第三章 コミュ障陰キャぼっちでもライブはできますか? 第七節
誰かがじゃない
他の誰のものでもない自分の言葉で伝えるんだ
翌日、放課後の音楽室に集まったのは蚊帳ノを含めた三人だった
「あ、えと その急に呼び出してごめん…」
昨日の放課後、蓮見先輩に相談に乗ってもらってその調子でつい二人を呼び出したけど…
ヤバい
いざ話すとなったら頭の中が真っ白になった
{ううん 蓬ちゃんから呼ばれるなんてちょっとびっくりしたけど大丈夫だよ」
「そうそう まあなんとなく話したいことは分かるんだけどさ」
二人…綾乃と真凛はそう言言いながら近くの椅子に座った
「あ、うん… その話したいことっていうのはバンドのことで…」
「これからどうするか…でしょ?」
「…うん」
真凛が私の言い切れなかった言葉を言い当てて難しい顔をした
「アタシとしてはライブには出ないとだと思う」
「私もそうかな 生徒会との件は先輩たちだけの問題じゃないし」
真凛の返答に綾乃も肯定する
「私もライブは出たいと思ってる…」
「問題はメンバーじゃない? 廻兎はともかくとして大倉をどうするか」
「大倉くんとはバンドを組まないってこと…かな?」
真凛の答えに恐る恐る聞き返した
真凛はすぐには返事をしなくて、少しだけ綾乃ほうを見てから口を開いた
「大倉と関りがある綾乃には悪いんだけど、アタシはアイツとはバンドができないって思ってる 理由は…わかるよね…」
「まあうん それより気を遣わせてごめん 別に龍弥のことを悪く言われても気にならないし真凛が言ってることは事実だから気にしないで」
綾乃は珍しいく俯いた様子の真凛にそう言った
それから私のほうを見て話す
「私も龍弥とバンドを続けるかどうかはよく考えたほうが良いと思ってる 蓬ちゃんも龍弥から色々言われて嫌だっただろうしこのまま一緒に続けてお互いに良くないと思う」
「あ、えと…」
はっきりと二人からこれ以上、大倉くんと組むのは難しいと言われて言葉に詰まった
わかってる二人の意見がそうだろうとは予想していた
でも私にも竹本先輩や蓮見先輩と話してみて思ったことがある
それを二人に伝えるためにここに来たんだ
それがもし二人の意見と真っ向から対立することになったとしても
ちゃんと言葉に捨て伝えなきゃいけない
「私は…大倉くんと…もう少しだけ バンドをしてみたい…」
沈黙が流れた
二人の表情を見るのが怖い…
「どうして?」
「あ、えと…」
「どうして蓬はそう思ったの?」
真凛が私を見つめる
表情は見れなかった 口調や声色は淡々としてる
話すのが怖かった 否定されるのが怖かった 嫌われたくなかった
でもそうやって逃げ続けたままじゃ変われない
ちゃんと答えないと進めない
「大倉くんはたぶん、必死なんだと思って… 音楽とか 部活とか… 居場所とか 大切なものを守るために」
「でもだからって誰かを傷つけていいわけじゃない」
「あっ」
真凛の表情はどこか怒っているみたいででもなんだか泣きそうな顔をしてた
「私は 蓬に傷ついてほしくない バンドはもっと楽しくやってほしいって思ってる…
上手くいかないこともあるかもしれないよ…でも」
「…うん それは私もそうだよ」
真凛の顔を見て言った
私だってバンドをするなら楽しいほうがいいと思ってる
たった数日のできごとでしかないけどあんな風に喧嘩して、良くない空気間の中でバンドはしたくない…
でも私は知ってしまった
蓮見先輩の想いを…雅さんのために音楽部を残したいって気持ちを
私は蓮見先輩のその想いに応えたい
もし、大倉くんが同じように雅さんのことを思ってるなら私は彼と何処かで分かり合えるかもしれない
「だからこれは私のわがまま… 私はこの五人でバンドすることをまだ諦めたくない」
「蓬ちゃん…」
「たった数日の関係でも私たちがバンドをすることにはなにか意味があると思ってる まだちゃんとバンドになったわけじゃないでも… せめて最初のライブだけでもちゃんとこの五人でやりたい」
昨日からずっと胸の奥で霧のように立ち込めていた想いを口にした
二人になんて言われるか、まるで検討もつかなくて怖い
けどこれはきっと大事なことだ
二人が私のことを友達と思ってくれているように
私が二人と友達でいられるように
自分の想いを言葉にした
「わかった…蓬がそこまで言うならこのライブが終わるまでは… アイツとバンドする」
僅かな沈黙の後で真凛が言った
「あ、えと いいの?」
「アタシだって色々思うことはあるけどさでも…蓬がそうしたいならアタシもそうする」
「あ、その 自分から言っておいてだけどもし真凛が無理してるなら…」
「別に無理なんかしてないよ それに今まで蓬はアタシのしたいことに合わせてくれたでしょ? だから今度はアタシの番! 蓬がしたいことをアタシが応援する…そうしたいの!」
真凛は私の手を握ってそう言った
その顔はどこか嬉しそうで…握られた手は温かかった
「綾乃はどう?」
「私も蓬ちゃんに賛成かな とりあえず今回のライブだけでもちゃんと五人で出たい」
綾乃も異論はないようだった
「二人ともありがとう… それとこの間言われたことなんだけど…」
「バンドリーダーのこと?」
私が話すより早く綾乃が言い当てた
「うん… えと その もし二人がいいなら、やってみようと思って…ます」
二度目の告白
やっぱり自分の気持ちを口にするのはかなり勇気がいる
心音が響いてうるさい
口に出す瞬間から今まで目が開けられない
俯いたまま二人の返事を待つ
「え、マジで!?」
最初にリアクションがあったのは真凛だった
肯定か否定かどっちの反応だこれ!?
「恋先輩から話聞いてバンドリーダーなら蓬も意見言いやすいかと思って綾乃に聞いてもらったんだけどさ…」
「え、あ そうだったの!?」
まさかの蓮見先輩からの入れ知恵だった
「実は別にバンドの中でリーダー決めるつもりはなかったんだよね…」
「へ?」




