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第二章 コミュ障陰キャぼっちでもバンドは組めますか? 第二十二節

今まで騙していた、偽っていたこの思いは醜くて…

雛鳥さんに手を引かれて歩く

目的地は真凛たちが登山をしている山の麓、そこにある神社だった

この神社は地元でも有名な観光名所の一つでこの辺りでは数少ない、県外や海外からも観光客の訪れる場所だ

とはいえ、私も家族と一緒に頻繁に訪れる所なのであまり目新しさは感じなかった


「いやー 鳥居がおっきいね~」

「そう…ですね…」

雛鳥さんは鳥居を見上げながらそう言ってきた

かという私にはこれといった感想もなくただ同調することしかできない…

「なんかまだ硬いねー 敬語じゃなくていいんだよ」

「あ、はい… でも慣れなくて…」

昔からそうだ

育ちが良いなんて言われるのはただのお世辞で裏返せばかわいげがないのだ

いつも周りの目を気にしてて当たり障りのない話し方しかしない

それもいい加減治さなければと思いながらも十五年かけてついた癖はそう簡単には治らなかった

「ま、無理にとは言わないけどさ 一応、この遠足自体が同級生と親睦を深めて距離を縮めようって趣旨だからねー もうちょっと肩の力抜いて欲しいんだけどなー」

「うっ すみません…」


正論である

学校行事である以上、それには明確な学びと目的があるわけで…

無駄に真面目な私にとってそれを自分から無視するなんてことは耐えられなかった

「まあまあ そんな気にしなくてもいいと思うけどね アニメとかでも敬語キャラはいっぱいいるしさ」

「キャラ作りではないんですが… そんなアニメぽかったですか?」

アニメキャラの設定にたとえられて一瞬、ドキッとした

もしかして何かのアニメキャラを真似してるイタイ子に見えたのだろうか…

もしそうだったら隠れオタクとしてまだ誇りがあるうちに切腹しないといけない

「いや~例えだよ 例え みんな違ってみんな良い的な」

「あ、そういいう…」

切腹は回避できた

さすがに背中の傷は武士の恥、もし万が一にでもオタバレするようなことがあれば腹を切って詫びなければならない…


「ところで蓬ちゃんはアニメとか好きなの?」

「へ?」

いきなり背後から切り付けられた!?

まさかの質問に驚愕する…


さすがにここまでの話の流れでその質問がくるとは思ってなかった

「あ、えと そこまで観ない… です…」

「そうなんだー じゃあなにか好きなことはある?」

ヤバい、上手くかわしたつもりが次々に言葉のボディーブローを打ち込まれる

「一応、読書とか…」

「読書かー いいねー どんなの読むの? ラノベ?」

途中まで良い感じなのに最後の一言でカウンターをくらう

ラノベって読書に入るの!?

私は読書の一部だと思ってるけど中学の頃、文芸部の先輩は『あんな俗物、文学じゃない』とかいってたし…

てっきり世間的にはそういう認識なのかと思ってた

「まあ 多少はラノベも…読む…かな」(ラノベが8割)

「ふへ~ そ~なんだ~ 意外とオタクだね~」

まさかの罠!? やっぱりラノベってオタクのイメージしかない!?

「あ、えと…」

「ごめん ごめん 別に気にしなくていいよ~ ボクの勝手なイメージだから」

「あ、はい…」

なんとなく蚊帳ノ蓬=オタクとしてみられてそうだけど、やってしまったことはしかたがない… これ以上、ハードなオタクだと思われないようにしないと…

そう話しながら歩気ながら私たちは神社の中を散策した

雛鳥さんは初めて来たみたいで行く先々で感動しているみたいだった…

でもどことなく感情、みたいなものが読めなくて

彼女が本心ではどう思っているのかが分からなかった


「いやー 結構、歩いたねー」

「あ、はい…」

私たちはベンチに座って一休みしていた

先生に言われたロープウェイの乗車時間までまだ一時間はある

「蓬ちゃんは疲れてない?」

「あ、はい 大丈夫です…」

普段よりだいぶ歩いて少し疲れたけど登山するのに比べたらまだ楽だと思った

「ふーん なんか気を使ってない?」

「へ?」

突然、そんなことを言われて驚いた

たしかに少しは気を使ってるけどそれは普通のことで…

「なんていうか こんなこと言ったら相手に嫌われるかもーとか思ってない?」

「あっ」

図星だ

たしかに雛鳥さんに対して迷惑をかけないようにとか色々考えてるけどそんなのは全部言い訳でしかなくて


本当は嫌われたくないだけだった


自分で自分を騙すつもりで隠していた気持ち

それを今日、出会ったばかりの相手に指摘されて言葉に詰まる…

「あの その…」

「まあ ボクがなにか言えることじゃないし、言えた話でもないんだけどさ」

そういうと雛鳥さんは一呼吸おいて

「嫌われたくないからなにも言わないのは間違いじゃないけどすごく寂しいと思うよ」

「さみしい…」

間違いではない…けれど寂しい

その寂しいの意味がよく理解できなかった

「相手に嫌われたくないって誰でも思うことだからさ、もちろんボクもね」

「雛鳥さんも?」

「そうそう ボクもわりと周りのこと気にして生きてるんだよ」

意外だった 雛鳥さんとは今日、初めて知り合ったけど初めて会った時から明るくてグイグイ距離を縮めてきてたのに周りに気を使ってたなんて

「今日、蓬ちゃんに積極的だったのは蓬ちゃんなら嫌われないと思っただけでね 誰にでもああじゃないんだよね~」

「あ、えと」

「まあそうやってコミュニケーション取れる距離感は人それぞれだし、別に良いとおもうけどね でも誰かと仲良くしたいとか、誰かのことが嫌いだから距離がとりたいとかそういう気持ちをなんでもかんでも閉じ込めるのは寂しいと思う」

私の目を見てはっきりとそう言った

「それに… 相手に好かれたい、嫌われたくないって思ってしてるのに全部遠慮して断ったり気を使われるのは相手も寂しいと思うよ」

「あっ」

湊さんのことを思い出す…

たしかに私はわたしなんかが湊さんに優しくされたところで何も返せないと思っていた

けどそれは自分が湊さんに何も返せなかった時に彼女に嫌われるのが怖かっただけで

もし湊さんが本当にただの善意でしてくれてたなら私は…


「え、ああ ごめんね なんか… ただ蓬ちゃんが思ってるほど気を使わなくていいんだよって伝えようとしただけなんだけどな…」

「え、ああうん」

「あの~ ボクが言うのもあれだけどさ… ハンカチいる?」

「へ?」


自分でも気が付かなかったけど私は泣いていた



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