「……すいません。どこのどなたか知らないですけど顔が近い。鼻と鼻が触れ合ってます」

「花と花が触れ合う? なかなか詩的な表現だね」

「脳みそは元から存在していなかったようですね」



 俺は重い右手を上げて、男の顔をつかんだ。ついでに男のかけている眼鏡も一緒に。



「あれえ?なんだか君の顔は変だねえ? さっきまでは目とか鼻とかあったのに、いまじゃあまるでのっぺらぼうだよ」

「それはあんたが見ているのが俺の手の平だからだと思いますが」

「手の平? 君は顔に手の平があるのかい?」

「すいませんとりあえず退いてもらってもいいですか殴るぞ」



 無理やり顔を押しのけて男を遠ざける。ついでに体も起こして、男を観察した。


 年は若い。25かそのぐらいにしか見えない。インテリっぽい眼鏡に整った顔立ち、すらりとした細身の体には白衣を羽織っている。眼鏡の奥にあるのは薄いブルーの瞳だが、髪は柔らかな茶色だ。ということは、こいつは“無色人”になるんだろう。



「……つーか、あんたは一体何者だ。そしてここはどこだ」

「そして僕は誰?」

「知るかァァァァ!!」


 俺は思いっきり枕を放り投げたが、男は軽々とよけた。ニコニコと笑っているのがどこまでもムカつく。

 ……さっきから思っていたが、こいつはどうも頭のネジがほとんど抜け落ちているらしい。


「ったく、なんだって俺はこんなところに――――」


 そのとき、俺はハッとした。

 ――そうだ、俺は発作を起こして――――。


「君が路地に倒れていたのを、アーリアが拾ってきたんだよ」

「……アーリア?」


 相変わらずニコニコと笑っている男が話しかけてきた。


「僕の助手だよ。僕はレイ・ノワール。ここで“闇医者”をやっているんだ」


 “闇医者”? ヤブ医者の間違いだろう。というかさっきそれを言ってくれ。

 つーか、自分で“闇医者”って言い切りやがった。いいのか、それ?


「…………いいんです。ノワールが普通の医者なんてできるわけがありませんから」

「っのわあぁ!!?」


 突然、後ろから声が聞こえたかと思うと、背後に知らない女が立っていた。

 腰まである色素の薄い水色の髪に、同じ色をした、感情の少ない瞳。白すぎて逆に不健康に見える細長い手足。……そして暗いオーラ。なんだか亡霊みたいだ。


「やあ、アーリア。こちらがさっき君が拾ってきたユウ・クロキ君。クロキ君、こっちが僕の助手のアーリアだよ」

「……よろしく」

「よ、よろしく。っじゃなくてあんた何で俺の名前!?」

「だって僕は“闇医者”だよ?名前ぐらい知ってなきゃね」


 意味分からん。


「ま、実際はあの子に聞いたんだけどね。アーリア、もう入っていいよって言ってきて」

「え、あの子って一体誰「ユウ様ぁぁぁぁぁ!!」ぐぼらっ!?」


 ヤブ医者に問いただそうとしたら、いきなり腹部に強い衝撃が走った。


「ああもうユウ様ったらいきなり飛び出していったかと思ったら行き倒れてたとか一体何をしてたんですか! 私本当に心配したんですからね!!」

「ちょ……ゼロ、離れ……!」


 ゼロの頭が見事にみぞおちにクリーンヒットしている。しかもわめきながらぐりぐりと押し付けてくるものだから意識が危うくなってくる。

 そんな俺を救ったのは、服屋のおかみさんだった。


「ゼロ、いい加減に離れないとユウの口から魂が出るよ」

「へえ、クロキ君って口から魂出せるんだ~すごいねえ」


 ティズさんは俺からゼロをべリッと引き剥がした。荒い息を整えるついでにヤブ医者に裏拳をかまそうとしたが余裕でかわされた。……チッ。


「やあティズ、久しぶりだねえ。相変わらず君はキンキラキンだねえ」

「どう答えればいいのかまったく分からないけど、久しぶりだね、レイ。ちょっと話があるから、顔貸しておくれよ」

「顔? ごめんよティズ。僕も長いこと医者をやっているけど、いまだに頭と顔を分離させられたことはないんだ。試してみたことはあるんだけどね」

「違うわバカ野郎が。あいかわらず抜けてるんだねえ。ちょっとそこまでついて来ておくれって言ってるんだよ」


 ティズはヤブ医者と知り合いだったのか?

 てか、ヤブ医者は本当に頭と顔を分離させようとしたことがあるのだろうか。

 俺はヤブ医者の頭と顔が別々のところで動き回っているのを想像して酷く気分が悪くなった。かなりシュールな絵になってしまった。

 ティズさんはそのままヤブ医者を連れて部屋を出て行った。


~~~~


「ったく、こんなところであんたを見つけるなんてね、レイ。“闇医者”になんかなって」

「そういうティズこそ、今はのんびり服屋を経営しているらしいねえ。それを聞いたときは本当に驚いたよ。元王宮騎士、しかも一番隊の隊長が服屋だなんて」

「……昔の話さ」


 ティズはレイを見つめた。レイはうれしそうに笑う。


「それでも、たった数年前じゃないか。よく君がここまで丸くなったものだよ」

「……そんなことはどうでもいいんだよ。それより、あんた、あいつの“呪い”を見たんだろう?」


 ティズは無理やり話を打ち切ると、レイに聞いた。レイは珍しく真剣な顔になってから、答えた。


「……うん、見たよ。アレは相当強いね。僕でも癒せないよ。ぜひ、研究材料にくわえたいなあ」

「……あんたの材料になんてされたら、あいつはひとかけらも残らないだろうね」


 ――――レイ・ノワール。数年前にティズ率いる王宮騎士一番隊に属していた男。

 別名、“黒悪魔”。


 退治した魔物の死体を持ち帰っては、自分の持つ地下研究所で弄くりまわすのが趣味。敵国の捕虜は、彼の研究所に連れ込まれ、全てを吐いてから死に逝く。その間、地上にすら響き渡るような恐怖の絶叫は絶え間なく続き、歴戦の戦士でさえその前では無力だ。死神よりも怖いと称されてこの名が付いた。


 見た目の穏やかさは本当に見た目だけ。

 中身は、ちょっとあたまのネジが足りない、究極のサディストだ。


 ティズは、レイに問いかけた。


「――――治るかい?」

「…………君にしては珍しいね。会ってまだ日の浅い子供を気にかけるなんて」

「……いいから早く答えな」

「ふふ、しょうがないなあ……」


 ティズの真剣な顔に、レイはやれやれと首を振った後、口を開いた。


「“呪い”を消すことは出来ないよ。たとえこの僕でもね」

「……そう、か」

「――――でも、治すことならできるよ」

「っ!? なんだって!?」


 一度落胆したティズは、レイの言葉に目を輝かせた。


「その治療法は!?」

「君、本当にクロキ君を気に入っているんだね。……簡単なことだよ」


 レイは、無表情にティズに近づくと、その耳元に囁いた。


 ――――ティズは、それを聞いて愕然とした。

 レイはその様子をチラリと見やると、ゆっくりとティズに背を向け、病室へと戻っていった。


 ティズは、ふらふらする頭を押さえて考えた。……レイは、そんなことにまで手を出していたのか。“黒悪魔”とまで称されるあいつなら、別段おかしくもないけども。

 確かにこれなら確実だ。しかし――――ユウがそれを聞いて納得するのだろうか。


『俺にはなんの関係もないのさ』

 あの時のユウの言葉が頭をめぐる。さっき囁かれたレイの言葉も。





『――――クロキ君と同じくらいの年の子供を捕まえて、二人の心臓を入れ替えればいい』

・・・・・・なんか話が飛びすぎてる感が。

もうちょっと内容を詰めたほうがいいのだろうか・・・?

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