第八話:伝言ゲームと第一騎士団
昼下がりの第一騎士団玄関前。アイリスは手紙を出し終えた安心感を胸に、落ち葉を掃きながら、ぼんやりとしていた。
(……よし、これで両親も落ち着くだろう。たぶん)
そこへ、ゴードン団長とルーカスが勢いよく突っ込んできた。
「アイリス! 聞いたか? あの伝言なんだが――俺はこうだと思う!」
「っすね! 団長の推理、マジ冴えてます!」
「……どの伝言ですか?」
そのまま伝えるだけで済む話が、ゴードンのドヤ推理とルーカスのヨイショによって、なぜか“難事件の謎解き大会”へと変貌していく。
「あの。ご本人に確認に行きませんか?」
「だからアイリス、これは“こう解釈できる”って話で〜」
(…………仕事中なんだけどなぁ。落ち葉と話すほうがまだ会話が成立しそうだなぁ)
「ほら、もし仮にこうだとして、さらにそこから――」
「はー! なるほどっす! さらに深読みすると――」
「いや、違う違う違う、そこはこうだろう!」
「……あ、いらっしゃいました。ご本人に聞いてきますね」
伝言を頼んだ当の本人がやってきて、一言。
「え? 伝言って“資料を返してください”だけですよ?」
「「あれ?」」
アイリスは盛大に落ち葉を蹴り上げた。
「だから聞きに行こうって言ったじゃん!」
「「えぇええーーーー!!!」」
第一騎士団の伝言推論大会、終了。
アイリスが大きなため息をつきながら落ち葉を集め直していると、第二騎士団副団長のノエルが通りかかった。
「……これは何の騒ぎだ?」
アイリスが事情を説明すると、ノエルは眉をひそめる。
「伝言の確認でここまでの騒ぎに? 毎日こんな調子なのか」
「まあ……だいたい……」
「そもそも、専属で掃除係が必要なほど、第一は何の仕事を溜め込んでいる? ……いや、他の団の内情を探るのも良くないな。何か事情が」
「いえ! 無いと思います。えぇと、私は、基本的には掃除してますね。団長の部屋は、床に散らばった書類の整理から始まっていますが」
「書類が床に? 待て。機密文書もか?」
「大丈夫です! 機密文書っぽいものは目をつぶって拾ってますので!」
「床に散らばっている時点で大問題だ! 第一騎士団は、何をやっているんだ……」
アイリスは顔を覆う。
「まともな世界が……眩しい……」
その横で、ルーカスが小声で話しかける。
「ノエル副団長、もしよかったらゴードン団長に“片づけ講習”とかしてくれません?」
「君達に必要なのは片付けの方法ではなく、“意識改革”だろう」
(それが一番難しいのよ……)




