第三章 コミュ障陰キャぼっちでもライブはできますか? 第二十一節
思いはかたちに かたちは願いに
願いは祈りになって降り積もる
その祈りを叶えるために…私は…
それからのことはよく覚えていない
意識はあったしなんといなく覚えてもいるけど思い出したくない
(なにかいつもみたいに厨二病みたいなことをしてたと思う)
私たちを襲った三人が慌てた様子で逃げて行ったのは思い出せる
私の手にカッターがあることから察するにまたいつもの悪い癖が出たんだと思う
慌てて手に持ったそれをしまって雛鳥さんのほうに歩いて行った
「雛鳥さん… 助けてくれてありがとう それとごめん…」
「えっ ああ、謝らなくて大丈夫だよ それよりボクのほうこそごめんね 油断してたせいで蓬ちゃん…」
そう言って心配そうに私の腕を見つめる
「えっと… あっ」
今になって自分がケガしてたことに気がついた
自覚しとのと同時になんだか痛みまで強くなってきて…
「とりあえず応急処置だけでもするね 目的地までもう少しだからそこで休もっか」
「あ、はい…」
それから少し移動して昨日とおなじ劇場の前に着いた
「先にケガ見せて」
「あ、うん」
「…そこまで深くはないか よかった」
それから雛鳥さんは鞄からペットボトルを取り出した
「この辺の水道水だと心配だからね 口はつけてないから安心して」
「うん…」
「ごめんね ちょっと染みるかも」
そう言ってペットボトルの水を少しずつ流しながら私の傷口を洗った
鈍い痛みに目を瞑りながらもなんとか耐えた
「うん 大丈夫かな… もうちょっと我慢してね」
それからタオルに消毒液をしみこませて傷口にあてる
「っ!」
さっきより強い痛みに声が出そうになる… というか出てた
「痛いよねー ごめんね」
それから消毒を終えて包帯を巻いてくれたのだった
「これで大丈夫かな」
「ありがとう… でもすごいね」
消毒の痛みで若干、涙目になりつつも雛鳥さんに言った
「まあ保健委員だからねー これぐらいは用意してるよ」
すごいな保健委員…
なんて関心してると雛鳥さんはこちらを見つめた
「まあ ほんとにすごいのは蓬ちゃんなんだけどね…」
それから私たちは劇場の中に入って大倉くんを探した
けれどどこにも見つからなかった
「どうしていなんだろう…」
「もしかすると今日はまだ来てないのかもね」
雛鳥さんはスマホで時間を確認しながら呟いた
「他に行きそうなところとか分かる?」
「あ、えと… 分かんないです…ごめん」
「そっかー まあそうだよねー うーん どうしたものか…」
二人で頭を抱えていたらふと扉が開いた そして
「あ!」
「あ!?」
三人の声が共鳴した
目の前にはさっきまで探していた人物… 大倉龍弥が立っていた
「なんでお前が… てっ…」
そう呟いた途端に大倉君は外に向って走り出した
「追いかけよう!」
そう言って雛鳥さんが走りだした
私も急いで二人の跡を追った、けどさすがに追いつくことはできそうにない
このまま雛鳥さんにまかせっきりにするわけにもいかないしどのみちあの速さとこの辺りの土地勘なら大倉くんに捲かれる可能性が高い
だから私はあえて反対のほうに走り出すそして
「見つけたっ!」
さっきまでいた『A』と書かれた扉の前で大倉くんを見つけた
「……」
「荷物… 置きっぱなしだったからさすがに戻って来るかなって思って…」
「……」
「あの… 私っ!」
大倉くんは再び走り出した
でも今回はさっきと違って私のほうにめがけて走って来る
思わず避けようとしたら足を滑らせて転んだ
冷たい地面にお尻をついて動転していると大倉くんの姿は長い廊下の向こうに消える
あと一歩のところだったのに…
そう思った瞬間だった
「蓬ちゃんナイス!」
廊下の先で待ち構えていた雛鳥さんが大倉くんに向けて暗幕を投げつけた
正面からそれをくらった大倉くんは後ろに倒れてついに私たちに捕まったのだった




