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第三章 コミュ障陰キャぼっちでもライブはできますか? 第四十一節

一回生、二回熟

 私が立ち尽くしているとメイリンちゃんは私の手を取った

「さ、行きましょう蓬!」

「あ、ちょっとまっ 心の準備がっ…」

私の悲壮な叫びも虚しく天高くそびえたつホテルの中に引きずり込まれた


「坂本は車を停めてから来マス メイリンたちは先に部屋に行きましょう」

そう言いながら掴んだ手を離さないままエレベーターに連行された

けど普通のエレベーターじゃなくてなぜかフロントの端のほう、一枚の扉をくぐった先にあるエレベーターだ

恐ろしいことに扉の上にはVIPの文字が刻まれていた

「あ、あのー メイリンちゃん? ここってほんとにメイリンちゃんのお家なのかな?」

答えが分かり切った質問をあえて投げかけた

何かの間違いであってほしいという願いを込めつつメイリンちゃんの返答を待つ

「うーんと 正確には違いますネ ここは日本用のお家とは別で使ってる通学用の家です ほんとは東京からここまで通うつもりでしたがそれだと時間がかかりすぎるのでこっちに住むことにしたんです」

「そうなんだ…」

話のスケールが違い過ぎる

つまりメイリンちゃんの家は上海と日本にあるけど今、私たちがいるここは通学用に使ってる家ということになる

まあリムジンでの送迎がある家庭だし別荘の一つや二つあってもおかしくないけど…


私が何度目かの思考停止に陥っているとエレベーターが止まった

どうやら目的地に到着したらしい

エレベーターを降りるとメイリンちゃんは言った

「ようこそです ここがメイリンのお家ですヨ!」

「あ…」

目の前に広がるのはついさっきまで私たちが立っていた街並みが一望できるようなガラス張りの空間だった

「えっと… ここって…」

「ん? ただのリビングですよ?」

「玄関は!?」

咄嗟にでたリアクションがそれだった

きっとうちのリビングと同じぐらいの玄関に通されるんだろうなと思っていたからこの展開は予想外過ぎた

そもそもエレベーターから降りてすぐにリビングなんて聞いたことがなかったしsのリビングだって全然、普通じゃなかった


そんな私をよそにメイリンちゃんは靴のまま進んで行く

「メイリンのお家はこのスタイルなんです 蓬も気にせず上がってくだサイ」


「あ、うん…」

言われるがまま靴を脱がずに足を踏み入れた

たしかに絨毯とかは敷かれてないしフローリングも大理石?みたいな感じで靴を脱ぐほうが場違いな気もした

それから私はメイリンちゃんに促されて大きなソファーに向かい合って座った

まるでベットみたいに沈み込む感覚で二度と立ち上がれなくなりそうだけどそれ以上にこの王室のような装飾と空気間からくる緊張感に耐えられなかった…


「あの…じゃあ 私はこれで…」

「蓬はあれからどうしてたんですか?」

「あれから…?」

「日本でメイリンと別れてからです」

私がそそくさと帰ろうと立ち上がろうとした瞬間、メイリンちゃんは問いかけた

メイリンちゃんと別れた後…

それがいつのことなのかすら私には思い出せなくて

「メイリンはあれからいっぱい頑張りました! 蓬に見てもらえるように…」

「あ、うん…」

「蓬はどうしてましたカ?」

メイリンちゃんは私のことをじっと見つめながら聞いてくる


私はその瞳を知っている


記憶のどこかに刺さったままの思い出


「蓬?」

「あ、えと ごめん」

もう少しで思い出せるのに何かが足りない気がした

するとメイリンちゃんは私のそばに近づいて言った

「一回生、二回熟」

「それって…」

「蓬が言った言葉です 私たちは一度目の出会いで友達になって次に再会したらもっと仲良くなるって…」


彼女の言葉でようやく思い出した

あの夏の日の記憶を

あの時の約束を

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