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影を覚えてる少女  作者: 嘉美


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第二話 顧文淵

はじめまして。

拙いところもあると思いますが、楽しんでいただけたら嬉しいです。字が間違ってるところがあるかもしれないけどごめんなさい。

沈家に、客が訪れた。


当主の沈家に、客が訪れた。


当主の元婚約者、名を**顧文淵グー・ウェンユエン**という。

少し変わった名前である。

そしてまるで青年のような目をしている。


「しばらく、こちらに厄介になります」


穏やかな物腰。

だが、嘉樹は一目で分かった。


――この人は、見ている。


人の顔ではない。

場の流れを。

言葉の裏を。


(同じだ)


自分と、どこか似ている。


「三小姐」


文淵は、庭で一人本を読んでいた嘉樹に声をかけた。


「あなたが、沈家の……」


言葉を選ぶように、少しだけ間を置く。


「茶会には参加しないのですか?」


嘉樹は本を閉じた。


「私の席などありませんから」


「そうですか」

「本は好きなのですか?」

「はい好きです。」

嘉樹は静かに言った。

「茶会に戻らないですか?心配されますよ」

文淵は少し笑いながらこっちを見た。

「大丈夫ですよ」

その日から、文淵は時折、嘉樹に話しかけるようになった。

世間話。

学問の話。

だが――核心には、触れない。


触れないからこそ、分かる。


(この人は、沈家に長くはいない)


そして。


(私を、連れ出すつもりだ。)



数日後。

嘉樹は、初めて沈家の外へ出ることになった。


名目は、寺への参拝。

同行するのは、文淵と、最低限の供だけ。


門を出た瞬間、胸の奥がざわめいた。


人の声。

商いの呼び声。

怒り、諦め、焦り。


(……こんなに)


沈家の塀の内側より、

外の世界のほうが、影は多い。


寺へ向かう途中、騒ぎが起きていた。


「盗人だ!」


捕らえられていたのは、十にも満たない少年だった。

痩せた腕。

怯えた目。


人々は口々に言う。


「罰を与えろ」

「見せしめだ」


嘉樹は、少年のそばに漂う空気を感じ取った。


(違う)


これは、盗みの空気じゃない。

追い詰められた末の、選択。

でもこれは私には関係ない。

文淵が、一歩前に出た。


「待ちなさい」


静かな声だったが、不思議と通った。


「この子が盗んだのは、乾餅一つ、それを、ここまで騒ぎ立てる理由は?」


人々が言葉に詰まる。

「うるせえ女の分際で喋るじゃねえ」

商人のおじさんは、文淵を睨みながら言った。

「そうですかこれは大変申し訳ありませんでした。でははこれで」

文淵は、ちらりと嘉樹を見た。


「……三小姐は、どう思われますか」


(選べ)


そう言われている。


嘉樹は、少年を見た。


その奥にある、飢えと恐怖を。


「あの子はただ飢えているだけです。」

はっきりと、言った。

沈黙。

「私もそう思います。」

その後少年はどうなったかは知らない。

でもただで解放されることはないと思う。

寺へ向かう道すがら、文淵が言った。


「沈家にいれば、あなたは危険視される」


「だが外では、あなたの目は――」


一瞬、言葉を切る。


「武器にも、救いにもなる」


嘉樹は、空を見上げた。


沈家の塀は、もう見えない。


(ここからだ)


この世界で、生きる意味を選ぶのは。


影を見る少女は、初めて外の風を吸い込み、

小さく――だが確かに、前へ進んだ。婚約者、名を**顧文淵グー・ウェンユエン**という。

少し変わった名前である。

そしてまるで青年のような目をしている。


「しばらく、こちらに厄介になります」


穏やかな物腰。

だが、嘉樹は一目で分かった。


――この人は、見ている。


人の顔ではない。

場の流れを。

言葉の裏を。


(同じだ)


自分と、どこか似ている。


「三小姐」


文淵は、庭で一人本を読んでいた嘉樹に声をかけた。


「あなたが、沈家の……」


言葉を選ぶように、少しだけ間を置く。


「茶会には参加しないのですか?」


嘉樹は本を閉じた。


「私の席などありませんから」


「そうですか」

「本は好きなのですか?」

「はい好きです。」

嘉樹は静かに言った。

「茶会に戻らないですか?心配されますよ」

文淵は少し笑いながらこっちを見た。

「大丈夫ですよ」

その日から、文淵は時折、嘉樹に話しかけるようになった。

世間話。

学問の話。

だが――核心には、触れない。


触れないからこそ、分かる。


(この人は、沈家に長くはいない)


そして。


(私を、連れ出すつもりだ。)



数日後。

嘉樹は、初めて沈家の外へ出ることになった。


名目は、寺への参拝。

同行するのは、文淵と、最低限の供だけ。


門を出た瞬間、胸の奥がざわめいた。


人の声。

商いの呼び声。

怒り、諦め、焦り。


(……こんなに)


沈家の塀の内側より、

外の世界のほうが、影は多い。


寺へ向かう途中、騒ぎが起きていた。


「盗人だ!」


捕らえられていたのは、十にも満たない少年だった。

痩せた腕。

怯えた目。


人々は口々に言う。


「罰を与えろ」

「見せしめだ」


嘉樹は、少年のそばに漂う空気を感じ取った。


(違う)


これは、盗みの空気じゃない。

追い詰められた末の、選択。

でもこれは私には関係ない。

文淵が、一歩前に出た。


「待ちなさい」


静かな声だったが、不思議と通った。


「この子が盗んだのは、乾餅一つ、それを、ここまで騒ぎ立てる理由は?」


人々が言葉に詰まる。

「うるせえ女の分際で喋るじゃねえ」

商人のおじさんは、文淵を睨みながら少年の腹を殴った。

「そうですかこれは大変申し訳ありませんでした。でははこれで」

文淵は、ちらりと嘉樹を見た。


「……三小姐は、どう思われますか」


(選べ)


そう言われている。


嘉樹は、少年を見た。


その奥にある、飢えと恐怖を。


「この子は誰かを傷つけるために盗んだのではありません生きるためです」

はっきりと、言った。

沈黙。

「私もそう思います。」

その後少年はどうなったかは知らない。

でもただで解放されることはないと思う。

寺へ向かう道すがら、文淵が言った。


「沈家にいれば、あなたは危険視される」


「だが外では、あなたの目は――」


一瞬、言葉を切る。


「武器にも、救いにもなる」


嘉樹は、空を見上げた。


沈家の塀は、もう見えない。

(私の人生はこれからだ)

この世界で、生きる意味を選ぶのは。


影を見る少女は、初めて外の風を吸い込み、

小さく――だが確かに、前へ進んだ。

ここまで読んでくださりありがとうございます。少しでも楽しんでいただけたら嬉しいです。続きも楽しみにしてください。作品の感想教えてください。

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