第三章 コミュ障陰キャぼっちでもライブはできますか? 第二十四節
ボクの願いを知った時
君はそれでも友達でいてくれるのかな…
その答えを知る勇気が今のボクにはまだなくて
そっと見えないフリをした…
「なんかいいかんじに纏まったっぽいね~」
そう言って雛鳥さんがやってきた
「雛鳥さん…」
「…そういえばお前は誰なんだ?」
不思議そうな顔で大倉くんは言った
「同じクラスなのにひどいな~ 雛鳥だよ 雛鳥詩草」
「…」
いまいちピンとこないらしい
雛鳥さんてかわいいし陽キャだし同じクラスなら知っってそうだけど
「まあ別にいいんだけどね ボクもあんまり目立つほうじゃないし」
「そうなの!?」
「ん? そうだよ~ 男子とはあんまり話さないしねー 大倉君のほうはそもそも誰とも話してないけど」
それはなんとなく分かる…
でも雛鳥さんがクラスだと目立たないほうだなんて驚きだ
でも陽キャの目立たないって陰キャの目立たないと意味が違うからな…
「それでライブに出れるくらいにはなったのか?」
「…たぶん」
大倉君からの質問に思わず身構える
蓮見先輩から教えてもらったパワーコードはちゃんと練習してる
それに曲もなんとか弾けるようになってきた
大倉君の求めるレベルかどうかは別としてだけど…
「そうか… ならいい」
「でも大倉君に納得してもらえるようなものじゃないよ…たぶん」
「別に たかだか二週間足らずでどうにかなるものじゃないだろ それより…」
「それより?」
大倉君はその先の言葉を教えてはくれなかった
「なんだかいじわるだねー」
「ここで言う必要がないと思っただけだ」
大倉くに対する雛鳥さんのスタンスは変わらないらしい
真凛のことをからかう宇佐美さんや佐藤さんみたいな感じだ
「それよりなんでお前まで蚊帳ノについて来たんだ?」
「蓬ちゃんが心配だったからねー それに友達だし」
「友達いたのか?」
まるで私に友達がいなくて当然みたいな反応をされた
ちょっとダメージが入る
「いるよ!? 綾乃と真凛もそうだし…」
「…そうか」
どこか納得がいかないような不思議でしかた無いようなそんか顔をされる
「デリカシーがないなー モテないよー」
「別にモテる必要はないが?」
「うへぇー そういうことじゃなんだけどな」
雛鳥さんは呆れた様子だった
大倉くんは気にしてないみたいだったけど
「ひとまず今日はもう帰れ」
「あ、えと…」
「もう六時だ さすがにこれ以上、この辺りをうろつくのはやめたほうがいい」
一瞬、出ていけって意味かと思って固まったけどどうやら時間を気にしてくれてたらしい
たしかに時間はもう六時近い、ここに来る途中の出来事を考えても長居しないほうが良誘うだ
「そうだね ボクたちは帰るけど大倉君は?」
「俺はまだここに残る」
「そっか んじゃ蓬ちゃん、帰ろっか?」
「あ、うん」
雛鳥さんに促されて荷物をまとめた それから大倉くんのほうを振り返って
「大倉くん またね」
「ああ、次はライブで」
そうして私たちは劇場を後にした
「今日は色々とありがとう」
「ん? ボクは何にもしてないよ」
帰り際、雛鳥さんに今日のお礼を言ったらそう言われた
「でも、私一人だとここまで来れなかったから だからありがとう…」
「んまあ 少しでも役に立てたならよかったかな それにボクにとってもいいことあったしね」
「いいこと?」
どちらかというと不良に絡まれたり大倉くんと追いかけっこになったり散々な目に巻き込んだ気がするけど…
「こっちのはなし …悪いことばっかじゃないってことかな」
それから雛鳥さんは反対側のホームに向って歩き出した
それから少し振り返って
「もしまたなにかあったらまた頼ってね ボクにできることら力になるからさ」
「うん…」
それから歩き出した彼女の姿はやがて見えなくなったのだった
「友達か……」
蚊帳ノと改札前で別れたあと彼女はそう呟いた
友達なんてもう何年も口にしてない言葉だ
彼女のことをそう呼ぶのだって自分のなかで罪悪感があったけど
同じ傷を分け合った仲…
きっとそう言ったほうが正しいんだろうなと思った
もっとも本人の前でそんなこと言えないけど
蚊帳ノに力を貸すつもりでここまで来たけど思わぬアクシデントに見舞われた
完全に誤算だった
しかしそれ以上の誤算は蚊帳ノが〇〇〇だったこと
本人に自覚はないようだけどあの一瞬で確信した
問題はあの○○、もしかしたら彼女は○○○○かもしれない
本来ならとんだ妄言だとバカにされるような話だけどバカにできないぐらいの信憑性があった
だがそれ故に…
「これから先、あの子の周りには注意しないと…」
一瞬、刹那にも満たない間で嫌な気配がした
彼女から感じたそれとはまるで別物の気配…
そしてそれはあの日感じたものと同じもので…
雛鳥詩草は走り出していた あの劇場の方角へ
「うっ なんだろう一瞬、寒気がしたけど… 風邪かな?ライブも近いし気を付けないと」
そして同じ気配をかすかにだが蚊帳ノも感じていたのだった




