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第二章 コミュ障陰キャぼっちでもバンドは組めますか? 第六節

きっとこれは私が私自身に言いたかった言葉…

綾乃が思わぬところで助け船を出してくれたおかげでなんとか危機を脱したあと

「ごめん ちょっと家族から電話があったみたい… ちょっと電話してきてもいい?」

「大丈夫だよー 私は蓬ちゃんとお会計したら向こうのベンチに座ってるから」

「ありがと ほんとごめんね」

そう言って真凛は電話できそうな静かなスペースへ走っていった


「さっきは…ありがとう」

「どうしたの急に?」

レジでお会計を待つ間、私は綾乃にさっきのお礼を言った

「あの 最後の服… 見せるの 恥ずかしかったから…」

「え、ああ 混んできたのはほんとのことだったから こっちこそ邪魔してごめんね」

「そんなことは… ない…です」

綾乃が謝る必要なんてなにもないのだ むしろ私が感謝すべきで…

「でも最後の服… ほんとはちょっと気に入ってたんじゃないの?」

「へ?」

「だって 棚に戻すとき、なんだか寂しそうだったから…」

「えと そんなことは…」

ないとは言い切れない 

たしかにスタイル的にも傷跡のことも踏まえると私には到底、着れそうにない服だけど…

デザインは今日着た洋服の中で、一番好きで…

「これなーんだ?」

「へ?」

綾乃は自分の買い物カゴからさっきの服を取り出した

「綾乃が買うの?」

「ううん なんか蓬ちゃんが迷ってたから念のためキープしといたの 最後の一着だったし」

そういうと綾乃は器用に服を畳んだ

「どうする? 買わないなら戻してくるけど…」

「えと」

「真凛には内緒にしておくよ?」

そこまで言われると本気で悩んでしまう…

「でも その服、さすがに外には着ていけないし…」

「なら 部屋着でもよくない?」

まあ確かにその手もあるけど…

でもほんとに良いんだろうか

「やっぱり私には無理だよ… 似合わないし それに」

「これ 私が選んだんだけどな~」

「へ?」

驚いた、真凛の言い方からして真凛が選んだ服だと思ったけど違うらしい


「綾乃が?」

「そうだよ 蓬ちゃんに似合うかなって」

綾乃が選んでくれた服… 

それだけで何か特別な意味があるような気がした

「でも蓬ちゃんが似合わないっていうならしょーがないか~」

「そんなことは… デザインはすごくいいなって思って… でも私が着るのは」

私が着たのでは服の価値を落としてしまう…そう言いかけたときだった


「蓬ちゃん 女の子なんだからもっと着たい服とかやりたいメイクがあるならやらなきゃだよ!」

「へ?」

いつにもまして力強く、こっちを見つめて言われた…

「人生なんてあっという間なんだよ それにいつなにが起こるか分かんないし ちょっとでも気になる服があるなら似合うとかどうとかじゃなくて着てみないと始まらないよ」

「でも いいのかな…」

私なんかがそんな風に生きてもいいんだろうか

今まで散々、人に迷惑ばかりかけてきた私がそんな自由に生きても…

「いいんだよ やりたいことやろうよ 着たい服は着て、行きたいところに行って、ギターも始めるし、バンドだってやろう! これはその一歩みたいなものなんだよ!」


すごく真剣だ

普段なら反射的に眼をそらす私も目が離せなかった

「う、うん… 分かった」

もしこれで自分自身が変われるのなら、ほんの小さな一歩でも踏み出して見ようと思った

きっとここで諦めてたらギターもバンドもできない気がして…


だから


「ありがとう綾乃… 背中を押してくれて…」


もう一度、彼女に感謝を伝えた


「まあ服を買うだけのことなんだけどね…」


どこか苦笑いしつつも彼女の表情は少しだけ明るくなった気がした


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