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第二章 コミュ障陰キャぼっちでもバンドは組めますか? 第十一節

今宵もまた悪夢の再演を始めよう…



もう私は傷つきたくない…


思い出したくなんてない…


それなのにどうして過去は現在の私を蝕むの?


綾乃と真凛とのダブルデート?から帰宅してからは記憶が曖昧だった

友達とのお出かけなんて初めてで緊張したり色々、思い悩んだりそれでも楽しくてとても充実した一日だったと思う

けれどその反動かあるいは高校生活が始まってからここまでの疲れが溜まっていたせいか普段、まともに動いていない私の身体はついに悲鳴を上げ…

熱をだした…

不幸中の幸いだったのは次の日は日曜日だったこと

それとこういうことはわりとどころか、かなり頻繁に起こるので常備薬のストックは万全だったことだろう

ただまあ熱が出ても辛くないわけではなく…

一日中寝込むことになった

土曜日の夜から日曜日の夕方まで、薬を飲んで寝るそのヘビーローテーション…

楽しい週末のはずがとんだ災難に変わる

体調が悪い時ほど気分も落ち込むもので薬の効果ですぐに寝るけどいつも以上に過去の記憶が悪夢として蘇った


夢をみた

それは中学一年生のある日のできごと

「ねえ 蚊帳ノさんて〇〇君のストーカーなの?」

「へ?」

同じ小学校から進学した同級生二人、どちらも女子でたしか相川さんと松本さんだった気がする

身に覚えのないことを言われて思わず棒立ちになる

「〇〇ちゃんが言ってたよ 自分の彼氏の〇〇君が蚊帳ノさんにつきまとわれてるって」

身に覚えのない話だ

そもそも〇〇さんとは同じクラスだけど〇〇君は別のクラスだし

そもそも少子化の影響で合併を繰り返した時和ときわ中学校は学年でも二百人を超える生徒がいるような学校だ

まだ入学したばかりで同じクラスメートの名前すらあやふやなのにそんなこと言われても

「ごめんなさい… そのことはほんとに身に覚えがなくて… 勘違いじゃないかな?」

「でも家山さんと琴峰さんが言ってたんだよ」

家山うちやまさんと琴峰ことみねさん 同じクラスのある女子生徒を思い出す

「あの… でも…」

「とにかく、ひとの彼氏にストーカーするとか最低だから」

「あっ…」

言葉がでなかった

たとえそれが事実でなかったとしても同じ小学校からの『友達』に信じてもらえなかったことの辛さが大きすぎて…

「だからもう二度と〇〇君に近づかないで」

「あ、えと 誤解させてたなら…ごめん」


きっと自分が悪いんだ

コミュ障陰キャぼっちだからどこかで変な行動をして誤解させてしまった

そう思って謝罪した

でも…

「は? 言い訳? それとも被害者ヅラ?」

相川さんに睨まれる…

「誤解とかストーカーの自覚あるんじゃん… 最悪だね…」

松本さんが吐き捨てた

そうして二人は私の側から離れていく…

胸の奥がスッと寒くなって、心のどこかが破れてきて

何かが溢れる前にトイレに駆け込んだ

そうして音もなく静かに泣いた…

この時の私にはそれしかできなかった


これがきっかけとなって私は家山さんと琴峰さんを中心としてクラスのほぼ全員が加害者か傍観者となっていじめられることになる


ただ唯一、あのクラスで気を許せたのはあの時、お互いに気が付いてないだけで同じ『いじめ』のターゲットになっていた二人だった


私たち三人は自分たちも知らないところでそれぞれをアルファベットで呼ばれて、いじめのターゲットとして扱えわれていたらしい


私がAで同じ小学校からの友達だった最上もがみさんがB、そしてもう一人同じ小学校からの友達の結城ゆうきさんがCだった


私と最上さんはなんとか学校に通えていたけど結城さんは途中から不登校になっていた

クラスの誰かがこれ以上、傍観し続けることに耐えかねたんだと思う

ある生徒の担任の先生への密告から私たちへのいじめが明らかになっていじめに加担した(傍観者を含む)全員が生徒指導されることになった

当然、私たち被害者三人は他のクラスメートがどうなったのかなんて知らない

けど私も最上さんも結城さんすらも誰からも謝罪されることなく次の日からまたいつもと変わらない学校生活が始まった

ただ一つ、いじめはそれ以降なくなったけど…


これがもし何かの舞台の演目なら


エンドロールまでは乗り切れても


二度とは見たくないとんだ駄作だ


最近、聞いていたある曲の一節が頭に流れる


そして目が覚めた…


薄ぼんやりとした意識がやがて完全に夢から覚める

まだ視界が判然としない

メガネに手を伸ばそうとするけどうまく届かなかった

寝る直前まで訴えていた頭痛は収まっている

けれど身体の痛みや感覚が分かるぐらいまで脳が目覚めると今度はさっきまで見ていた悪夢が心の痛みとして襲ってきた

胸の奥が冷たくなって凍えるような感覚に襲われた

それから先はいつも通り、いやいつも以上だった

涙が止まらない

ずっと昔のことなのにさっきあったできごとのように胸に刺さる

飲み込んだ言葉が魚の骨みたいに心に刺さったまま無くならない


どれくらいたっただろうか

なんとか落ちついて手元のスマホを見た

時間は日曜日の十六時、カーテンは閉まってるけどまだ明るいのは分かる

熱はだいぶ下がったらしい

このまま大人しくしていれば明日は学校に行けそうかな

そんのことを思いながらまた布団にもぐる

スマホの光は明かるすぎて時間を確認してから見ていない

このままだとまた寝ちゃいそう…

そんな考えが頭をよぎった

このまま寝てもまた悪い夢を見る

自分の過去に襲われる

それならもういっそこのまま明日の朝まで起きていたかった

昨日、帰って来てからずっと眠りっぱなしだ

だったらもう寝たくても眠れないはず…

そう思っていたのに瞼が次第に重くなっていく

思考がぼんやりと靄に包まれてまた眠りに落ちてしまいそうだった

眠るのが怖い、けどこの感覚に抗えない…

矛盾した思考と感覚の中、いよいよ眠りにつく


ただ一つ眠る直前に昨日、綾乃と話したことを思い出した

それはある時の記憶

中学三年生の文化祭…ではなくそれよりももっと前の出来事

入院中に病院で出会ったある女の子の話

そしてそれが悪夢から逃れる為の救いの手だった

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