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掃除係アイリスの騎士団混沌日誌〜いいから落ち着け。全員まとめて今すぐに〜  作者: まめまめみ


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12/22

第十一話:団長、現実とウサギと向き合う(たぶん)

 合同会議が第一騎士団長の大活躍として評価され、心が折れたアイリスとルーカスは勤務終了時刻と共に、さっさと退勤した。


 翌朝。アイリスはいつも通り廊下をモップがけしていたが、そこへ団員が滑り込んでくる。


「アイリスさぁぁん!! 助けてくださいぃ!!」


「掃除係なので無理でーす」


「話だけでも聞いてぇぇ! 追加資料が! 団長が!!」


 アイリスはモップを止めた。



「誰か! この追加資料ってやつ! どこにあるんだ!? 総騎士団長が『今日提出』って言ってたんだぞ!!」


 ゴードン団長が紙束を振り回して絶叫していた。


「団長、それ昨日アイリスさんが説明してたやつですよ」

「資料の内容はどんななんだ?」

「なんで俺が把握してる前提なんだよ! 俺、知らんぞ!!」


(知らんのかい)


 そこへノエル副団長が静かに入室した。


「追加資料の確認に来た」


「い、今まとめてるところだ!(キリッ)」


(いや、紙振り回してるだけ)


 ノエルは冷ややかに言い放つ。


「……ゴードン団長。資料は団長が内容を把握している前提で作られている。だが、団長は理解していない。違うか?」


「うっ、む。そうだな」


「いま部下たちが動けない理由、分かるか?」


 全員の視線が団長へ集中する。


「団長が『わかってるよな?』という圧だけ出してくるからだ。中身スカスカの威圧は、ただの混乱製造マシンだ」


「混乱製造……!?」


「現状、掃除係のアイリス君ひとりの質問で団が回っている。団長は混乱という名の汚れを撒き散らしている状態だ」


「俺が、汚れ……!?」


「掃除しがいがあるな」


「褒められてる!?」「いや全く」


 ノエルが退室すると、残った団員たちは凹んでいるゴードン団長に声をかけた。


「団長、少しは自覚出ました?」


「全部……アイリス頼り……?」


「頼りっていうか……アイリスさんが『どうやったら良いですか?』って聞いてくれるから”説明してるっぽい状況”になってただけっすよ」


「アイリスが入る前、どうしてたんだ俺ら……」


「「「地獄だったな!!」」」


「俺……指示出してないのに……なんで団が潰れてなかったんだ……?」


 混沌とした空気の中、アイリスは静かにモップを動かしていた。


「アイリスちゃんからも何か言ってくれ!!」


「え゙。……。“掃除”って、放置すると落ちにくくなるみたいです。以上でーす」


「俺が落ちにくい汚れ……!!」


「では、掃除の続きに戻りまーす」



 その日の昼。第一騎士団の混沌は、また別方向に転がり始める──。


 総騎士団長からの急報。

『一角ウサギ大量発生。住民の畑が壊滅。至急討伐せよ。あ、毛皮は綺麗に剥ぎ取ってね。加工して、住民の収入補填にするから。くれぐれもよろしく』


 ゴードン団長は「俺が頼られてる!! やるぞ!(キリッ)」と胸を張るが、読み込むほどに『毛皮をキレイに剥ぐ』の箇所で思考が停止する。団員たちは目を合わせ、事態を察する。

 

「団長……これ、いつもの討伐と違うっすよ」


「任せろ! 会議だ!!」


 ゴードン団長が張り切って会議室に団員を集める。


「で、誰に頼む!? 傭兵? ハンター? 冒険者? ツテがあるのは誰だ!?」


「団長、ツテを探すとこからですよ……」


(やっぱり横のつながりゼロだった……)


 そこでアイリスが手を挙げた。


「あのぅ。私、知り合いに聞いてみます。市場のタイムセール仲間に……」


 こうしてゴードン団長とアイリスは、知り合いのいる冒険者支部へ向かうことになった。



「初めまして、第一騎士団長。アイリスちゃんは、久しぶり。さて、今日はどうした?」


(支部長!? 上層部だったの!? 団長を連れてきたのミスだった!?)


 支部長の前でゴードン団長は緊張しながら答える。


「住民が……えーと……毛皮をキレイに……?」


(全部混ざってる)


 結局アイリスが説明し、支部長は頷いた。


「受注額は、この金額でどうだろう?」


 すると団長の目にキラリと力が入る。


「いや、その……その金額じゃ住民が困っちゃうからな! ほら、こう! お得なやつにしてくれたり……しない? 勉強してほしい!(キリッ)」


(最悪だーーー! なんでそうなるの団長ーーー!!)


 アイリスが石のように固まる中、支部長は笑って値下げを承諾した。



 その夜。アイリスは支部に直行し、半泣きで謝罪する。


「『勉強』なんて……! ごめんなさい……! 本当に……!」


「謝らなくて良いよ〜。俺が嫁に怒られちゃう。にしても……いや〜上司さん、勢いがすごいねぇ。嫌いじゃないけど」


「上司じゃないんです。私も、ただの掃除係で……」


「ただの掃除係? そんな事ないさ〜。今日のまとめ役は完全にアイリスちゃんだったよ」


 この日を境に「第一騎士団には“裏ボス”がいるらしい」という妙な噂が流れ始めた。


 ゴードン団長だけが何も知らず、胸を張っていた。

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