第三章 コミュ障陰キャぼっちでもライブはできますか? 第三十八節
見つけた…
学校を飛びだしてあてもなく走り回った
メイリンちゃんがどこに向ったのかなんて分からない
そもそも今日、転校したばかりの彼女が行きそうなところなんて見当もつかなかった
「はあ はあっ はあ……」
普段まともに動かさない身体を動かして使わない筋肉や細胞まで総動員したザマがこれだ
肩で息をしながら痛みだした脇腹を抑えながら建物の壁にもたれかかった
勢いで飛びだしたもののなにひとつ手がかりもない
メイリンちゃんと連絡先も交換してないから連絡の取りようもなかった
落ち着いて思考を正常にしようとするけど突然の運動に驚いた心臓がうるさくて考えが纏まらなかった
桜水高校の周りにあるお店は限られている
その一つ一つをくまなく探せばもしかしたら…
なんて考えでここまで走り回ったけど成果はゼロ…
焦りと焦燥感が止まらない…
同じような考えがぐるぐると頭を埋め尽くしていって…
意識が遠のいて…
いつもと同じ貧血のめまいで意識が朦朧としたその時、ふと思い出したことがあった
何年か前の出来事だ
たぶん八歳か九歳ぐらいだったと思う
あの日も私はこんな風に走り回っていた
けど、あの頃は今より少しだけ活発で少しだけ積極的だった気がする
家の近くの小さな神社で女の子を見つけた
そうだあの時も…
薄暗い御社の中から泣き声が聞こえたんだ
「・・・・っ ・・・・っす」
薄い壁の向こう側からかすかに吐息のような鼻をすするような音が聞こえた
貧血のめまいから蹲ってなんとかたどり着いた近くのコンビニ、そのすぐ横にある小さな小屋から声は聞こえた
その小屋はだいぶ昔から空地になってるらしい
もとは農作業用の小屋だったらしく外には農機具の残骸が放置されていた
立ち入り禁止の看板は錆びついてほとんど読めなくなってる
コンビニが近いからか普段はガラの悪そうな若者がたむろしてるけど今日は誰も居ないみたいだ
壁のあちこちに空いた穴は大小様々だけどちょうど除き込める位置に野球のボールぐらいの大きさの穴が空いていた
そこから恐る恐る中の様子を伺うと私の予想通りメイリンちゃんが蹲っていた
「ううっ どこですカ? ここハ…」
僅かに聞き取れたその言葉からなんとなく状況を理解する
メイリンちゃんが迷い込んだであろうこの小屋は扉の建付けが悪くて中から扉が空かないことがあるらしい
教えてくれた双葉先輩曰く以前、この小屋に肝試しに行った時に出られなくなりあとで親や先生から大目玉をくらったとかどうとか…
ただ、扉の開け方にコツがいるだけで中からでも脱出は可能らしい
メイリンちゃんにそのことを教えようとしたけど壁越しにいる彼女との距離が遠くて声が届きそうになかった
「しょうがないな…」
立ち入り禁止の場所に入るなんて普段の私なら絶対にしないんだけどこの時はメイリンちゃんを助けるという体で入って行った
もとはと言えばほとんど私のせいだし
それから無駄に厚い大きな扉の前に立って扉を開いた
「メイリンちゃん? 大丈夫?」
居るのは分かっていたけど薄暗くてよく見えない扉の向こうに問いかける
ここからだとほんとに何も見えなくてまるで虚空に問いかけてるみたいだ
「……蓬?」
僅かな間のあとについさっきまで聞いていたのと同じ声が返ってくる
「あ、うん… ごめんね その… 心配になってさ…」
自分でもなにを言ってるのか分からないけどとりあえず適当に喋ってみる
(こんな時、なんて言ったらいいのかわかんないよ…)
それに対する虚空からの返答は
「どうして…デスか? どうして蓬がここに…」
「あ、えと…」
またしても言葉に詰まる
ここまで来た理由なんてなかった
理由があったのかもしれないけどもう分からなくなっていた
ただひとつ答えるのならば…
「メイリンちゃんを見つけるため…かな」
「よもぎ!」
駆け寄った彼女は私に抱きついて そしてまた泣いていた




