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みな子のキラキラ  作者: ゆずさくら


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6/6

キラキラ

 数日が経ちました。

 塾のない日も、暇な時はチラシを配りSNSのフォロワーも増えています。

 売り上げはみな子が考えているよりも大きくなりそうでした。

 ですが、風船犬のしっぽはまだ色のないままでした。

 みな子は、あの後もパン屋を覗きにきていた男の子のことを、少しずつですが集めていました。

 生徒からだけではなく、父兄からも話を聞くうち、みな子の中で彼がどんな思いなのかわかってきました。

 男の子は、鉄道の模型で遊んでいることが多いそうです。

 ですが、そのせいで勉強があまり出来なかった為、塾に入り、塾のお金のために鉄道の模型が買えなくなってしまいました。

 調べると彼の集めているものは本格的なもので、小学生のお小遣いではなかなか買えない値段です。

 みな子は男の子だったらどうするかを考えました。

 周りの子がパンを買って食べていると言って、お母さんからお金をもらう。

 高いパンを買うお小遣いをもらって、一番安いパンを買って食べる。

 差額をお小遣いにする、そんなことではないか。

 彼なりに、何かを考えた結果なのだと思うのです。

 それを、何も知らないみな子に口出しされたくないでしょう。

 ただ、応援はできる。

 みな子は考えました。

 いつものようにパン屋で仕事しながら、思いを文字にして書き留めました。

 男の子がパンを買いにきます。

 みな子は出された『プチバゲット』を紙の袋に入れます。

「あ、袋いらない」

「間違えちゃった。袋ごと持って帰って」

 男の子は、黙って頷き、袋ごと持って帰りました。

 みな子は、そのままいつもの仕事を続けました。



 家に帰り、部屋に戻ると風船犬が寄ってきました。

 一番先に確認したしっぽは、色が戻っていませんでした。

 みな子がパンを袋に入れて渡したのは、男の子に手紙を渡すためでした。

 みな子は、これまでの思いを手紙に書きました。

 尻尾の色が戻るとか、見返りを期待して男の子に手紙を書いたわけではありません。

 風船犬をいつものように撫でていると、犬は尻尾を振り始めました。

 ふと、その尻尾を振る様子を見ていると、振っている尻尾に男の子の姿が見えてきました。



 男の子は自分の部屋に戻り、鞄からパン屋の袋を取り出しました。

 部屋には、電気機関車のポスターがいくつか壁に貼ってあり、複雑なダイヤグラムもその下に張り出されていました。

 鉄道模型が飾ってある棚もあります。

 男の子は袋から、みな子の手紙を取り出すと、手紙を広げました。

 お小遣いが貯まるといいね、という内容の文に添えて、部屋に飾ってあるポスターと同じ電気機関車が描かれていました。

『下手だな…… パンタグラフはこっちの形だし、色々間違って……』

 けれど男の子はそう言いながら、笑っていました。

 思いは伝わった。

 みな子はそう思いました。



 振っている尻尾から、男の子の姿が見えなくなると、みな子は尻尾の様子が変わっていることに気づきました。

 手で押さえると、尻尾には綺麗な原色の色が戻っていました。

 すると風船犬は、ふわふわと浮き上がりはじめました。

「えっ?」

『みな子、ありがとう。やりきってくれると思ってた』

 風船犬が部屋の天井につくと、パッと消えてしまいました。

 一瞬、風船が割れたのかと思いましたが、音はしていません。

 何もない空間から、風船犬の声だけが聞こえてきます。

『さようなら』

 色をなくした風船犬は、色を取り戻し、自らの世界に戻ったのです。

 みな子は言葉が出ませんでしたが、目には涙が溢れていました。

「さよなら」



 おばさんの腰は良くなりましたが、みな子はそのままパン屋で雇ってもらえました。

 みんなにキラキラを与えられる存在になりたい。

 今日もみな子は、パン屋でそんなことを考えています。





 おしまい





最後まで読んでいただきありがとうございます。


お手隙でしたら、評価いただけると幸いです。


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