第三章 コミュ障陰キャぼっちでもライブはできますか? 第二十三節
虹の橋、待ち侘びた快晴
迷いこんだ鳥は再び羽ばたく
あの魔女の想いを胸に…
迷い子は担い手に変わる
差し伸ばしたその手を大倉くんは振り払った
そしてさっきまで見つめていた視線を地面に落として俯いたまま言った
「俺じゃなくてもいいだろ 俺じゃダメなんだよ…」
「どうして?」
大倉くんは吐き出すように、苦しそうに語った
「今まで何度もそうだった 自分の理想を押し付けて思い通りにいかないことに怒って そうやっていくつもバンドをダメにしてきた」
「……でも これから先、上手くいくかもしれないよ」
「今回は違うって 次はもっと上手くやろうとしてもダメだった!」
私の言葉に重ねるようにして大倉くんは言う
「ダメなんだよ… 俺が他人とバンドを組むなんて…」
「……」
「誰かを傷つけることでしか音楽ができない俺にバンドをやる資格なんてないんだよ! お前らとやり直したってどうせ上手く行かない また傷つけてそしたら今度こそ何もかも失うことになる…」
わなわなと言葉にするその姿にそれまでの威圧感はなくて…
まるで迷子になった子どもみたいだった
「雅さんの居場所を… あの人が守ろうとしたものを守るんじゃなかったの?」
「……お前になにが分かるんだよ」
「何も分からないよ 雅さんのことも大倉くんの痛みも…」
私は雅さんに会ったことがないからどうして音楽部を守りたかったのか分からい
雅さんを失ってバンドも上手くいかなくて大倉くんの抱いてる痛みや辛さも分からない
知ろうとすることはできても分かったふりはしたくない
だから
「君にしかできないんだよ 雅さんを雅さんの想いを知ってる君にしか…」
「……でも」
「蓮見先輩も雅さんの想いを守ろうとしてた 大倉くんが先輩たちのことをどう思ってるのか知らない けど私は先輩たちが雅さんの死に関わってるとは思わない」
少なくとも蓮見先輩が言っていた言葉は本当だと思う
けどその言葉を知らない大倉くんには先輩たちのことが信じられないだろう
私がこの場でなにを言っても伝わらないし伝えられない
「俺はあいつらのことを信用できない…」
「そうだね… それは否定しないよ …でも だったら大倉くんのやり方でやるしかないんじゃないかな」
「俺のやりかた……」
先輩たちならきっと音楽部を守ることはできるだろう…でも
「次のライブで私たちが成功させないと音楽部は守れない そしてそれは私たちにしかできないことなんだよ」
「っ…」
落としていた視線が私のほうに向いた
その瞳が私の目と重なり合う
いつもの癖で視線を逸らしそうになるけどなんとか耐えた
「私が言いたかったことの二つ目がそれ 今更、新しくベースをやってくれる人なんて見つからないしこのままだとライブもできない… そしたら音楽部は廃部になる…」
「…」
「だから このライブが終わるまでは協力してほしい 雅さんの想いを守りたいなら…」
正直、この手は使いたくなかった
雅さんの想いを人質にして脅すみたいなやり方だから
そこまでして大倉くんとバンドがしたいかと言われると…分からない
でも
俯いて小さくなったその背中を見て
まるでひとりぼっちで迷子になった子どもみたいなその姿を見て
私は…多少強引でも彼を放っておけなくなったんだ
「……きっとライブが終わったらバンドを抜けるぞ」
「いいよ それでも そしたらまた誘うから」
そうなったら真凛がしてくれたみたいに手を伸ばす
「また傷つけて、弱音を吐いてお前の想いを無碍にする」
「それでも何度だって誘うよ」
その時は綾乃がしてくれたように背中を押す
「俺で… 俺なんかでいいのか?」
「大倉くんだからここまでしたんだよ」
「…俺も 俺も…お前達とバンドがしたい」
その言葉を聞けて私は少しだけ泣きそうになった




