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第三章 コミュ障陰キャぼっちでもライブはできますか? 第二十二節

そして祈りは言葉に 言葉は音に


音は誓いとなってカタチとなる


止まない雨すら虹に変えよう


君がいてキミがいてくれたから


今の私にはなんだってできるんだ


「雛鳥さん!」

転んだせいであちこち痛かったけどなんとか立ち上がって雛鳥さんと大倉くんのいるほうまで歩く


「あ、蓬ちゃん大丈夫?」

「私は大丈夫だけど… 大倉くんは?」

「問題ないよ ここに来る途中で見つけた暗幕を被せただけだから」

そう言われて大倉くんのほうを見るとたしかに動けなくなっていた

しかも暗幕の四隅に石みたいなものが括りつけられてて簡易的な捕獲ネットになってた

「すごいね… あの短時間で」

「まあたまたまだよ それにだいぶ急いで作ったからだいぶ埃っぽいし」

たしかに大倉くんが抜け出そうと動くたびにものすごく埃が舞ってた


「とりあえず出してあげない?」

「蓬ちゃんがいいならいいけど また逃げられない?」

「ううっ でもこのままだと話せないし…」

「それもそうだね」

雛鳥さんはあっさりと暗幕を外した

「っごほ ごほっ おいこら何のつもりだ!?」

「あ、その…」

「君が逃げるからいけないんだよー」

大倉くんが睨み、私がそれに怯えていると雛鳥さんが間に入ってくれた

「それで どうして逃げたのかな~?」

「蚊帳ノが居たからだ」

「男子中学生かなにかかな?」

「あ!? 殺すぞ」

本気で圧を掛けてくる大倉くんが怖いけどそれに怯まず煽り続ける雛鳥さんもすごいな…


それから大倉くんは観念したようにため息を吐いてから言った

「まったく 昨日、話は終わったはずだ もう話すこともないだろ」

「昨日はその… 大倉くんが一方的に話しただけで 私はまだ…なにも言ってない」

なんとか言いたいことを言葉にする

それで伝わったとは思えないけど… それでも何も言わないよりマシなはずで…

「分かってないみたいだからもう一度だけ言うぞ 俺はお前らのバンドを利用しようとした、だが利用するほどの価値がなかったから勝手に切り捨てた… ここまで言えば理解できるか?」

「ううっ」

昨日聞いた言葉を更に分かりやすくして聞かされた

頭では理解でいるけど理解わかりたくない言葉だった


「それに俺がいないほうがお前たちにとってもメリットがあるだろ ダメだしもされない、空気も悪くならない、楽しくやれるんだ 俺なんていないほうが…」


「…でも 私はっ…」


「あの短期間でなにが分かるんだよ! たった数日、一緒にバンドしただけだろ その間、俺がお前らになにをした? 偉そうに指摘して、できてないことに文句を言って、場の空気を悪くして… 挙句、バンドに入ったのだってアイツを殺したやつを探るためで! 俺をバンドに入れる価値があると思うのか?」


たぶんそれは大倉くんがずっと抱えてたものだ

私たちのバンドに対してだけじゃない、きっと今まで関わってその度に離れていったバンドにも思っていたこと…

不器用だけど必死…そう遠くない過去で竹本先輩が大倉くんのことをそう言ってたのを思い出した


「あのね… 私が今日、君に言いたかったことは二つあるんだ」


「……」


「私ね 中学の頃、いじめられてたの…」


「…」


大倉くんはだったままだ

それは当然だろう 誰だってこんな状況で身の上話を…自分語りをされたってお涙頂戴の泣き落としに思うだろう


「だから私は人に嫌われるのが怖くて… それでもどこか自分でももっと目立ちたいとか何かの中心に立ちたいとかそんな風に思ってだ…」


目立つのは嫌だ… でもそれは誰かに疎まれたり失敗して嗤われるのが怖かっただけ

本当はもっと目立ちたかった 陽キャになりたかった 

でもなれなかった…


「高校に入って音楽部を知って小さいころに夢見たギターを思い出して… 綾乃とか真凛のおかげで部活に入って… バンドも組めた」


二人がいたからここに立っている


「でもそれから練習を始めて大倉くんに練習してないなんて言われて… ショックだった」


その言葉は忘れない

周りから見たら全然できてなったかもしれない 嫌、きっとそうだったんだ

努力もまるで足りてなかった

でも…


「私だって必死だった! 毎日、音楽室に行ってみんなが帰ったあとも残って練習してたそれなのに遅れてやってくる君にどうしてそんなこと言われるんだろうって思った!」


人の悪口が言えない…

雛鳥さんは私のことをそう言ってくれたけど違った

だってこうして面と向かって正面から不満をぶつけている… 怒っている

自分でも不思議だったけど言葉は止まらなかった


「大倉くんだってなにも分かってない! 私のことも他のみんなのことも 勝手に自分のせいにして、自分が傷つきたくないからバンドから逃げてるだけでしょ!」


言葉を口にする度に胸の置くが痛い

ああ、きっとこれは自分に対しても言ってる言葉なんだ

そして私が大倉くんに抱くこの想いはきっと… 

同族嫌悪…そう呼ばれる感情だ


「だから… だからちゃんと見てよ 私のことを…」


「……」


大倉くんはただ黙って私を見つめた


「練習がどうとか楽器が弾けてるとかじゃなくてさ ちゃんとンバンドメンバーとして」


言葉は刃物だ


私たちは言葉という包丁を無意識のうちに使っている


ちゃんと使い方が分かれば便利な反面、一歩間違えれば誰かを傷つけてしまう


でも傷つけることを恐れてどこかに閉まっていると結局なにもできないままだ


だから私たちは小さな失敗を何度も積み重ねて正しい使い方を知ろうとする


これは持論だけど私みたいなコミュ障な人は臆病だから失敗ができないだけだと思う


自分の心の奥に仕舞いこんでいるだけだなんだ


「私はもう 自分が傷つくことを恐がらないって決めたから」


「……」


「大倉くんのこと、ちゃんとバンドメンバーとして見るし綾乃も真凛も天城くんだってそうする ちゃんと嫌なことがあったら相手が傷つくとしてもちゃんと言葉にする それで喧嘩になったりすれ違ったらちゃんと話し合ってそれで謝る…」


「…そんなんで そんなことでバンドができると思うのか?」


初めて大倉くんが言葉にした


「…思う」


「甘いなそんな考えだとまた今回みたいになるぞ」


大倉くんの刃が刺さる それでも怯まなかった


だって


「…私は知ってる」


綾乃が真凛が二人が私のことを誘って導いてくれた

こんな根倉で地味で引っ込み思案で不器用な私のことを…

急かさないで無理強いもしないで信じてくれた

だから 二人がくれた一歩踏み出す勇気を言葉にする


「こんな…」


「こんな、コミュ障で陰キャでぼっちだった私にだってバンドができることを!」


突然出した大冝に大倉くんが驚く


そして畳みかけるように続けた


「こんな私にだってバンドはできるんだよ! なら大倉くんにだって… 大倉くんと一緒でもバンドはできると思う! だから改めて言うよ…」


「私たちのバンドに…入って下さい」


頭を下げるそして手を伸ばす… その先には大倉くんがいた

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