第三章 コミュ障陰キャぼっちでもライブはできますか? 第四十六節
次に二樹
その樹は世界を紬ぎ
車の前には一人の女性が立っていた
ぱっと見で二十代ぐらいだろうか、その女性は廻兎を見つけると手を振って呼びかけた
「廻兎君こっちこっちー」
「あれ? 紗夜さん!? 店長じゃないんですか?」
「あー なんか廻兎君迎えに行こうとしたら転んじゃったみたいでさ あの人も歳だから代わりに私が来たってわけ」
「あーなるほど 大丈夫なんですか?」
「まあ大丈夫でしょ! 死にはしないよ」
二人の会話を横目に真凛は状況を伺った
普段、学校でも顔の広い廻兎だけど学校の外でもここまで知り合いが多いのは意外だった
それにバイト先の先輩?とも親密に話していてこれこそが本物の陽キャだとも思う
会話に取り残された真凛がぽつんと立っていると女性は廻兎との会話を中断して真凛のほうを眺めた
それから
「もしかして彼女?」
「違いますよ! こないだ言ったバンドメンバーです」
突然、話題にあげられて驚着つつも真凛は二人の方を見て
「小林真凛です… かい… 天城君と同じバンドのメンバーです」
「真凛ちゃんか… はじめましてだねー 私は桂木紗夜 廻兎君と同じ和田楽器店ってとこで働いてる同僚でね 今日は店長に頼まれて運転手で来たの」
桂木さんはそう言って車の鍵をつまんで揺らした
「そうなんですね お休みの日にすみません…」
「いいのいいの その分、バイト代もでるしヒマだったからさ」
桂木さんは笑いながら言った それから二人のほうをみてそれにと続けて
「なーんか訳アリみたいだし 廻兎君には借りがあるからねー」
「借り…ですか?」
「そうそう ちょっと前にコスイベでトラブったときにフォローしてくれたんだよねー」
桂木さんは廻兎のほうを見てウインクした
「そのせいで俺までコスプレ始めることになったんですけどね」
「いいじゃんいいじゃん 廻兎君だってまんざらじゃないんでしょ?」
「最初のインパクトが強かったせいでまともなキャラできないんですよ…」
またしても二人の会話に置いて行かれて困惑する
すると思い出した火のように桂木さんは言った
「そんなことより早く動いたほうがよくない?」
「そうですね SNSの情報も集まってきてるしお願いします」
「りょーかい さ、乗って乗って」
私たちは車にに乗り込んだ
「ちょっと狭いかもだけど ごめんねー」
「なにこれ!?」
後部座席はかろうじて二人が座れるスペースしかなかった
それ以外のスペースはというと無数のケーブルに繋がれた機械が積まれていた
なにやらテレビモニターのようなものも難題も積まれている
廻兎は特に驚くそぶりも見せずに乗り込むとどこに繋がっているのかも分からないケーブルに自分のスマホを繋いだ
「見えますか?」
「うん バッチリ! あ、真凛ちゃんはこっちに乗ってー」
「あ、はい…」
桂木さんに言われて助手席のほうに移動した
助手席はそこまで狭いわけではなくいたって普通だった
「真凛、コレを」
「あ、うん…」
後部座席の廻兎から何かを渡される
機械同士の隙間を器用にくぐって渡されたそれは一台のタブレット端末だった
「えっと… これは?」
「補助モニター SNSの情報をベースに組んだ追跡ルートはカーナビに出すけど細かい情報やSNSでの最新の反応はそっちにも映すから何か気が付いたことがあれば教えて」
早口で説明する廻兎の声と一緒にキーボードを打つ音が背中のほうから聞こえた
「なんか映画みたい…」
「でしょー まあこれ店長の趣味なんだけどさ 意外と役立つんだよねー」
「こんなことほかにもあるんですか!?」
思わせぶりな葛城さんの言葉に反応してしまう
「桂木さん、とりま市外に出て下さい 高速はさっき発生した事故で渋滞が予想されるので下道でお願いします」
「りょーかい それじゃ出すよ」
桂木さんの合図とともに車が走り出した




