第三章 コミュ障陰キャぼっちでもライブはできますか? 第三十二節
止まったままの砂時計が再び流れ始めるように…
晴天の霹靂
いかにも厨二病が好きそうなこのワード(中学の頃、私の人生で使ってみたいワード七位だった)それを素で使うことになるなんて思いもしなかった
けれどその少女はまさしく雷鳴のような衝撃とともに現れたのだ
「結婚式はいつにしますか? 洋風? ワフウ? 上海でもいいですヨ!」
手を握ったまま目を輝かせて少女は言った
当然、私を含めたその場の全員があっけに取れれて硬直する…
「あ、あの…」
「そうだ! ご両親へのアイサツがまだでしたネ学校が終わったらすぐに行かないと」
「あの… その… すごく失礼なんですが あなたは一体…」
普段なら話しかけてきた相手のことが思い出せなくてもなんとなく分かってる感じでやり過ごすんだけど…
さすがに結婚しようなんて言われるとそうもいかなかった
「メイリンのこと… 覚えてナイんですか?」
「ごめんなさい… その… よく思い出せなくて」
声のトーンが落ちてしょんぼりとした彼女には申し訳ないけど本当に分からなかった
そもそもコミュ症陰キャぼっちな私に上海に住む知り合いなんていないし高校生になってからしかスマホを持ってない私にSNS上でも繋がりもなかった
「思い出せない… もしかして記憶喪失デスか!?」
「違うから!? いやそうじゃなくて… 本当にあなたのことは記憶になくて…」
覚えていないを多少オブラートに包んだつもりが思い出せないから記憶喪失に繋げるなんて… 日本語って難しい(彼女の想像力が豊かなだけかもだけど…)
「そんなハズありまセン 蓬と私は幼なじみなんですから!」
「へ?」
私に幼なじみ… いやナイナイ そんなアニメみたいな展開ありえないでしょ
だって私は生まれた時からコミュ症陰キャぼっちなわけで…
友達だって高校に入るまでまともにいなかったのに…
「……分かりました メイリンは蓬に会うために日本に来ました でも蓬がメイリンのこと覚えてない… 忘れてるなら…」
まさか上海に帰るとか? そうなったらさすがにマズい…
理由がなんであれせっかく留学したのにこんなことで帰るなんて…
「メイリンのこと思い出させます!」
「あ、そっち!?」
嬉しいような厄介事増えたような…
そして珍しくツッコんでしまった…
「あ、えっと なんかよくわかんないけどとりあえずユゥさんの席はそこだから」
皮肉にも先生が指した席は私の隣だった…
朝のHRが終わっった直後、ユゥさんの周りには人だかりができた
転校生が来たんだからなんとなく予想はできていたしまあそうなるよね…って感じで眺めていたんだけど…
「ユゥさんって中国人なの?」
「今はどこに住んでるの?」
「趣味とかある? 入る部活決めた?」
そんないたって普通な質問が飛び交っている
けどそれはごく一部の話でそれ以外のほとんどはというと…
「蚊帳ノさんと結婚するってマジ?」
「蚊帳ノさんとはどこで知り合ったの?」
「蚊帳ノさんの好きなところは?」
そんな彼女個人よりも私との関係性についての質問がほとんどだった
ちなみにあまりの人だかりに彼女に近づけない人は私のほうに質問しているありさまだ
「蚊帳ノさんは本当に覚えてないの?」
「あ、いや… はい…」
「でも幼なじみだったんでしょ?」
「いや… その…」
クラスの女子グループに囲まれて質問攻めにあった
もちろんまともな回答はできていない…
そもそもこの状況というかどうして彼女が私に結婚を迫ったのか?とか私が忘れてるだけで本当に幼なじみだったのか?とか聞きたいことは色々あった
でもユゥさんに直接聞くなんてムリだったしみんなから質問されるこの状況も耐えられなかった
授業が始まるまであと十分…
適当に理由をつけてトイレにでも籠ろうかな…
いや、陽キャグループなトイレまで付いてきそうだしそうなったら逃げられなくなる
だったらもういっそ保健室に…
でもそしたらユゥさんが保健室まで来そうな気もするし…
学校内での心のオアシスが二つも使えなくなってまさしく万事休すか…
小心者の私には仮病で保健室に行くのが精一杯でこのまま授業をサボって勝手に帰るなんてできなかった
このままだと昼休みも放課後も追及されそうだしどうしたらいいんだろう…
そんなことを菅家ながら一人で悩んでいたらふと声がかかった
「あのさみんな二人とも一気に質問されて困ってるみたいだから一回落ち着つかない?」
その一言で教室中の視線はそれを言った人物…
真凛のもとに集中したのだった




