第二章 コミュ障陰キャぼっちでもバンドは組めますか? プロローグ
あの時、なにがしたかったのかわからない
でもきっとこれは理屈じゃない
きっとそれは…
帰宅後、今日学校であったこと・・・成り行きで音楽部に入部したことをお母さんに報告した。
正直、反対されるかと思ってたんだけど・・・
「ほんとに 凄いじゃない! 今日はお赤飯炊いてお祝いしないとね!」
「え、いや そこまではいいよ・・・ ていうか良いの? 音楽部に勝手に入ったりして」
「なんで?」
「だってお金もかかるし帰りも遅くなるんだよ…」
「でもやりたいんでしょ? ならやってみたらいいじゃない」
「うっ」
そう言われると何も言えない…
きっと家族がこんなふうに賛成してくれるなんて恵まれている…私にだってそれくらい分かっている、むしろだからこそまだ周りの環境のせいにして逃げようとしてることにいらだって
新しい一歩が踏み出せない自分に失望した…
「それと明日、遊びに行くってほんと!?」
「え、ああ うん 同じ部活の子に誘われてね…」
「そっかそっか 行って来るといいよ… 家にいてもうるさいだけだろうから…」
「まあ そうだね… そうしようかな」
家に残った場合… そこで起こる地獄を想像する
「にしても 蓬が友達と遊びに行くなんて何年ぶりかしらね… 中学の頃はみんな部活で忙しいからって学校での話はしてくれても遊びに行くなんて一度もなかったのに…」
「えっと まあそれはね 部活で仲良くなった子達だから予定も合わせやすかっただけ」
「そう まあ知ってる子がいない学校に進学して友達ができるか心配してたけど楽しそうでよかったわ」
「うん… とりあえず明日の準備とかあるし部屋に戻るね」
そう言い残し私は自分の部屋に戻った
「はあーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー」
長い溜息をついた
布団を敷く気力もない… なにもしてないのに人と少し長く話すだけでここまで疲れるなんて…
「おい」
「なに? 声ぐらいかけてから入ってよ…」
後ろから声をかけられ寝ころんだまま返事をする
背後には弟の若菜が立っていた
「友達と遊びに行くとかマジ?」
「マジに決まってるでしょー さすがに一人で遊びに行くのにあんな噓つかないよ」
「騙されてたりしてな」
「失礼な!?」
中学の頃、私が学校で陰キャだけど友達がいると嘘をついてたことを知ってる若菜はなかなか信用してくれなかった
「まあどっちでもいいが… まさかとは思うがまたダサい格好で行くのか?」
「まさか ちょっとはおしゃれするよ… メイクとかも…」
当然、綾乃や真凛みたいなクラスのカーストトップのキラキラ女子と遊びに行くんだ
私だって悪目立ちしないように少しくらいオシャレして行かないと
そうは言ってももう時間がない、今持ってる服でなんとかしないと……
「いや、ムリゲーじゃない!?」
私は叫んでいた
「はあ しょうがないから今持ってる服と化粧道具の写真撮って俺のスマホに送って」
「へ?」
「クラスの女子にコーデとメイクどうしたらいいか聞いてやるよ」
「ほんと!?」
「マジ怠いし恥ずいから今回だけだからな」
やはり持つべきものはコミュ強陽キャリア充の弟… 頭が上がらない…
「ありがとう! さすがは若菜!」
私はクローゼットからお出かけ用の服とメイク道具を取り出して写真を撮り、若菜のスマホに送った
「まあ中一に頭下げてコーデしてもらうとか俺なら無理だけどな」
「もはやプライドは捨てたのです…」
ここでいつもみたいに言い返して怒らせるとヤバいので平身低頭、お願いする。
「まあそのうち連絡来るだろうからそしたらまた教える」
「ありがとうございます…」
若菜はそういうと部屋を出ようとして立ち止まった
「ここまでしようとするってことはほんとに友達… できたんだな…」
「まあ まだ友達と呼んでいいかは分からないけど… てかまだうたがってたの!?」
姉への敬意や信頼がまるでない(まあ今までのこと考えたら仕方ないけどさ)
「そうか まあ」
「まあ なに?」
「なんでもねーよ」
そういうと若菜は私の部屋から出て行った
あの時、若菜がなにを言おうとしたのかは分からないでも
「私のためにここまでしてくれるのは珍しいな…」
本人の前では言えなかった言葉を呟いたのだった




