第二章 コミュ障陰キャぼっちでもバンドは組めますか? 第十五節
放課後、私と真凛は音楽室に来ていた
「そっかー 今日は綾乃ちゃん休みなんだー」
そう話すのは部長の蓮見恋先輩だ
蓮見先輩はボーカル担当で一度しかしなかったけど体験入部で綾乃の担当をしていた
「あの 今日は他の先輩はいらっしゃらないんですか?」
音楽室には私たち三人しかいない
前回、私を担当してくれた双葉桜先輩はいなかった
「ああ 桜たちは委員会とか塾とかで今日はいないんだよねー みんなわりと自由人だからさ… 特に男子」
「そうなんですね」
「そそ あ、それと私はギターとかピアノ詳しくないからさ今日は二人とも他のパートしてみない?」
音楽室の奥を指さして先輩は言った
「他のパートってドラムとかですか?」
真凛が尋ねた
「そうそう ドラムとベースなら挫折してるからちょっとなら分かるんだよねー」
「挫折って 大丈夫なんですか~」
たしかに挫折したというワードは少し不安になる
「大丈夫だよ!? まあ三日も持たなかったけどさ…」
なおさら不安になってきた
「まあとにかくやってみよ!」
そう言われて私たちは教室の奥に移動した
「てことでまずはドラムからね 蓬ちゃん座ってみて」
「あ、はい」
そう言われて私はドラムの前に置かれたイスに座った
「じゃあまずは簡単に説明するね まず目の前にある平たい太鼓がスネアでその隣がフロアドラムね」
蓮見先輩は私の目の前にある太鼓を指さして言った
みんな色は銀色で大きさ以外の見分けがつかなかったけど自分から見て左にあるのがスネア、右がフロアドラムと呼ぶらしい
「それから足元の大きな太鼓がバスドラムで あ、これは足元のペダルを踏むと音が鳴るからね」
足元を見るとたしかにペダルがあるそれが繋がってる一番大きなドラムがバスドラムらしい
「んで その上に乗ってる二つの太鼓がハイタムとロータムね どっちがどっちか分かんないけど…」
さっき説明されたバスドラムの上を指さして言った
たしかに大小、大きさの違う太鼓が固定されていた
どっちがどっちかわからないのなんか気になるな…
「んでこれがハイハットね これも足で踏んで使うんだけどこっちはシンバルの一種」
蓮見先輩はスネアの横にあるペダル付きのスタンドを指さした
シンバルのようなものが上下に重なった不思議な形のシンバルだった
「まあ他にもシンバルがあるんだけどその辺は面倒だから気になるなら桜に聞いてみてね」
「桜先輩ってドラムもできるんですか?」
真凛が不思議そうに尋ねた
「そうだよー まあ大体の楽器はできるんじゃないかな… 歌は下手だけど…」
双葉先輩すごいな…
「まあ 私は歌以外、中途半端なんだけどさ ああそうそうドラムね」
そういうと先輩はこの間使ったギターアンプの側から二本の帽を取り出してきた
「これがドラムスティックね とりあえず適当に叩いてみて」
「あ、はい 分かりました」
ドラムスティックを受け取って目の前にあったスネアを叩いてみた
ドン! という音が鳴る
振動が身体に響く 凄い…
「どう?」
「すごいです… なんていうかその 音が大きい…」
語彙力がなさ過ぎてまともな感想が出てこない
「でしょー じゃあ次はエイトビート…ってどうやるんだっけ?」
顎に手をあてて蓮見先輩は考え始めた
「まあいっか とりあえずハイハットのペダルを踏みながら右手でハイハットを二回叩いてそのあと左手でスネアを一回、叩いてみよっか」
「あ、はい」
言われた通りに叩いてみる
ペダルを左足で踏みながらハイハットを二回叩いて、スネアを一回…
ツツタン
「そうそう その動きを繰り返してみて」
「あ、はい」
繰り返し同じ動きをする
ツツタン ツツタン なんかリズムになってきた
ドラム… 楽しいかも…
「どう? ドラム」
「その…楽しい…です」
リズムを刻む感覚と叩く度に跳ね返る振動が心地よかった
スティックを真凛に渡して交代する
「なるほど… これがドラム…」
さっきまで熱心に先輩の話を聞いて、私の動きを見ていた真凛は私より上手かった
「え、ほんとに初めて?」
「あ、実は中学の頃、吹奏楽部でその時に少しやったことあるんですよね」
まさかの経験者だった




