第三章 コミュ障陰キャぼっちでもライブはできますか? 第三十三節
あの日の手の暖かさは一生忘れまセン
だってあの日、蓬は…
ほとんどのクラスメートの視線が集まっても真凛は動じなかった
「あ、ごめんね みんなが二人に色々聞きたい気持ちは分かるんだけどさ 次の授業まで時間もないし二人も全部の質問に答えるのは大変だろうからさ、とりあえず今はどうしても気になることだけ聞いてそれ以外の質問は後にしない?」
真凛の言葉と声はまだ少しざわついていた教室でもよく響いた
すると群衆となった生徒の一部からは
「それもそっかー」 「時間とか後でいくらでもあるしー」と声が聞こえた
聞き覚えのあるその声は佐藤さんと宇佐美さんの声だ
まるで真凛の言葉に援護射撃するみたいに二人の声が響いた
そのおかげもあってかさっきまで質問していた人たちも同調するみたいに頷いていた
「それでどうしても気にナルこととはなんデスか?」
真凛のほうを見てユゥさんは言った
不思議そうにしているその横顔はとても綺麗でまるで絵本に出てくる妖精のような表情だ
きっとあんな風にじっと見つめられたらまともに話すことなんてムリだろうな…
でも真凛は見惚れることも臆することもなくまっすぐに聞いた
「どうして蓬と結婚するなんて言い出したの?」
それはこの場にいる私を含めた全員が疑問に思っていたことだ
あまりにもストレートなその質問にユゥさんの答えはというと…
「さっきもお話しましたがメイリンと蓬は幼なじみなんです そして小さいころに結婚する約束を交わしていマス」
「でも蓬は覚えてなかったんでしょ?」
すかさず真凛の指摘が入るけど彼女はそんなこと気にも止めない様子で言った
「ソレはちょっとした事故みたいなものです 何年も前のコトですし、メイリンもまだ日本語が上手じゃなかったので思い出せなくてもしかたアリマセン」
「ってことは日本語が得意じゃない幼なじみが蓬にはいたの?」
ここにきてまさかの私への質問…
普段と違って真凛から謎の圧がすごい…
そんな幼なじみいないよって否定してほしそうな目で見つめてきてる(気がする)
けどそう言われえると本当に一つだけ心当たりがあった
「あ、その… 何年か前に迷子になった外国の女の子とあった…気がしなくも…ない」
その一言で文字通り明暗が分かれた
ユゥさんの表情は明るくなり真凛の目からは正気が消えていく……
そしてその直後になった予鈴でこの修羅場は幕を閉じたのだった
昼休みになって私の予想通りユゥさんはあちこちのグループからごはんに誘われていた
対する私はというと… 屋上に連行されていた……
「あ、あの… 屋上って立ち入り禁止では?」
「大丈夫! 私のツテで天文部の先輩から借りてきたから」
そう言って佐藤さんは私の左腕を掴んだ
「でも… バレたらマズんじゃ?」
「そしたらアタシたちが勝手に連れてきたことにするから心配しなくていーよー」
空いた右腕は宇佐美さんが掴んで離してくれない…
「ってことだから 蓬には悪いけど色々聞かせてもらおうか…」
「っ……」
目の前には瞳から光が消えた真凛と心配そうに見つめる綾乃が立っている…
私は今日が自分の命日になることを悟った…
「まさか真凛が元気なかった理由が浮気とはねー」
「かわいい顔して案外ヤるじゃん…」
ゴミを見るような目で宇佐美さんと佐藤さんが呟く
「違うよ!? ユゥさんと会うのは今日が初めてだよ!?」
「でも昔、会ったことがあるかもなんだよね?」
「うっ… それは…」
まさかの綾乃からの攻撃で大ダメージを喰らう…
この時点で蚊帳ノのライフはゼロである
「でもちょっと待ってよ そもそも私と真凛はそういう関係じゃないし…」
「真凛とは遊びだったと?」
耳元で佐藤さんが囁く
「いや違うから!? バンドメンバーってことであって…」
「つまりは運命共同体… そんな真凛を裏切るなんて…」
佐藤さんの声に含まれる軽蔑の感情が次第に多くなる
ヤバいこのままおほんとにここから突き落とされる…
まだワン〇ースとコ〇ンの最終回を見ないまま死ぬわけにはいかない…
オタクとしての生存本能が私の思考を急激に成長させる(気がする)(二回目)
「あの、でも昔あった子と同一人物とは限らないよね? そもそもユゥさんとはまるで正反対な子だったし それに結婚の約束もされた覚えないし…」
そう、私があの時会った子はユゥさんみたいな転校初日に求婚を迫るようなとんでも陽キャじゃなかった
どちらかというと私と同じタイプの陰キャだった
だから彼女とユゥさんは別人、そう考えるのが妥当だと思う
「まあ、蓬がそこまで言うなら…」
そう言って真凛は納得してくれたみたいだった
「アタシ、先に戻るわ…」
そう言って真凛は屋上を後にした
綾乃も真凛を気にかけた様子で屋上をあとにする…
そして残された私たちはというと
「あれ、絶対納得してなかったよね?」
「だねー 蓬ちゃんを困らせたくないからしぶしぶって感じか…」
「…やっぱり」
さすがの私にも真凛が気を使ってこれ以上、聞かなかったのはわかった
ただ分からないのはどうして真凛が私とユゥさんはの関係を気にしてるかで…
「あ、あの さっきは言えなかったけど朝はありがとうございました… その助けてくれて……」
このタイミングで言うのもどうかと思ったけどここを逃すと言えない気がしたから二人にお礼を言った
朝、真凛と一緒に質問攻めに逢っていた私を助けてくれたことについて
「あー それについてはいいってことよ! もともと真凛に頼まれただけだし」
「そうなの?」
「そうそう なんか急にアタシらのとこに来てさー 蓬助けるから適当に話合わせてって
まあ無茶ぶりだよねー」
二人との会話も疎かになってるって聞いてたから意外だった
真凛がそんな風に動いてくれたたなんて…
「真凛に助けられてばっかだな…」
ふと呟くと宇佐美さんは私の背中を叩いた
「いたっ」
「そーゆーとこだよー」
「なにが!?」
宇佐美さんは分かってないと言わんばかりにジト目で見つめてくる
「助けられてるのはよもちだけじゃないってコト… まあわかんないだろうけどさ」
「……」
宇佐美さんが言ったことはいまいちピントこなかったけど聞いても教えてくれなそうだった
「午後の授業、始まりそうだからもどろっか」
「だねー よもちもいくよー」
「あ、はい…」
そんなやり取りをして屋上を後にしたはずだった…




