表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
37/40

第二章 コミュ障陰キャぼっちでもバンドは組めますか? 第二十節

好きと言葉にする度にこの気持ちはカタチになって…

 三人の視線が集まりやっと気が付いた

どうやら自分でも無意識のうちに奥の手を使ってたらしい…

「えと あの 私もよくわからないというか… 不思議だよね…」

なんとか誤魔化そうとする

「でもあんなの自然には起こらなくない?」

「まあ そうだよねー」

真凛が否定して天城君もそれに賛同した

「あ、でもほんと何も持ってないし…」

そう言って私は左手の中を見せる

当然何も入っていない

「右手は?」

月島君に聞かれて右手も開けて見せた

当然、こちらも空だった

「ま、蚊帳ノさんが違うっていうならたぶんほんとだよ 俺もなにか見えたわけじゃないしさ 疑ってごめんね」

「あ、いえ…」

もう少し調べられたりするのかと警戒してたけど天城くんはあっさりと引き下がってくれた


「ほんと悪かったな… このお詫びは必ずするから…」

「そんな気を使わなくて良いのに…」

真凛と月島くんがそんなやり取りをした後、私たちは月島くんと分かれた

「んで ほんとにたまたまなの?」

真凛が天城くんを不審そうに見やった

「ほんとだって 知り合いにドタキャンされてそこらへんふらついてたらなんかトラブルみたいだったから覗いただけ そしたら同じ学校のクラスメートが襲われてたから助けたんだよ」

いつもみたいにふざけた感じで笑いながら言ってるけど嘘ではなさそうだった

「そっか じゃあまあ ありがと…」

「全然! なんもしてなないし」

まるで本当に何もしてないみたいに言っている

けど天城くんがいなかったら私も真凛もどうなってたか分からないし…

私が口を開こうとしたら天貝くんは『それに』と付け加えて話した

「俺がいなくてもたぶん大丈夫だったよ」

「それって…」

月島くんのことだろうか

たしかに月島くんは最後まで止めようとしてくれてたし、友達と中学の頃の知り合いとのトラブルで板挟みになってたけど最後にはきっと私たちを助けてくれたはずだと思った


少なくとも真凛のためならそうしていたと思う…


「まあ そーゆーことだよ」

天城くんは大事な部分を言わずに歩いて行った

「ちょっと どういうことなの?」

「さあねー」

真凛をからかうみたいにいたずらっぽく笑っている

けどその目はこっちをというか私をたしかに見ていて

何もかも見透かされているようだった…


「じゃあまあ俺はこの辺で帰るわ」

そう言って天城くんは反対の道に歩き出した

「まあ なにはともあれ ありがとね」

「ありがとう…ございました」

振り返りながら手を振っている彼に私と真凛はお礼を言った

「まあ帰りも気を付けて… 大丈夫だろうけど…」

そう一言いった後で天城君は今度こそ立ち去って行った

「なんか色々あったけど アタシたちも帰ろっか」

「うん… そうだね…」

私と真凛は駅に向うことにしたのだった


真凛の家は駅から歩いて五分ぐらいのところにあるらしい

本当は途中で解散するつもりだったけどさっきの件で色々心配だからと駅まで見送りに来てくれた

「今日は色々ごめんね」

「え、あ いや 真凛のせいじゃないし 私も迷惑かけて…ごめん」

私が真凛に頭を下げると『蓬は気にしなくていいから』と手で止められた

「でも…」

「蓬がいたから助かったことだってあるんだよ… ほら駄菓子屋さんとか」

たしかに駄菓子屋さんでは真凛が知らなかったお菓子を教えてあげたり、予算内で色々な組み合わせを考えたりしたけど

でもそんなことは私じゃなくてもできたことで、むしろ私が居たから真凛はあんな目に遭ったんだだから


「私が真凛の助けになったことなんて何も…」

「そんなことない! 蓬は自分では気づいてないかもだけど蓬がいたからできたことだってあるんだよ それにこの間、綾乃と三人で遊んだ時も楽しくって、ちょっと浮かれ過ぎてデートなんて言っちゃったりしてさ…」

ここまで言いかけて真凛の顔が急に赤くなった


「とにかく、蓬が思ってるよりもアタシは蓬のことが好きなんだからね!」


思わず息が止まる


真凛の言った言葉が頭に残って時間が止まったみたいに制止する


「えと 私のことが好き?」


「……っ ちがっ これは違うけどちがくなくてっ」


さっきまで赤かった真凛の顔はさらに赤くなっていた

「友達として! そう友達として好きなの!」

「真凛て、友達…だったの?」

「えっそこから!?」

今まで明確に定義してなったけど真凛や綾乃とはバンドメンバーで友達とは別も繋がりだと思っていた

でもそうじゃないらしい

「たしかにバンドの仲間だけどさ それ以前に友達だから!」

「えっと うん…」

「それとも蓬は友達じゃイヤなの?」

「そんなことない! 友達って言ってもらえてうれしかったよ」

いつからかあるいは始めから、友達の定義もつくりかたも分からなくなっていた私には真凛が自分のことを友達と言ってくれて嬉しかった


「そっか…」

けど真凛はどこか寂しそうにそう呟いた


「あ、ごめん もう電車が来そう…」

「ヤバ! 引き留めてごめん 気を付けて帰ってね!」

「あ、うん 真凛も気を付けて…」

慌ててホームに向おうとして走り出すすると

「蓬! また明日!」

背中に真凛の声が届いた

私は一瞬だけ振り返って

「また明日!」

そう答えたのだった


なんとか電車に間に合い一息つく…

まだ友達と言われた高揚感が胸にあったけど一度、落ち着いて冷静になる

そして制服の裾、いわゆる萌え袖にしていた場所からさっき使っていたものを取り出す

まさか無意識にあんなことをしてたなんて…

ただでさえ臆病で小心者だから、こういうことはやめようとしてたのに…

心の中で反省と言い訳を反芻はんすうする

そして誰にも見られないように気を付けながらそれを鞄にしまったのだった

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ